「老化で遊ぼう」


”数学っておもしろいんですね”


藤原正彦×赤瀬川原平×東海林さだお


藤原:私は天才の生まれるところはもう決まっていると感じているんです。

そういう場所は3つの条件を満たしているように思える。


1つは何かにひざまずく心があるところ。

日本の場合は神だとか仏だとかに

自然にひざまく心がありますよね。

2番目は金銭みたいなものよりも、

精神性に価値を置く文化が存在するところ。

3番目は美を尊ぶ気持ちがあるところ。


日本も満たしている。


私は日本人が数学者に向いているのは、

美的感受性が圧倒的に鋭いからだと思っているんです。

それが大事なのは数学だけかと思っていたら、

癌の研究者も土木の学者も同じ事を言ってた。

だから、今ではあらゆる自然科学にとって

一番重要なのは美的感受性だと確信していますね。


日本人の美的感受性は美しい自然に源泉があるんです。

自然はもののあわれなど美しい情緒の宝庫です。

だから、きれいな棚田なんかを残さないと

天才が生まれなくなっちゃう。

そうすると、科学技術立国を維持できない。

目先の経済繁栄に目を奪われて、

美しい自然を壊しているのは大変なことです。



人間には何もないところに

何かを創り出すような創造力はないというのが

私の説なんです。

必ず関係なさそうに見える、AとBを回路でつなぎ合わせる

これが独創なんです。



日本人はものすごく独創力があるんです。

大天才の岡潔先生は、

それを日本には俳句があるからだというんです。

たとえば

「荒海や佐渡に横たふ天河」

という句は、目の前の日本海の荒海を見ながら

向こう側にある佐渡を見て

それから天の川、宇宙まで一気に想像しちゃう。

その映像イマジネーションは数学における

想像オリジナリティと同じだと。