傷だらけの山河 | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

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内容:数々の骨太な社会派作品を世に送り出した山本薩夫監督の1作。非情な事業欲で成り上がってきた事業家が、妻子や妾に見捨てられ孤独に陥っていく姿を描く。西北グループの総帥・有馬勝平はひとりの地主の依頼から新しい金儲けの事業に着手するが…。 (Amazonより)


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はい!今週の若尾文子様 は、1964年製作「傷だらけの山河」です!

週刊誌に連載された石川達三の小説を、「白い巨塔」などで知られる社会派映画の雄、

山本薩夫映画化したものです。






有馬勝平は、電鉄、バスなどの交通事業の他、数種の会社をもつ大事業家だ。勝平の旺盛な欲望は女性関係にも現れ、妻藤子との間に二男二女をもちながら、片山民子と横田かね子の間にも、大学に通う息子がいた。藤子との政略結婚から、端を発した勝平の事業欲は、人の犠牲を意に介しない非情さのうえに立っていた。勝平の第四の女福村光子は、パリに留学を夢みる貧乏画家の、酒井吉春との生活に疲れていたところを、夫吉春をパリに留学させる条件で、勝平の女となった・・・(goo映画より)





はい、高度経済成長の真っ只中、時に非常とも思えるやり口で成功を遂げた一人の

大事業家の姿を描いた作品です。



ワンマンとも揶揄される強引なやり口で巨大複合企業西北グループを束ねる有馬勝平

(山村聰)には、正妻の他に二人の妾がおり、それぞれとの間に横田平次郎(伊藤孝雄)

片山竹雄(川畑愛光)という大学生になる子供までこしらえていた。

その上新たに自社で働く事務員福村光子(若尾文子)に目を付けた勝平は、光子の恋人で

画家志望の酒井義春(川崎敬三)をパリに留学させることを条件に、光子を3人目の

妾として囲おうとする。

 一方西北グループでは新たに鉄道の新路線敷設計画が持ち上がっており、勝平の永年の

ライバルである香月信蔵(東野英治郎)率いる企業グループとの間で激しい用地取得合戦を

繰り広げていた・・・ってなお話。



「白い巨塔」「不毛地帯」の山本薩夫監督の作品だけあって、本作も当時の世相を

色濃く反映した社会派映画です。東京の人口は増加し続け、もはや一市民が都内に

居を構えるなど夢物語となっていた。そこで勝平は東京近郊の何も無い田園地帯に

新たに鉄道を敷設し、同時に沿線一帯の土地を買い占めて新たな街を建設しようと

画策する。しかしライバルの香月も同じことを考えていると察知した勝平は、長男で社長の

竜太郎(北原義郎)や娘婿の和雄(船越英二)らに命じ、半ば詐欺同然の強引なやり方で

地元住民から土地を買い漁っていく。

 一方、勝平の次男である秋彦(高橋幸治)や、妾との間に出来た子供である横田平次郎と

片山竹雄は、そんな人を人とも思わぬ勝平の傲慢な生き方を軽蔑していたが、

勝平自身は成功に犠牲はつきものと全く意に介さず、今日も仕事が終われば新しい妾である

福村和子の元へと通っていく・・・


・・・剛腕にして傲慢、自らの正当性を信じて疑わない男、有馬勝平。こういったキャラクターは

山本薩夫作品ではお馴染みですよね、「不毛地帯」しかり、「華麗なる一族」しかり。

しかしそれら氏の代表作に先駆けて1964年に製作された本作は、習作と呼ぶのに

躊躇を覚えるほど十分な完成度を誇りますねー。だって面白かったですもん!ヘ(゚∀゚*)ノ



ジャケットを観ると山村聰さんと若尾さんのW主演って感じに見えますが、実質的には

山村さん演じる有馬勝平の物語です。日本の復興の為にブルドーザーの如く邪魔する者を

なぎ倒していくこのエネルギッシュな男は、まさしく“英雄 色を好む”

言ったところでしょうか、アッチ方面でも実に精力的です(苦笑) 

たまにしか寄りつかない勝平に寂しがる妾やその子供達に対しても、「生活に不自由を

させた覚えは無い」とのたまいまるで悪びれる様子はありません。まぁもちろん囲われる方も

囲われる方だからどっちが悪いって話じゃないし、それは実子として認知すらしてもらえない

子供たちにもわかっているんだけど、しかし人間関係は損得勘定だけじゃ測れないのよね。

社会派映画でありながら、こういった軋轢もしっかり描いているからやはり面白い。

収録時間157分とこの時代の作品にしてはちょっと長めですが、終始飽きることなく

愉しむ事が出来ましたよ。



キャストに関してもやはり勝平を演じる山村聰さんんの存在感が圧倒的で、若尾さんをはじめ

他のキャストの存在感はやや希薄です、船越英二や高松英郎、川崎敬三といった大映映画で

お馴染みの面々も出演しているもののあくまで脇役ですし。

ってか本作って不思議な事に、山村さんや若尾さんを除いた主要キャストは比較的

地味めなんですよねー。そこだけがちょっと惜しいなと。





総評。

BGMのとおり、最後にはド~~ン!(>_<) と来る作品です。やっぱアレだなー、

岡本喜八 特集の次は山本薩夫特集がいいかも知れないなー♪( ´艸`)

ってワケでオススメです。