担当:かひ

0,はじめに
 前回まで業種・業界ごとのソーシャルメディアの利用、そして利用における課題の解決策を見てきた。今回はソーシャルメディアごとのまとまりで見ることで企業の利用における共通点、及びソーシャルメディアを運営している会社からの働きかけがあるのか等といったことに疑問を持ち調べた。

1,LINE
1-1 LINEとは
a LINE株式会社(旧名:NHN Japan 株式会社)が運営。
b スマートフォンに特化して通話やチャットなどが無料で楽しめるコミュニケーション・サービス
c インターネット回線を利用し、パケット定額制のプランに加入していれば音声通話やチャットが使い放題
d インターネット環境下なら、世界230以上の国・地域のどこでも利用可能
e 2011年6月にサービス開始して以来、急速な成長を見せて注目を浴びている
e-1 2013年11月25日時点、登録ユーザー数世界3億人を突破。日本のユーザー数4700万人(世界第1位)


図1 LINEのユーザー推移

e-2 1億ユーザー達成までの期間は19ヶ月(図2)
※Twitter・・・約49ヶ月、facebook・・・54ヶ月

e-3 世界での1日あたりのメッセージ送信数は70億件(前年比440%)、1日あたりのスタンプ送信数は10億件(前年比488%) (Web担当者Forumの記事より)

“なぜ、LINEは世界中で愛されるようになったのか。時代の流れとともに、主要なデバイスはPCから携帯電話、スマートフォンへと変わってきた。今、世界中で起きているスマートフォン革命は、デバイスのシフトだけではなく、人々のコミュニケーションそのものの革命だと考えており、コミュニケーションのあり方が進化したともいえる。” (ビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」より森川氏の発言より)

e-4 収益

図3 LINE事業業績・売上
(LINE事業業績より筆者作成)

2013年7~9月期売上(13年3Q)
約60%・・・ゲーム課金
約20%・・・スタンプ販売による課金
その他・・・公式アカウント、スポンサードスタンプによる売上

1-2 使用しているユーザー層
1-2-1 男女比はほぼ半々
1-2-2 幅広い年齢層に広がっており飛び抜けて若者の利用が多いとは言えない
1-2-3 会社員の利用が多く見られる
(図4を参照)


1-3 取り組み
1-3-1 注目すべきはスマートフォンに特化したプラットフォーム化

1-3-2 主なサービス
a 無料通話・チャットサービス
b LINE Family Brand(詳細は1-3-bにて)

c 新たな戦略・・・3C戦略(「Communication」「Contents」「Commerce」)

c-1 「Communication」および「Contents」
・年内には音楽配信に参入(「LINE MUSIC」)
→LINEアプリ内で楽曲を楽しめる音楽配信サービス
・ビデオ通話サービス「Video Call」
→2013年9月24日よりサービス開始

c-2 「Commerce」
ECサービスにも参入。秋にオープン予定(「LINE MALL」)

【企業が出展するショッピングモール形式】

【ユーザー同士が売買を行えるC2C(Consumer to Consumer)】
→「いつでもどこでも、誰でも簡単に商品の売買を行うことができる」

d MUST BUY STICKERS(詳細は2-4にて)

e フリーコイン
LINE@・・・小売・サービス業・メーカーの利用が多い
アプリ運営事業者からの”販促したい”との声を受けて

「フリーコイン」コーナーのオススメの中からDLすることでコイン(※)がもらえる
→アプリの認知度に貢献

(※)コインはLINE内で取引されるもので100コイン200円から買うことができる

f 9月に課金システムを強化
従来:App Store/Google Playによるアプリ決済↓
新規:App Store/Google Playによるアプリ決済+クレジットカード、Paypal、コンビニで買えるプリペイドカードや、電子マネー、携帯電話キャリア決済


1-4 収益源
1-4-1 LINEアプリ内での課金
a 現在、1万種類以上の有料スタンプを販売
b 月間のスタンプ売上は10億円以上(昨年のイベント開催時には3億円)
c スタンプビジネスは新たなビジネスモデルとして評価

1-4-2 ファミリーアプリ(LINE Family Brand)内での課金
a LINEの名の関する他のアプリはカメラ、天気、占い、電子書籍などすでに52タイトル
b 月間売上31億円。うちゲームの売上は26億円
c LINE GAME
d 計16タイトルを提供

e ゲームでの業績
世界12か国で無料総合ランキング1位、世界12か国で App Store ゲームカテゴリ1位を獲得
世界10か国で無料総合ランキング1位、世界14か国でゲームカテゴリ1位(最高順位・「LINE GAME」タイトル総計)

f 「LINE POP」「LINE バブル」
「LINE POP」・・・公開から58日となる2013年1月16日に世界累計2,000万ダウンロード(iOS/Android 総計)を突破。Google Play で、2012年12月に売上が世界第3位を記録

「LINE バブル」・・・公開から28日となる2013年1月19日に、世界累計1,000万ダウンロード(iOS/Android 総計)を突破

g 課金は基本的に「広く浅く」が原則
※ダウンロード&プレーは無料
h カプコン、コナミもLINE GAMEに参入
i ディズニーのキャラを用いたゲームコンテンツを提供(冬に提供開始)
j 収益性が未だ不透明という意見も
k ゲームを除いた同社の月間売上ランキング
App Store・・・世界2位、Google Play・・・世界1位

1-4-3 法人向けマーケティングソリューション
a LINEユーザーとコミュニケーションを取りたいという企業のニーズに応える

b 事業
b-1 「公式アカウント」
・採用企業は1年で100社を突破

・公式アカウントからのメッセージは、トークやタイムラインを通じて、友人と会話するように自然な形でシェアされる

b-2 「スポンサードスタンプ」
・プロモーション用の自社のスタンプを作成
→企業広告を利用するという認識をもたず、多くが通常の会話のなかでやりとりされている
図4 企業の無料スタンプを利用の有無
(POSTCOのWeb調査より引用)

「調査概要」
方法:インターネット調査(POSTCOを使用)
期間:2013/10/9~2013/10/16
対象:20~60代の男女
サンプル数:105名

→女性の使用率が高く、その中でテレビ・雑誌を見ていてスタンプから企業名を思い出すといった声も見受けられた

b-3「LINE@」
・店舗などのローカルビジネスに特化
Ex. 法人向け、メディア専用、公共サービス専用のアカウントも用意(月額5250円~)
・リリースから約1年で1000以上のアカウントが作成

c 検討する企業に向けた活用セミナーを全国各地で開催

1-4-4 キャラクターライセンス事業
d-1 年間40億円
d-2グッズ販売、テレビ放送、コラボ商品
d-3 8月にはマレーシア、台湾、タイでテレビ放映開始

「LINEはスマートフォン広告のリーディングメディアになった」(ビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」より取締役出澤氏の発言より)

2,活用する企業例
2-1 ローソン
2012年7月、 「Lチキ(128円)」の半額クーポンを先着150万人のフォロワーに配信
→約10万人が店頭で使用

通常、クーポン行使率は良くて3%
→LINEでは7~8%

2-2 LIP SERVICE(10代~20代前半をターゲットとした、女性ファッションブランド)
LINE@でのセール告知で売上が前週対比150%に
セール来場者の調査を行ったところ25%がLINEの告知をきっかけに来店

2-3 コアラのマーチ
4週間の配布期間で593万ダウンロード、2か月間の利用期間中のスタンプ利用回数は4,000万回以上
スタンプ配布期間中の売上は前年比116%
(2012年11月にロッテが実施)

2-4 MUST BUY STICKERS
商品に付属したシリアルコードを使ってLINEスタンプを入手できる、販売に直結するサービス
2013年4月より開始

Ex1. 「桃の天然水」のキャンペーン(JTが実施)
4週間でスタンプが20万ダウンロード(対象期間中の全出荷数に対して、スタンプの利用率は16%)

Ex2. 9月2日よりグリコも「ポッキー」のキャンペーンを開始

3,LINEの戦略とこれから
3-1 この成長要因の核となっているのはプラットフォーム構造

「既存のSNSのマネタイズは極めて限られている。たとえば、広告モデル、有料アプリ、ゲームなど、どれか1つのビジネスモデルに依存することで脆弱になり、成長に陰りが見えると考えてきた。複数を組み合わせることで、LINEならではのビジネスモデルを構築し、展開できるのではないかと考えプラットフォーム構想にたどり着いた」(ビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」より執行役員・CSMOの舛田氏の発言より)

3-2 単なるコミュニケーションツールとして終わらせない
→コミュニケーションを発生させそこに付加価値をのせる
3-3 他のSNSの弱点(ソーシャル疲れ)をカバー
→クローズドにこだわる(電話帳をベースとした)

表1 LINE・Facebook・Twitterの比較


3-4 ユーザーの声を大事に
Ex. twitterでつぶやかれているLINE関連、Facebook関連、ブログ関連、世界中からたくさん来る問い合わせ、レビューサイト、メディアの記事

3-5 未成年への対策
3-5-1 安心安全ガイド
3-5-2 公的な教育の仕組みが不十分
・全国各地の学校に社員を派遣しレクチャー
・掲示板アプリの対策

3-6 すべてのマーケティング施策のハブとなり接続する機能をLINEが果たしていきたい


4,まとめ
4-1 コミュニケーションツールからプラットフォームとなることでビジネス展開が円滑にできた

4-2 企業の受け入れ体制の充実

4-3 ユーザー・企業の声を聞く姿勢

4-4 日本でできた企業だけに他のソーシャルメディアよりも日本向け

4-5 LINEの既読の問題をこれからどう解決していくか


5,今後の展望
今までソーシャルメディアを消費者・企業・運営している企業といった様々な視点から見てきた。ソーシャルメディアはコミュニケーションツールであって活用次第で色々変わる、そしてこれからのソーシャルメディアはどう変わっていくのか少し考えていきたいと思う。具体的な内容は未定。



<参考文献・URL>
桜丘製作所、イケダハヤト、三橋ゆか里 2011「ソーシャルコマース 業界キーマン12人が語る、ソーシャルメディア時代のショッピングと企業戦略」株式会社マイナビ

DNPメディアバリュー研究チーム、清水聰「『コミュニケーション型生活者』を探せ!」日経BP出版センター

日経産業新聞 2013年7月26日 p6

福田崇男「急成長する『LINE』の実像」日経パソコン2013年5月13日 p46~49

LINE株式会社広告事業グループ広告事業部「LINE 2013年10-12月媒体資料」
http://linecorp.com/ads/pdf/133F44BC-098C-11E3-B681-E97D30707817
LINE 公式
https://biz.line.naver.jp/ja/
池田真也 2013 「日本のLINEユーザーは4700万人突破、スマートフォン時代のコミュニケーションプラットフォームへ」Web担当者Forum
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/08/23/15880
POSTCO Lab. 2013「大人気アプリ『LINE』企業スタンプ・公式アカウント使用動向調査!」
http://blog.postco.jp/archives/3475
産経ニュース 2013「LINEがビデオ通話サービス開始 無料で提供」
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130924/biz13092416570020-n1.htm
LINE公式ブログ 2013 「LINE、ディズニーとスマートフォン分野におけるビジネス連携を拡大、ディズニーキャラクターを用いたLINE GAMEの展開に合意」
http://linecorp.com/press/2013/1016609
LINE公式ブログ 2013「【コーポレート】2013年1-3月期 LINE事業業績についてのお知らせ」
http://linecorp.com/press/2013/0509552
LINE公式ブログ 2013「【コーポレート】2013年4-6月期、業績についてのお知らせ」
http://linecorp.com/press/2013/0808587
LINE公式ブログ 2013「【コーポレート】2013年7-9月期、業績についてのお知らせ」
http://linecorp.com/press/2013/1107619

(最終閲覧日:2013.11.27)