大好きなあなたの耳元には
いつも涼しい風が一筋吹いていました
そして痛みだけをここに残して
愛しい輪郭は消え去ったのです
確か隣同士笑い合っていたひとの
頭の中も、瞳の色も、鼓動が揺れる瞬間も
一度も分からなかった
今はその欠片すら無くて
忘却の糸は
するりとこの手を抜けてあの空へ
翻して上手に明日を
連れてきてくれるから
あえて痛みの名前を
呼び続ける声を
無感覚に描き
無感情に歌い
白く吹く風の尻尾を見つけたら
ふわりと、それに乗って
悲しいままに
彼方へ消え去っていく、愛しい輪郭を