大菩薩峠 (1966年 岡本喜八版) | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

大菩薩峠 [DVD]/仲代達矢;新珠三千代;加山雄三;三船敏郎
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内容:中里介山の傑作時代小説を、岡本喜八監督が映画化。妖剣“音無しの構え”を操る無頼の剣客・机龍之助。その虚無に囚われた業深き魂の彷徨と凄惨かつ壮絶な戦いを描く。狂気の剣豪を演じた仲代達矢をはじめ、加山雄三、三船敏郎の3大スターが共演。 (amazonより)


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はい!今週の岡本喜八 監督枠は、1966年製作「大菩薩峠」です!

原作は大正時代に中里介山によって記された傑作大河歴史小説で、本作以前にも

四度に渡って映画化されているそうですが、残念ながらワタシは原作も他の映画化作品も

見た事ありません。



大菩薩峠 [DVD]/片岡千恵蔵,中村錦之助,長谷川裕見子
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↑コチラ内田吐夢監督、片岡千恵蔵主演版。千恵蔵はこれ以前に渡辺邦夫監督版でも

 主演している模様。



大菩薩峠 DVD-BOX/市川雷蔵,本郷功次郎,中村玉緒
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↑コチラ市川雷蔵主演版。他に大河内傳次郎版もあるらしい








大菩薩峠の頂上で、一人の老巡礼が何の理由もなく殺された。斬ったのは、黒の紋服に“放れ駒"の紋が印象的な深編笠の男机竜之助だ。この老人といっしょにいた孫娘お松は、折りから通りかかった盗賊、裏宿の七兵衛に救われた。竜之助は、帰宅して間もなく、宇津木文之丞の妻お浜の訪問をうけた。お浜の夫、文之丞はかつて竜之助と同門で剣を学んだ仲だが、御嶽神社の奉納試合で、竜之助と立ち合うことになっていた。竜之助の父、弾正も、残忍なまでに殺気のみなぎる竜之助の“音なしの構え"を恐れ、文之丞に勝ちをゆずるように説き、お浜もそれを懇願した・・・(goo映画より)




・・・はい、仲代達矢・三船敏郎・加山雄三という三大スター共演の時代劇です。


 武蔵と甲斐を結ぶ青梅街道最大の難所、大菩薩峠。その頂で、一人の老巡礼が

理由もなく斬り捨てられる。残された孫娘お松(内藤洋子)は、偶然通りがかった

盗賊“裏宿の七兵衛”(西村晃)に拾われ、江戸の華道師範お絹(川口敦子)に預けられる。

 一方、老巡礼を斬り捨てた机龍之介(仲代達矢)は、翌日の奉納試合を前に

対戦相手宇津木文之丞(中谷一郎)の妻お浜(新珠美千代)の訪問を受ける。剣の腕では

明らかに竜之介に分があったが、お浜は宇津木家の為に文之丞に勝ちを譲ってほしいと

夫に秘密で懇願しに来たのだ。そして竜之介は、お浜の貞操を見返りにその願いを

受けるが…ってなお話。



で、感想。




・・・う~~~~~~ん、勿体ない。。。。(-。-;)



・・・はい、なんとも惜しい作品です。うまくいけばチャンバラ映画の傑作として後世に

名を残す可能性もあっただろうになぁ、勿体ない。。。



実はこの作品、元々はシリーズものの第一作として予定されていた作品なんです。

そもそも原作自体が世界一の長編小説を目指して書かれたというほどの大長編ですし

(原作者中里介山が死去したため未完のまま終わった)、前述した片岡千恵蔵版や雷蔵版も

三部作として製作されているように、一話完結で描ける物語では無いんです。

ただこの作品はどういう経緯か、撮影中に急遽一本限りの単発作品という事に変更になり、

結果として数多くの伏線が回収されないばかりか結末も尻切れトンボで終わるという、

なんとも勿体ない仕上がりになってしまってるんですね…(-。-;)



物語自体は面白いんです。主人公は机龍之介、“音無しの構え”と呼ばれる妖剣を操る

闇の剣士です。憑かれたかのように人斬りを重ねていくこの狂気の剣士と、はからずも

運命の糸で強く結ばれてしまった者たちが辿る数奇な運命を描いております。

そしてその机龍之介を演じる仲代達矢の演技が圧巻!!

狂気の男をこちらまでピリピリするような圧倒的な緊迫感と迫力で演じており、その虚空を

見つめるような眼差したるや背筋が寒くなるほどですよ・・・(((゜д゜;)))



また助演陣も何とも魅力的で、夫を想うあまり過ちを犯し机龍之介とともに闇へと

転げ落ちていく女お浜を演じた新珠美千代、机龍之介を仇と狙う若き剣士宇津木兵馬

演じた加山雄三、その師で机龍之介の邪剣とは対極をなす正剣の使い手島田虎之助

演じた三船敏郎、机龍之介にたったひとりの身寄りである祖父を殺され流転の人生を

送る少女お松を演じた内藤洋子、そして身を偽りお松の後見人となる盗賊“裏宿の七兵衛”

演じた西村晃と、いずれを主人公に据えても面白い物語が出来そうな魅力的な登場人物たちが

数奇な運命の糸で結ばれ互いの人生に影響を及ぼしていく展開は、さすが元が短い期間で

幾度も映画化されている傑作小説だけの事はありますね、・・・それだけに当初の予定通り

シリーズ作品としてきちんと完成させて欲しかったという思いが余計強まりますけど・・・(_ _。)

特に本筋となる机龍之介と宇津木兵馬との遺恨の行方があんな中途半端な形で

締めくくられてしまうのは致命的でしょう!物語が破綻していると言われても仕方ないかと

思いますよ。



・・・とまあ物語自体には難がありますので、本作の最大の見どころはやはり

総勢94名もの人物が斬られるというチャンバラシーンになるでしょう。

この点に関してはもう何の文句のつけようもありませんねー!! なにせ殺陣の振り付けは

あの久世竜ですし、演じるのが仲代さんや三船さんですから。

とりわけ圧巻なのが降りしきる雪の中で三船さん演じる島田虎之助が刺客(=新撰組)を

ばったばったと切り捨てる中盤の山場と、クライマックスで仲代さん演じる机龍之介が

狂気にとりつかれ、燃え盛る炎の中狂剣を振るう「御簾の間」の場面。

ストーリーに多少難があろうとも、この場面だけで十分観る価値があるかと

思いますよ!(ノ゚ο゚)ノオオーー!!




総評。

とはいえ、やはり本作では省かれてしまった部分が気になるなぁ。原作自体が未完とはいえ、

アレで終わりじゃあ消化不良も甚だしいですよ。この辺雷蔵版や千恵蔵版を観て

確認しなきゃいけないでしょうね、御二方とも仲代さんとはタイプが違うだけに、

どのようにあの狂気の男を演じているのか非常に興味もそそられますし。

ってワケで様々な事情により損なわれてしまった事が何とも惜しまれる作品ですが、

チャンバラ物として観る分には十分楽しめる本作、条件付きでオススメです。