事後的今を生きる‐The Shock Doctrine。 | 『声』の残し方-いつかの、だれかに…

事後的今を生きる‐The Shock Doctrine。

2011年3月31日に「原発輸出政策法案」なるものが参議院を通過した。恥ずかしながら、そんな法案が通過していたことを、今日まで私は知らなかったが、驚くなかれ、賛成票が圧倒的に多いのだ。

「投票総数241、賛成票230、反対票11」

日本の政治家たちは一体何を考えているのだろうか、開いた口が塞がらない。しかし、今のこの社会状況において、こんな法案が多くの賛成票を集め通過してしまったのは、なんでだろうか。政治家たちがただ「無能」なだけなのか、それとも…。

『ブランドなんかいらない』で知られるナオミ・クラインさんの著書に『The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism』がある。クラインさんは、シカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマンの「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」という主張を「ショック・ドクトリン」と呼ぶ。

「ケインズ主義に反対して徹底した自由市場主義を主張したシカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマンは、「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べました。この主張をクラインは「ショック・ドクトリン」と呼び現代の最も危険な思想とみなします。」

これは「Democracy Now」からの引用だが、これに続く以下の文章が重要。

「近年の悪名高い人権侵害は、とかく反民主主義的な体制によるサディスト的な残虐行為と見られがちですが、実は民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画されたものであり、進的な市場主義改革を強行するために利用されてきたのだ、とクラインは主張します。」

ここで述べられる「近年の悪名高き人権侵害」とは、「1973年のピノチェト将軍によるチリのクーデター、天安門事件、ソ連崩壊、米国同時多発テロ事件、イラク戦争」だが、「アジアの津波被害、ハリケーン・カトリーナ」といった自然災害も含まれる。自然災害も「急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきたのだ」(「Democracy Now」で動画が見られますので、是非ご覧ください)。

今回の311大地震は、特に東北地方の東海岸の地域や人びとに大きな被害をもたらした。しかも、原発という「人災」が拍車をかけている。しかし、こうした状況に乗じて、米軍基地の正当性が主張され、原発輸出政策法案が通過し、(知人から教えてもらったことですが)一時は見送られたはずの埼玉朝鮮人学校への補助金の不支給が決定された。色々なことが連鎖的に起き、決まっていく。そして、これから様々な構造政策が行われるのではないか。

だが、こうした動きを全て地震と関連付けることも出来ない。が、「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」というフリードマンの言葉を思い起こせば、震災後の今の状況のなかで決まっていく政策は、今の日本社会をどこに向かわせようとしているのだろうか、と考えずにはいられない。311以後の日本は、今まさに、どこに舵を切ろうとしているのか。

しかし、私(たち)は事後的にしか今起きていることを把握できない(しにくい)。かといって、未来を予測することもまた、天気予報のようには上手くいかないだろう。

そんな事後的今を、どう生きていくのか、と問われているように思える。

The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capita.../Naomi Klein

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