はぁ……
某番組で、「9男6女の大家族」というのを観た。
あれはいったい何なのだろう?
猫じゃあるまいしボコボコボコボコ子どもを生んで、家の中は散らかり放題でめちゃくちゃで、ドーナツを2つ取ったといえば殴り合いになり、姉は意味もなく弟の頬を張り、子どもたちはお金がないから中学を出たら働きに出ている(前にも書いた覚えがある。私は多分苛立っているのだ)。
家の中では四六時中、誰かが泣くかわめくか怒鳴るかしている。それはしばしば暴力を伴い、弱い者が理不尽に犠牲になる。
破られた襖は直される気配がなく、昼食はきょうだいの誰かが小遣いで買ってきたハンバーガー。
これを劣悪な環境と言わずして、ほかに何と言うのだろうか。
もはや人間の家族の情景などではない。修羅だ。
父親は多くの子どもを遺して、ポックリ死んだようだ。
生活が変わった形跡はないから、生命保険にも入っていなかっただろう(ちなみに仏壇はなくタンスの上が仏壇代わりだった)。
格差社会の中で、子どもを育てるための資金が心配であるばかりに「子どもを持たない」という選択をする夫婦も増えているのに、いったい何を考えていたのだろう?
この劣悪な環境で育った子どもたちは、あまりまともとは言えない人生を送っている。
当たり前だ。こんな劣悪な環境の中でまともな人間が育つわけがない。
長女は中学卒業後、家計を助けるために昼は清掃の仕事をして夜は水商売。その後妻子ある男の子どもを宿し、後先考えず生む。その後別の男と結婚をするが、その男との間の次男が生まれると直後に離婚。しかもその子は、高熱を出したとかで障害を持つ(大方、医者に掛けるのが遅れたのだ)。
次男に手が掛かりきりだから、仕事は辞めた。働かずに食っていけるわけはないから、福祉の世話になっているのだろう。
男のきょうだいの1人は、中学でグレ始め、児童自立支援施設に入所する。
きょうだいの別の1人は、知的障害者である。
ほかにもできちゃった結婚だとかなんだとか、3世代の間にはそんな話がゴロゴロしている。
ナレーションは言う。「長女の人生の前半は苦労の多いものだったが…」。
何と言うか、この家族はしなくてもいい苦労をわざわざ選んでいる感じだ。
本能だけで生きているのだろうか。
この家族では唯一高校に進んだ娘が、汚い言葉を吐く。
「夢じゃねえ! ばっかじゃねえ!」
別の中学生の娘が言う。
「愚痴るんじゃねえよ。カメラ回ってんだよ」
稼ぎ頭の息子が汗水たらして稼いできた金を母親は「ご苦労さま」の一言もなく受け取り、娘が支払いに追われているというので母親が用立てた10万円を、娘は「ありがとう」の一言もなく受け取る。
何かが、どこかが狂っている。
人間は、ここまで堕ちることができるのだろうか。
番組を観ている間じゅう、私はこみ上げるため息と吐き気とを抑えることができなかった。
インドのスラムじゃあるまいし、これが日本の光景なのか?
当たり前だが、子どもたちが悪いわけではない。
大人が悪いのだ。
それぞれの親には、それぞれの事情があるだろう。子育てにともなう経済力や体力、精神力などだ。
そうした事情によっては、3人欲しいところを1人で我慢したり、子どもが欲しいところを持たなかったりする。
それをサカリのついた猫じゃあるまいし、ボコボコボコボコ考えもせずに生んだ挙句がこの有様だ。
目を疑う私に、さらにナレーションが覆いかぶさる。
母親の50歳の誕生パーティーのようだ。
「い~い子どもたちに育ちましたね。おかあさん」。
はぁ……………。
つくづく、ビッグダディはすごい人だ。