担当:わゆ


0.はじめに
0-1.前回の発表
0-1-1.映画祭における3つのマーケティング
a.エクスターナル・マーケティング
映画祭主催者と観客の間のマーケティング
b.インターナル・マーケティング
映画祭主催者と出品者及びその他の利害関係者との間のマーケティング
映画祭主催者側:映画祭の集客力向上、映画祭のステータスや評判の上昇の為、魅力のある作品を数多く出品してもらう必要性
出品者側:有名な映画祭で上映、受賞することによって得られる利益(肩書き、権威づけ)
c.インタラクティブ・マーケティング
出品者らと観客との間のマーケティング

より魅力のある作品を数多く映画祭で上映する
→映画祭主催者側が出品者に対するインターナル・マーケティングを有効に機能させる

0-1-2.世界三大映画祭
出品者が望ましいと考える映画祭
a.製作者同士の交流ができる、様々な監督に会える
→三大映画祭と三大映画見本市が同時に開催されるカンヌ映画祭
b.参加して楽しい、楽しい時間が過ごせる
→高級リゾート地であるリド島で開催され、開放的な雰囲気が味わえるヴェネツィア映画祭
c.観客動員数が多い、観客と対話ができる
→観客動員数が世界でトップレベルのベルリン映画祭

0-2.今回の発表
東京国際映画祭
a.インターナル・マーケティングを上手く機能させているのか
b.出品者が望ましいと考える映画祭であるのか


1.東京国際映画祭(TIFF)
1-1.概要
a.歴史
a-1.1985年より開催(今年27回目)
a-2.第4回までは隔年開催
a-3.1991年以降毎年開催
b.特徴
b-1.日本で唯一の国際映画製作者連盟(※1)公認の国際映画祭
※1 世界の映画産業、国際映画祭の諸問題を改善、検討する国際機関。パリに本部を置き、世界29ヵ国(2014年7月現在)が加盟
b-2.長編作品のみ対象
b-3.グリーンカーペット
b-3-1.第21回(2008年)~第26回(2013年)まで使用
b-3-2.第21回から「エコロジー」をテーマへ(第25回まで)
b-3-3.日本コカ・コーラと帝人による提供
b-3-4.ペットボトルのリサイクル素材を活用
c.開催時期
c-1.第17回(2004年)以降毎年10月末開催
c-2. 2014年10月23日(木)~10月31日(金) 9日間
d.開催地
d-1.六本木ヒルズ
d-2.開催当時は渋谷
1985年~2003年:渋谷が主会場
2004年~2008年:渋谷と六本木の2会場体制
2009年~2013年:六本木が主会場
d-3.TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、今年からTOHOシネマズ 日本橋、歌舞伎座など
d-3-1.歌舞伎座
「第27回東京国際映画祭プレゼンツ 歌舞伎座スペシャルナイト」(10月27日開催)
a.歌舞伎座でのチャールズ・チャップリン主演「街の灯」特別上映イベント
b.チャップリンのデビュー100周年記念
c.チャップリンと歌舞伎座との縁


1-2部門

1-2-1.コンペティション(今年15本)
a.第1回(1985年)創設
b.選定ポイント
ひとつ目は、徹底して人間を描いていること。深い人間洞察のもとに構築されたドラマであれば、国境は無くなる。ふたつ目は、多様性。多くの地域から様々なタイプの作品が揃うことで、映画の奥深さを体験でき、世界の複雑さも見えてくる。3つ目は、作家性。監督の個性が映画に刻印され、独自の表現スタイルを持っていること。
(東京国際映画祭公式サイトより引用)

1-2-2.特別招待作品(26本)
a. 第3回(1989年)創設
b.今後公開される話題作をいち早く紹介する部門
c.オープニング・クロージング作品

1-2-3.ワールド・フォーカス(23本)
a.第26回(2013年)創設
b.海外の映画祭での受賞作、有名監督新作などの話題作のうち、日本公開未定の作品部門

1-2-4.アジアの未来(10本)
a.第26回(2013年)創設
b.アジアで作られた新鋭監督の1本目または2本目の長編作品を対象にした部門
b-1.新人発掘を目的
b-2.発見された才能が映画祭の名を上げる
c.アジア・ヤングシネマ・コンペティション
c-1.アジアの未来作品賞、国際交流基金アジアセンター特別賞

1-2-5.国際交流基金アジアセンターpresents
「CROSSCUT ASIA」(8本)
a.第27回(2014年)創設
b.国際交流基金アジアセンター(※2)とTIFFのコラボレーション・シリーズ
※2 2014年4月、国際交流基金の新たな部署として設立
アジアの人々の間の共感や共生の心を育むため、日本語教育、芸術、スポーツなど様々な分野での文化交流事業の実施(公式サイトより)
c.第一弾となる今年は「#01 魅惑のタイ」
c-1.タイ映画の最新作

1-2-6.日本映画スプラッシュ(8本)
a.第26回(2013年)創設
b.個性が強く、独創性とチャレンジ精神に溢れる日本のインディペンデント映画の部門


1-3. 賞の種類と賞金

「SAMURAI賞」
a.第27回(2014年)新設
b.時代を切り拓き続けている人物の功績を称える賞
c.初年度受賞者:北野武、ティム・バートン
d.SAMURAI賞新設記念イベント
d-1.北野武を招いた映画を学ぶ学生や若手の映画人と「日本映画の今と未来」について語りあうトークイベント開催
d-1-1.無料イベント(10月25日開催)
d-2.「7人の侍」上映イベント
d-2-1. 第一線で活躍する監督たちを東京国際映画祭より改めて世界に発信していこうと考え、日本を代表する「七人の監督」を選出
d-2-2.山崎貴監督、大友啓史監督、李相日監督によるトークイベントと、「7人の侍」の上映
d-2-3.無料イベント(10/26日開催)


1-4.チケット
1-4-1.料金
1-4-2.購入方法
a.インターネット、電話、劇場窓口
a-1.Ticket board
a-1-1.ケータイ電子チケット
a-1-2.2012年より導入
a-1-3.エコロジーの取り組みの一環
a-2.当日券
a-2-1.上映当日0:00~ticket boardで販売、劇場窓口でも購入可


1-5.併設マーケット
1-5-1.Japan Content Showcase2014
10月21日~10月23日
a. 映像・音楽・アニメーションの国際見本市を集約したマルチコンテンツマーケット(TIFFCOM,TIMM,TIAF)
a-1. TIFFCOM
a-1-1. 2004年より開催(今年11回目)
a-1-2. TIFF併設の国際コンテンツ見本市
a-1-3. 国内外の映画、TV、インターネット配信など様々なコンテンツ
a-2. 東京国際ミュージックマーケット(TIMM)
a-2-1. 2004年より開催(今年11回目)
a-2-2. 日本音楽の海外発展を目的
a-2-3. 商談会やセミナー開催によるビジネスマッチングの機会を提供
a-3. 東京国際アニメ祭(TIAF)
a-3-1. 2010年より開催(今年5回目)
a-3-2. 日本のアニメ産業の活性化を目的
a-3-3. 国内外のアニメビジネス情報を発信しビジネスマッチングの場を提供
b.2012年より同じ会場で開催
b-1. 2012年、会場を六本木ヒルズからお台場のホテルグランパシフィック LE DAIBAへと移転
b-2.出展エリアや商談スペースの拡充
c.2013年より「Japan Content Showcase」コンセプト

d.バイヤー数:1074人、出展団体数:316(2013年)


1-6.問題点
a.開催理由・目的がはっきりしていない
a-1.国内の映画ファン向けなのか、映画業界向けなのか、国際的な発信の場なのか
a-2.映画祭作品選定ディレクター 矢田部吉彦さんの発言
どうして、世界各国が、揃って主要都市に映画祭を立ち上げ続けるのか。それには色々な答えが考えられますが、まずは映画という芸術形態そのものが持つ、政治的プロパガンダとの相性の良さが指摘できます。自国を海外にアピールするツールとして映画は最も有効なものであり、国威発揚と結びつきやすい。国威と連動するのが映画であり、その映画が結集した場が映画祭であるなら、国(や自治体)が映画祭に注目するのは当然なのかもしれません。

b. 日本映画の上映本数の少なさ
b-1.今年のコンペティションの邦画は15本中1本
b-2.日本で開催される映画祭であり、日本映画を紹介して海外へと発信することも役割の1つ

c.ワールドプレミアの少なさ
c-1. ワールドプレミア=世界初上映
c-2.今年のコンペティション15本中6本(他はアジアンプレミア)
c-3.最初に見せることの重要性
c-4.ワールドプレミアの本数で映画祭の格が決まる

d.認知度の低さ
d-1. 若い観客の少なさ
d-1-1.若者の洋画離れ
d-2.若い観客が鑑賞し、やがて彼らが劇場へも足を運ぶようになり業界が活性化するような好循環

e.キャッチコピーの問題
e-1.今年第27回のキャッチコピー「ニッポンは、 世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく」
e-2. 会場周辺の掲示や新聞広告に使用
e-3. 「個人の業績を国に重ねるのが最近の流行だけど、みっともないことだと思う」 (松江哲明監督のツイッターより)
e-4.キャッチコピーの英訳「Lest we forget; our nation gave birth to some of the world's most respected directors」
e-4-1.主語が「our nation」、主に戦没者の慰霊時に使われる表現「Lest we forget」の採用


1-7.今後の課題
a.認知度をあげ、若い観客層を取り組むための施策
→SNSを使った宣伝、イベントの実施
b.開催日数の増加、会場の規模拡大
映画祭作品選定ディレクター 矢田部吉彦さんの発言
映画はメジャー系の作品がありつつ、アート系の作品があるという、その両方があってこそだと思うので、その相乗効果を期待するような展開がやっぱり東京国際映画祭の使命だと思います。他の映画祭とは違って、東京国際は宿命的にメジャー系とも付き合っていかなきゃいけない。その宿命を受け入れたうえで、きちんとクオリティの高い作品をお客さんに届けていく、そういう使命を担うべき映画祭だと思いますね。

まとめ
a.インターナル・マーケティングを上手く機能させているのか
→機能できていない
b.出品者が望ましいと考える映画祭であるのか
→東京国際映画祭独自の強みと言えるものがない
→3つのどの項目にも当てはまらない

今後の展望
映画賞であるアカデミー賞と、日本アカデミー賞の研究、関係性など
他の国内外の映画祭の研究
映画祭の理想像、目的、使命の発掘


<参考文献・URL>
矢澤利弘 2013 「映画祭のインターナル・マーケティング」 広島経済大学経済研究論集第36巻第2 号 p2~p12
http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hue/metadata/12111
TIFF HISTORY 東京国際映画祭のか輝かしき軌跡をたどる
http://history.tiff-jp.net/ja/index.html
東京国際映画祭 開催概要
http://2014.tiff-jp.net/ja/tiff/outline.html
第21回東京国際映画祭 第21回からの取り組み
http://2008.tiff-jp.net/ja/tiff/ecology.html
アニメ!アニメ!ビズ 2014/02/01 「第27回東京国際映画祭 会場は六本木ヒルズとTOHOシネマズ日本橋に」
http://www.animeanime.biz/archives/19373
東京国際映画祭 2014/10/02 「10/27(月)開催“歌舞伎座スペシャルナイト”全貌発表!! 歌舞伎俳優・市川染五郎が舞踊を披露!」
http://2014.tiff-jp.net/news/ja/?p=26445

東京国際映画祭 部門紹介
http://2014.tiff-jp.net/ja/lineup/
国際交流基金アジアセンター
http://jfac.jp/
東京国際映画祭 賞について
http://2014.tiff-jp.net/ja/tiff/prizes.html
東京国際映画祭 2014/10/11 「第1回”SAMURAI”賞授賞記念スペシャルトークイベント開催」
http://2014.tiff-jp.net/news/ja/?p=27780
東京国際映画祭 2014/10/11  「『7人の侍』特別上映イベント開催決定」
http://2014.tiff-jp.net/news/ja/?p=27767
東京国際映画祭 料金一覧
http://2014.tiff-jp.net/ja/ticket/pricelist.html
UNIJAPAN 統計情報 平均入場料金
http://unijapan.org/statistics/admission.html
映画.com 2012/10/28「ロジャー・コーマンら、満場一致でサクラグランプリを決定」
http://eiga.com/news/20121028/13/
映画.com 2013/10/25「第26回東京国際映画祭グランプリは満場一致でスウェーデン映画『ウィ・アー・ザ・ベスト!』」
http://eiga.com/news/20131025/15/
映画.com 2014/10/31 「第27回東京国際映画祭は米仏合作「神様なんかくそくらえ」に栄冠!監督賞と2冠」
http://eiga.com/news/20141031/21/
Japan Content Showcase2014 イベントについて
http://jcs2014.com/ja/about/
WEB RONZA 2012/10/16 「東京国際映画祭はどこがダメなのか[3]誰のための映画祭か」
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2012101500007.html
文化庁 文化庁月報 平成24年9月号 特集 国際文化交流―文化芸術の海外創造発信拠点の形成― 東京国際映画祭作品選定ディレクター 矢田部吉彦
http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2012_09/special_07/special_07.html
NTTコム リサーチ「第2回 映画館での映画鑑賞」に関する調査.
http://research.nttcoms.com/database/data/001574/
J-CASTニュース 2014/10/28「東京国際映画祭の広告コピーが物議 映画人から不満続々「最低だ」「恥ずかしい」
http://www.j-cast.com/2014/10/28219480.html?p=all
映画芸術 2009/10/05 東京国際映画祭 矢田部吉彦(プログラムディレクター)インタビュー
http://eigageijutsu.com/article/129577061.html
(URL最終閲覧日 2014/12/03)