近年、野球理論が充実し、野球塾等の環境整備もなされて来たからなのか、大人も子供も良くも悪くも、必要以上にバッティングフォームばかりを気にする傾向が強い気がする。
そもそもバッティングは、体操やフィギュアスケートのように、美しさや動作の正確さや、技の難易度を競い合うものではない。
いささか乱暴ではあるが、要は、ヒットやホームランを打てればそれでいいわけだ。
打てる・打てないの原因を、カタチにだけ言及し過ぎると、他にもある大事な要素を見落としがちになる。
その大事な要素の一つに『打つべき球を選択し、見極める力』と言うものがある。
あらためて言うまでも無いが、ボールには手を出さない事を前提にすれば、バッターには、3つのストライクを打てる権利が与えらている。
3回も勝負のチャンスがあるのに、厳しいコースのファーストストライクを簡単に打ちにいって凡打したり、、、緩い変化球や抜いた球が来ると、なんとなーくそれに手を出して凡打したり。
非常にもったいない場面を本当によく目にする。
バッターとして与えられた勝負の機会を有効活用出来ていない。
『初球から積極的に打っていけ!』
『ストライクはどんどん振っていけ!』
指導の現場に居ると、よく耳にする、口にしがちな指示の言葉だが、ここから先は、かなりの私見も入るが、、、意外にこの言葉は危険だと感じることが多い。
子供は本当に素直だから、その通りにストライクを打ちにいく。
それが厳しいコースに突かれた、打ち返すには難しいストライクであってもだ。
ストライクは3球打てるのだから、ツーストライクを取られまでの2球のストライクは、自分の打てる球、得意とする球、好きな球を堂々と待てば良い。しっかりと高さやコースや球種を見極めて、選んで良い。それは消極的な姿勢ではない。野球は確率のスポーツだから、これが正しい選択だ。
『追い込まれるまでは難しいストライクには手を出しちゃダメだよ。』
『ストライクは3つあるんだぞ。自分の好きな球が来るまで待っていいんだぞ。』
なるべく変換した言葉で、子供に対しては、指示を出すように心掛けている。
そんなことは分かっているし、言うは易しだが、それが出来ないからバッティングは難しいんだ!と反論されるかもしれない。しかしこの意識をしっかり持って、バッターボックスに毎回立っている選手は意外に少ない。
例えば、ウチのリーグの昨年度の数字を見てみると、メジャーで一番多く打席に立っている選手で年間計190打席。マイナーで計235打席。それぞれ半分としても95打席と117.5打席もある。
この打席数を経験する中で、毎回この意識付けをするのとしないのとでは、卒団の頃には大き技量の差になって現れる。
一球、一球、しっかり意識を持ち続けることで、自分の好きな球と嫌いな球、打ちやすい球と打ちにくい球、得意な球と苦手な球が、コース・高低・球種によって、自分なりに分かってくる。
自分の意識一つで、バットを振らずとも、球を見ている過程が成長に繋がるのだ。
さらに身体の成長と共にスイングスピードが上がってくれば、バットの振り出しのタイミングが遅くなっていくわけだから、球を見られる時間も比例して長くなり、見極めもだんだんと出来るようになってくる。
好球必打
一球入魂
よく言ったものだ。
一球、一打席を、ただ無駄に浪費してはダメだ。