私の中のあなた』キプ | unovdrogtiのブログ

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古今東西数々の戦争映画があれど、この映画ほど戦争の悲惨さを描いた作品はないと思います. 『プライベート・ライアン』も 『硫黄島からの手紙』 も戦争のリアルさに関してはこの映画には及ばない、それくらい衝撃的な映画です. スピルバーグやスコセッシが最も畏れた映画監督とまで言われたイスラエルの鬼才アモス・ギタイ監督は御自身の第4次中東戦争での実体験を基にこの映画を製作されたそうです. 実際に彼がどのような立場で中東戦争に関わったのかまでは知りませんが、少なくともベトナム戦争に従軍したオリバー・ストーン監督が御自身の経験を基に作った『プラトーン』よりも血生臭く、そして汗と泥で汚れた主人公たちの体に纏わりついた死臭が本当に伝わってくるような恐ろしさがありました. これまで戦争映画といえば戦場で戦う兵士の視点で描かれたものが大半でしたが、この映画の主人公たちは空軍の救急部隊に所属する若者たち. つまり彼らの仕事はヘリで最前線に降り立ち、負傷兵を担架で運んではまた新たな負傷兵を探し、時には助かる見込みのない者を無情にも置き去りにする毎日を送るということ. たくさんの敵を倒す訳でもなく、瀕死の負傷兵を医療行為で助ける訳でもなく、ただただ助かる見込みのある者だけをヘリの爆音と銃声が飛び交うなか運ぶだけなんです. 正直な感想としては見終わったあとの気分の悪さは最悪に近いものがあります. しかしそれは映画が酷いのではなく、戦争の悲惨さをかつてないまでにリアルに描いているからなんです. もはやこの映画は反戦映画とかそういうレベルではありません. この映画を見て戦争をしたいと思う人など誰一人としてこの世に存在しないであろうと思わせてくれるほど衝撃度. 耳から永遠に離れないヘリの爆音、泥と血が混ざり合った感じの力強い色彩など、映画のどの部分を見てもこれまでの戦争映画がヌルくみえてしまうくらいの恐ろしさがあるイスラエル映画です. 戦争の悲惨さと無意味さをとことん教えてくれる映画なので、是非体調がよろしい日に見ていただくことを心からオススメします. 深夜らじお@の映画館 は戦争が大嫌いです. アナ、ケイト、ジェシー、サラ、ブライアン. この家族5人が主役の映画でした. 映画を見る前はアナとサラの母娘関係を主軸に描かれているのかと思ってましたが、本当にこの5人が心境が満遍なく丁寧に描かれていた映画でした. 私は残念ながら泣くことは全くありませんでしたが、それでも不思議と終始春の空気のような温かなものを感じながら見ることのできた映画でした. 姉ケイトのドナーとして遺伝子操作で生まれてきた妹アナが腎臓提供の拒否して両親を訴えるという内容から、このフィッツジェラルド家の家族関係は冷え切っているのかと思いきや、逆にこの家族の絆は羨ましいほどに強く、そして羨ましいほどに本当に家族の仲がいいことが、母親のサラが丸坊主になったり、弟のジェシーが姉の似顔絵を描いたり、ケイトがアルバムを作っていたりなど、終始いろんなエピソードを通して描かれているんですよね. ではそんな仲のいい家族なのに、なぜアナは両親を訴えようとしたのか. そしてそんな訴訟依頼をなぜ勝率91%の敏腕弁護士キャンベルは受けたのか. それをケイトとテイラーとの束の間の恋やサルヴォ判事の過去、キャンベルの持病、家族みんなで海に行くエピソードを十分にかつ丁寧に描いた後で、ケイトでもアナでもなく、あえて失語症のジェシーの口から言わせる演出は凄く心に響きましたね. 冒頭でも述べましたが、この映画は家族5人の心情が丁寧に描かれた映画です. 何本もの注射を打たれているのにも関わらず常に明るく振舞うアナ、せっかく描いた姉の似顔絵を意を決して破り捨てるジェシー、最後まで諦めたくない母親として家族を守りたかったサラ、ダンスパーティーに行くドレスアップしたケイトを見て心のどこかで諦めていたはずのケイトを嫁に出す日の父親の心境に涙を浮かべるブライアン、そして愛する家族のために「とある計画」を立てるケイト. 5人がそれぞれの立場でそれぞれ異なる心境で苦しんでいるけれど、でも人はみな誰かを癒す薬を持って生まれてくるものだから、誰一人として不必要な存在なんていない. 海から病院に帰ってきた時に家族みんなで手を振ってケイトを見送ったシーンでもそんな5人揃って一つの家族であるという絆と愛情の深さを感じずにはいられませんでしたよ. そして家族というのは全員が必要とされ、全員が家族を守ることのできる力を持っているからこそ、「とある計画」が明るみになった後に病室で子供たち3人が抱き合うくだりでも、家族を思っているのは何も法律で意思決定の権利を保証されている親だけでない. むしろ子供の方が家族や親のことをよく見ている. そんな人が人を大切に想う心の温かさを感じましたよ. 『きみに読む物語』に続き、またしても丁寧な演出が光るニック・カサヴェテス監督. もしかしたらジョン・カサヴェテス監督よりも評価が高くなるのでは? と思いつつも、その要因はやっぱり子供は親をよく見ているから? なんでしょうか. 深夜らじお@の映画館 はこの映画を見てまた献血に行こうと思いました.