「ばんからさんが通る」空知英秋 | 東京OL漂流記~魂のフリーター~

「ばんからさんが通る」空知英秋

ジンジャーティーを飲み、

実家から送ってもらった

バウムクーヘンを獏食しながら

無駄にブログ更新……


今……

わたし……

震えるほどに幸せです……!

・°・(ノ▽`)・°・

心から!!!!!


ヒマ最高。

ヒマ大好き。

引きこもるために生きている……!

・°・(ノ▽`)・°・




そういうわけで

本当にヒマな人の記事を描くよ。



毎週月曜日には

オットの買ってきた

「週刊少年ジャンプ」を

奪い合って読んでいる

精神年齢が小学生なわたしたち夫婦なんですが……


今「ジャンプ」では

「トップ・オブ・ザ・スーパーレジェンド」

っていう企画がやってるんだよね。


これは

新人作家の読み切りを連続で掲載していく

「金未来杯」と対を成すような

企画だと思うんだけど……


ジャンプの「大御所」作家だとか

「看板」作家だとかの

読み切りを連続で掲載していく、

というもの。


「ドラゴンボール」の鳥山明とか

「ナルト」の岸本斉史とかが

出るのです。


最近のジャンプは

「ワンピース」とか

「ナルト」とか「ブリーチ」とか

まあ看板作品はあるんだけど、

どれもだいぶ古いし、

新人さんが全然定着しなくて、

新しい風が吹きこまれない

マンネリ状態だと思うのですよ。


そこで、

今度は、

新人さんを発掘するのではなくて

手持ちの作家の中に

新しい可能性を見出そうとしている

のではないかな。



というわけで始まった企画

「トップ・オブ・ザ・スーパーレジェンド」

なのですが……




(※以下ネタバレあります)









先週の

「ベンチ」は、

ひじょーーーーーーーーに

残念なデキでした。


大人気漫画「ナルト」の

岸本斉史先生の作品にも関わらず。

NARUTO―ナルト― 52 (ジャンプコミックス)/岸本 斉史
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イマイチやりたいことや、

伝えたいカッコよさが伝わってこない

というか。


女の子キャラがかわいくないし

(重要なポイント)


「新人に戻った気持ちで頑張りました」

とのことですが、

うん、デキも新人レベルだったよ、

みたいな……

(・∀・)



でね???

今週の

「トップ・オブ・スーパーレジェンド」が




とっても良かった!!!




うん!

これはよかった!


「ジャンプ」で

「銀魂」を連載中の空知英秋先生の

読み切りだったんですが、

これはちゃんとした読み切りでした。


銀魂―ぎんたま― 36 (ジャンプコミックス)/空知 英秋
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なんか最近

「ジャンプ」に載っている読み切りは

「読み切り」としての条件を

ちゃんとクリアしていないというかんじのが

多かったように思うんだよね。


わたし的な「良い読み切りの条件」というのは

①意外性(あるいはどんでん返し)

②グッとくるポイント

なのですよ。


意外性というのは

「驚き」と言い換えてもいいんだけど。


「~だと思ったけど実は~だった」

みたいな、

読者を驚かせるシーンが、

面白い読み切りには必要だと思うのですよ。


この前載った

「クロノ・マンション」で言えば

「実は主人公のソラこそが、

 ヒロイン・クロノの最強の武器だった」

みたいなことね。

あの「意外性」は

割とありがちで予測できちゃう意外性だったので

効果としてはイマイチでしたが。

(でもあのマンガはヒロインが可愛いから許す)


その意外性を

いかに効果的に描くか、

いかに読者を驚かせるか、

で読み切りの面白さというものは

変わってくると思うのですよ。


読者に

「あー、やっぱりね」と思わせてしまうくらい

予定調和的だったり、

「だからなに?」と思わせてしまうくらい

描き方が下手だとダメ。


先週の「ベンチ」は

「実は主人公が左で投げる練習をしていた」と

「実は山口の不調の原因は近視だったので

 眼鏡をかければ大丈夫だった」という

ふたつの「意外性」を用意していたのですが。

それがイマイチ効果的に描けていなくて、

「ふーん、それで?」

という感じになってしまったのですよ。


ネタとしては悪くないんだと思うんだけど。

描き方の問題。


主人公・王が左で投げる!

っていうことが分かる場面を

あっさり描きすぎ!

もっとコマ数使って、

「ドーン!」って感じで描かないと、

マンガ的に盛り上がりません!


あと山口の近視については

ネタばらしを早くやりすぎ。

これも試合のシーンまで隠してもよかったハズ。

そうすると主人公の方の「意外性」が

かすんじゃうから

そうしたと思うんだけど……


それにしたって

「お前がうてんよーになったのは

 視力低下が原因の可能性がある!」

のセリフを試合のシーン前に出しちゃうのは

説明しすぎ!興ざめ!


そこでは

「眼鏡屋に行くぞ!」

くらいにしておいて

読者に「なんで眼鏡屋に行くんだろう?」

「もしかして視力が問題だったのかな?」

と思わせるだけにしといたら

よかったんじゃないかなー。


そんで試合のシーンで

山口が登場にしてから

「なに?!眼鏡をかけている?!」

とか敵キャラに言わせ

そこでベンチにいる味方に

「山口の不調の原因は……

 太ったことじゃない……

 単なる視力の低下が原因だったんだ。

 そこさえカバーすれば、

 あいつの力は、まだ死んでねぇ!」

とかいうセリフを言わせて、

かっこよくホームラン!

っていうかんじでどう?




……つい「ベンチ」のことを

長々と書いてしまいました。

あまりにも残念だったので、つい。

ただの素人の感覚なんですけどね。






それはさておき

空知英秋先生の

「ばんからさんが通る」の話。


これはよかった……


これも結構いくつもの

「意外性」がしこまれているんだけど

ひとつの「意外性」が

非常によく機能しているので、

読み切りとして成立しています。


それは

委員長の、番長に対する感情ね。

冷徹なクール女子と思われた委員長が

隠された想いを吐露するシーンが

すごくよかった!


委員長が

番長を寝かしつけるために

「セーラー服を脱がさないで」を廊下で歌ってから

茂布(もぶ)に

自分と番長の過去を語るシーンね。


これは

良い読み切りの条件のひとつである

「意外性」と「グッとくるポイント」が

ひとつになったシーンでした。



ていうかさ!

空知英秋はセリフがうまいよね!

セリフがごちゃごちゃと多い漫画家として

「こち亀」の中でも揶揄されてたけど、

読ませるうまいセリフだから

長くても苦にならないんだよ。

日本語がうまい。


「普段はできない喧嘩もした。

 行儀の悪いこともした。

 ・・・・・・・・・

 いつの間にかあの場所は

 私が唯一・・・

 飾らずにいられる場所になっていた」


っていうセリフ、

よかったわーーーーーー!!!

最初の二文がよかったわーーーーー!!!


通常文章を書く時って

語尾が同じにならないように

気を付けるものだけど

(「です」と「ます」が交互になるようにしたり)

ここぞ!

というときに、

文末が同じ文章を繰り返すのは効くよね。


「~もした」、「~もした」の繰り返しが

心に響くセリフを作るわけですよ。


しかも

「行儀の悪いこともした」っていうセリフに

ちゃんと伏線が用意されてた

ってところがいい(笑)


番長が

「放課後はここで

 ダルダッルのジャージ着て

 生徒から没収した

 マーガレット読んどるんじゃぞォォ」

と、委員長の恥ずかしい一面を

茂布にバラす、というシーンが

最初の方にあるんですよ。


そこは

ギャグシーンとして描かれているのですが、

このラスト近くの

委員長のセリフを読むことで

「あれって……そういうことだったんだ……」

と読者がわかる、っていう仕組みになっているのです。


ダルっダルのジャージを着ていたのも、

普段は「風紀委員」として

気を張っている委員長が

ここでだけ、

素顔の自分に戻れるからだったんだ!

そういう意味だったんだ!

と。


「笑えるシーン」で描かれていたものの中に

実はきゅんとくるものがあったとき、

人は結構そのギャップで感動するんですよ。

よく使われる手法ですが。


もしこの伏線がなくて

いきなり「行儀の悪いこともした」というセリフが

出てきたとしたら

この「意外性」の効果も落ちていたと思います。

「へー」で終わっちゃう。


読者の中で

事前に委員長について与えられていた情報と

委員長の心情の吐露が結びついて

「あれってそういうことだったんだ」

という思考の快を感じることで、

「面白い」

という感覚が生まれるのですよ。


事前に

さりげない形で

それに関する情報が与えられていることで

読者は「前から知っている人の意外な一面を見た」

という感覚を覚えることができるしね。

「意外性」の効果は高まります。


そんなこんなで

「委員長って……そうだったんだね……」

と共感させたところで、

キメ台詞。



「私にとって……あそこは

 私がずっと立ちたかった

 友人達が語り合うただの

 学園の廊下だ」



この台詞の前段で

しっかり読者の共感を呼び覚ましているからこそ

このセリフが効くわけです。

同じキメ台詞でも、

タイミングが違うと

効果が薄れてしまうのだよね。


その辺が「ベンチ」は

うまいこといってなかったなーと。

特に心に残る台詞もなかったけど。


「ばんからさんが通る」は

この後さらにたたみかけるように

回想シーンを入れてきます。


現在の登場人物の語りと

回想シーンを絡ませると、

かなりの確率で泣けると思う(笑)



「私しってるよ

 バンチョーは

 そんなに悪い奴じゃないって

 でもまだ出してあげない

 私がバンチョーと同じ歳になるまで待っててね

 そしたら一緒の学校にいって

 一緒に卒業しようねバンチョー」



幼い委員長の、この台詞が好きすぎる。

これが最大の「グッとくるポイント」でしたね。


「委員長」の宿命ゆえに

友達がいなかった委員長……

だから……

だから番長と同じ高校生になってから

番長の封印を解いたんだね……!


と、こう、論理的に説得性があるゆえに

感動できるというか。

(論理的もなにもこのマンガの設定、

 むちゃくちゃ荒唐無稽なのですが、

 それはいいのです。マンガだから。

 大事なところに理屈が通ってればいいのです)


ラストもいいよね。


「大切なのはそんな変わらない。

 誤ることがあろうとも

 迷うことがあろうとも

 僕らは全力で進む

 

 裸の拳を振り上げて」


って

ギャッツビーっぽくない?(笑)


これ連載でもいけると思うけど。


ていうか

空知英秋は

まだまだ引き出しあるなー

と思いました。

「銀魂」以降も楽しみな作家です。


欲を言えば、

もーちょっと絵が丁寧だと

うれしいのですが……

うまいのに、ちょっと雑なような。


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