ファイルNo,357 ドカMHRスイングアーム加工
オーダー内容は
スチール製スイングアームのピポッド部幅詰め、
取り付けたい車種に合わせてニードルベアリング化、
ヤマハの純正ダストカバーの流用です。
↑写真では2セットですが実際は3セット分です。
すでに幅詰め加工を終えた状態。
↑本来ピポット周辺の溶接は歪の影響が心配ですので
行いたくないのですが、チェンで凹んだ部分を盛って・・・
↑表面を仕上げてました。
↑Aが元々圧入されていたメタル
Bは新規に使用するベアリング
Cはワンオフしたスペーサーブッシュです。
↑こんな感じで取り付けます。
ここまでサクっと進んだ感じですが
実は取り付け完了するまでかなり苦しみました。
↑まず元々のメタルの取り外しが困難でした。
ジグを製作して何とか取り外しに成功。
外したブッシュの外周面には所々凹キズがあります。
↑こちらもそうですね。
↑すでに幅詰めしてありますが
内壁を見るとところどころ凸っているのです。
これがクサビになって尚外れないと言ったところでしょうか。
そして注目して欲しいのは内壁奥の段差の幅です。
これが内壁一周に渡りほぼ均等
う~む これは手間のかかる仕事になるなと・・・・
3MAなどの純正スイングアームの場合は
ピポッド部材(パイプ)とアーム部材(角材)等を
溶接してからピポッド内部のボーリングがされています。
その場合は溶接の影響でピポッド部材(パイプ)が
アーム側に引っ張られて若干沿った状態で
ボーリングを行うので内壁の段幅は100%不均等になるのです。
けれど溶接の影響は直接受けないので
ベアリングを装着した後にスムーズにシャフトが通ります。
一方 予めボーリングされたピポッド部材に対して
その他の部材を溶接して仕上げているものもありまして
その場合は内部の段差幅は均等に見えるのですが
※段差の無いものもありますが
多少なりとも溶接の影響で左右の芯がずれるため
シャフトが通り辛いかったり
中には強引に叩かなければ挿入できないものもあります。
今回のアームの生産工程は分かりませんが恐らくは・・・
↑新品のニードルベアリングですが
ホイール等に使用されるボールベアリングの外周が
-公差であるのに対してニードルベアリングは+公差です。
写真のベアリングのカタログ外径は29mmですが
測定する部分によって異なります。
こちらは+0.065くらい 環境による計器の誤差はご了承ください。
↑中央部分は+0.03くらいかな
ベアリング単体の場所でもこのくらいの誤差がでますので
スペーサーブッシュの寸法決めが非常に厄介なのです。
↑一先ず取り外したメタルブッシュの径を参考に
スペーサーブッシュを製作。
ブッシュにベアリングを圧入した段階では
シャフトもスムーズに通り狙い通りだったのですが・・・
スイングアームに圧入したとたんにシャフトが通らなくなりNG。
取り外して作り直しです(泣)
↑スペーサーブッシュ単体で内径はベアリングに対して
-公差に設定して外径は33.4に設定
↑ベアリングを圧入すると外径は33.44
+0.04膨らみましたがこれは狙い通り・・
しかしこれもまたアームに装着するNG
↑気を取り直してスペーサー寸法を修正
今度はベアリングを装着した状態で33.39になりました。
もちろんベアリングを装着した状態で
スペーサーブッシュの加工はできませんし、
ベアリングを圧入する事でどの程度膨らむのか
テスト無しで100%予測する事はできません。
毎回ベアリングを傷めない様に脱着を行いますが
残念ながら一個はオシャカにしてしまいました。
↑そして33.39バージョンに関しては
もはやプレスを使わず手押し込めばピポッド部に挿入できるレベル。
↑片側だけなら33.44仕様でもシャフト通るのですが
この33.39バージョンをもってしても
プラハンで軽く叩かなければ両サイドのベアリングを
通す事はできませんでした。
ですがこれはあくまで黒塗りのアームの話ですので
残りの2セットすべて微調整しながら進めました。
最終的にプラハンを使おうとも一旦シャフトが収まってしまえば
ベアリングのローラーはちゃんと機能するレベルになりました。
あとスペーサーブッシュの挿入が緩めになる箇所に関しては
タイトロック剤を使わせて頂きました。
将来的にベアリングの交換が必要になった時は
スイングアームをお持込居頂ければリペアする事も可能です。
↑ダストカバーはヤマハ純正品の幅詰めと
内部の加工処理
↑塗装の加減によってキツクもなるでしょうが
グリスを塗布して使用してください。
と言う事で何とかご要望にお応えできたかと思います。