江分利満氏の優雅な生活 | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

江分利満氏の優雅な生活 [DVD]/小林桂樹,新珠三千代,江原達怡
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内容:直木賞を受賞した山口瞳の原作を岡本喜八監督が映画化。高度経済成長期、戦中派の冴えないサラリーマン・江分利が、ひょんなことから書いた小説が直木賞を受賞する。合成アニメーションや書き割りのセットなどを駆使した監督の演出の妙技も見所。(Amazonより)


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はい!今週の岡本喜八 監督枠は、1963年製作「江分利満氏の優雅な生活」です!

「江分利満」とは“every man”、すなわち“ごく普通の男”ってな意味の

語呂合わせですねー♪(°∀°)b






昭和30年代後半、大手洋酒メーカーに勤めるサラリーマン江分利満(小林桂樹)、36歳。何をやってもおもしろくない無気力な日々が続く中、ふとしたことで彼は小説を書くことになり、戦争のこと、父のこと、妻子のことなど、平凡だが一生懸命な自分たちの人生を綴っていく・・・(amazonより)




はい、これまで「愚連隊」シリーズなどの痛快エンターテインメント作品を撮ってきた

岡本喜八監督が、一転してごく平凡なサラリーマンの日常を描きだした作品です。

ちなみに原作は作家山口瞳の直木賞受賞作ですが、あらすじは大幅に

改編されている模様ですので念のため。



サントリー酒造の宣伝部に働く36歳の江分利満(小林桂樹)は、月36000円の給料で

天衣無縫な妻夏子(新珠三千代)と喘息もちの息子庄助、そして事業に失敗して莫大な

借金を抱える老父明治(東野英治郎)を養いながら、酒を飲んでクダを巻くことを唯一の

楽しみにしているごく平凡なサラリーマンだ。

その日も何軒目かのバーでクダを巻いていた江分利は、ひょんなことから雑誌編集者の

男女と意気投合、酔った勢いで雑誌に連載する小説の執筆を請け負ってしまう。

翌朝酔いから覚めた江分利だったが断ろうにも既に編集者はページを空けて待っている、

仕方なく江分利が自分たちのごく平凡な日々の暮らしを原稿にしたためていくと、

読者の反応は思いのほか好評で・・・ってなお話。



山口瞳氏の原作は自伝的ではあってもあくまでフィクションなのですが、映画化にあたって

江分利の勤務先を山口氏の実際の勤め先であったサントリー社に変更するなど、

より山口氏の実体験に近づけたという本作。小林桂樹さん演じる主人公江分利の風貌も

どことなく山口氏に似ており、まさしく昭和三十年代のごく一般的なサラリーマンの生活を

そのまま描き出したような作品ですよ。



キネマの天地 ~映画雑食主義~-山口瞳氏

↑原作者・山口瞳氏。サントリー社在籍中に作家デビュー。



キネマの天地 ~映画雑食主義~-江分利満(小林桂樹)

↑小林桂樹さん演じる江分利満。酒グセ極めて悪し(笑)




んでもって物語は江分利の綴る小説を江分利自身がナレーションする形で進むのですが、

話の内容に関してはまさしく平凡なサラリーマンの日常を綴ったエッセイの映画化って

感じですねー、自分たちが暮らす社宅の庭が隣の庭より広くて嬉しいとか、スーツは軍服を

仕立て直したものが丈夫で一番いいとか、そんなたわいもない話が続きます(笑)

ただその描き方が面白いから観ててちっとも飽きないんですよねー♪( ´艸`)

まず小林桂樹さんのナレーション自体が朴訥としていながら随所にユーモアが効いてて

楽しいし、演出的にもアニメーションを挿入したりストップモーションを用いたりといろいろ

工夫されてます。

この辺はさすがエンターテイナー岡本喜八ですねー、小津安二郎成瀬巳喜男とは

また違った方法で市井の人々のごくありふれた日常を描き出してますよ。



ただそんな「平凡な物語」の中にもそこはかとなく感じられるのが、過ぎ去りし戦争の日々の

中で人々が受けた深い傷跡。戦争特需で成金になり、しかし終戦とともにまた借金とりに

終われる身に逆戻りした老父のエピソードや、酒の席で若い部下を相手に戦争に青春を

奪われた者たちの恨み・つらみを延々のたまい続ける映画終盤のシーンなどは、

ユーモアの中にも戦争に対する強い怒りが込められていて、確かな復興の道を歩みながらも

いまだ戦争の爪痕が深く残る昭和三十年代という時代に生きる人々の心情が

ひしひしと感じられます。

特に終盤の「江分利の独壇場」は圧巻でしたねー!ヘ(゚∀゚*)ノ  岡本監督いわく「観客が

江分利の長話に付き合わされる部下の気持ちになれるようにわざとひたすら

冗長にした」とのことですが、・・・岡本監督、残念ながらその試みは失敗のようですよ? 

だって全然退屈に感じなかったもーん♪ヽ(゜▽、゜)ノ

あるいは小林桂樹さんの演技が素晴らしすぎたのかもしれませんな、ウン。

あ、あと江分利の妻を演じた新珠さんも素敵でしたー♪(〃∇〃) 最初は冴えない平凡な

サラリーマンでしかない江分利の妻にしては美しすぎるようにも感じましたが、

様々な騒動にも動じることなく江分利を支え続ける天真爛漫とした姿が頼もしいやら、

実はただ単に事の深刻さがわかってないだけでは?(・Θ・;) と不安になるやらで

実にキュートでしたw





総評。

これまでお届けした岡本作品とは全く作風の異なる作品ですが、しかしコレもヒジョーーーに

面白かった!!!ヽ(゜▽、゜)ノ コレを岡本監督の最高傑作に挙げる方が少なくないのも

頷けますなー♪:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

ってワケでもちろんオススメです!!