【映画】『リアル・スティール』 | 『e視点』―いともたやすく行われるえげつない書評―

【映画】『リアル・スティール』


★★★★☆

あらすじ

2020年、ボクシングは、生身の人間ではなく高性能のロボットたちが闘う競技になっていた。
元ボクサーのチャーリーは、ロボットの賭け試合などで生計を立てていた。
ある日、かつての恋人が亡くなり、その息子・マックスがチャーリーの元にやって来る。
部品を盗むために忍び込んだゴミ捨て場で、マックスはATOMという旧型ロボットを見つけ、家に持ち帰ってきた。
マックスはATOMをチューンナップし、試合に出場する事を決意する。

感想

言いたいことは山ほどあって、完璧とは程遠い粗削りなシナリオではあるけれど、ベタすぎるほどにベタな王道のストーリー展開は、やっぱりすげー感動できる。

制作ロバート・ゼメキス、製作総指揮スティーブン・スピルバーグという「バック・トゥ・ザ・フューチャー」コンビが絡んでることや、ボクシングシーンの監修をあのシュガー・レイ・レナードがやってるとこが気になって見に行ったようなもんだったけど、叫びたくなるシーン満載の、アツくて、泣けるいい映画だった!

$e視点-リアル・スティール


まあ、正直なところ、おおまかなストーリーは予告編を見ただけでわかっちゃう気がしていて、映画館で見るかどうか迷っていたんだけど、意外にも「思ってたんと違う!」と言いたくなる箇所は多かった。
(まあ、おおまかなストーリーは予想通りのベタベタな王道なんですけども。)

まず最大の衝撃が、本作のロボットたちが「自立ロボット」では無いってところ。
「親子の絆を取り持つ無垢なロボット」みたいなストーリーを想像していた僕としては、リモコン操作のロボットだというところにビックリ!
途中、子どもとロボットが心を通わせているのかと思わせるシーンがあって、「ふむふむ、実はこのATOMってやつだけは自我があるんだな。んで、こいつを通して親子の絆を取り戻していくんだな。」と思ったけれど、やっぱりATOMさえも最後まで「人が操作するロボット」
まあそれでも、ATOMが「親子の絆を取り持つ」っていうことにはなっているんだけど、あそこまでロボットを生き物っぽく動かして、ボクシングシーンでの「立てー!!!」みたいなのをやっといて、お前が操作しとるんかい!っていうのは、最後まで突っ込まずにはいられなかった。

そして、ヒュー・ジャックマン演じるチャーリーという男が予想以上のクズ人間。
予告編の時点で落ちぶれた男であることは想定していたけど、息子の親権をあっさりと金で売り飛ばそうとするような真性のダメ男だった。
そもそも、10年前に別れた奥さんとの子どもに「9歳だったっけ?」って聞くって、どんだけ興味ないんだよ!

他にも予想外だったのはサウンド・トラック
感動的な映画なわけだから「感動的なバラード調の曲が使われるんだろうなー」とか、「ボクシングのシーンでは『ロッキーのテーマ』的な感じの曲が流れるのかなー」くらいに思っていたんだけど、斬新なサントラ。
オープニングこそ静かな曲で始まるんだけど、中盤以降はビースティー・ボーイズエミネム50セントの曲が使われていたり、フー・ファイターズリンプ・ビズキットが使われたりとゴリゴリ系の曲だらけ。
ロボットボクシングの世界では日本が重要な国の一つではあるらしく、日本語をペイントしたロボットなんかも出てきて、「日本」「ゴリゴリの音楽」「電飾ギラギラのロボット」「地下スポーツ感」が相まって、世界観としては『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』に近いんじゃないかとすら思ってしまった。
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さらに、ストーリーについてのツッコミどころも非常に多い。
父と息子の確執を軸に進んでいく物語なんだけど、息子がロボットに興味を持っているせいで、特に障害もなく(むしろ、結構仲良さそうに)序盤から一緒に行動しちゃっているのはどうなんだろう?とか。

父親のダメなところを子どもが見てしまうシーンが必要なストーリーなのはわかるけど、「いいかげんな生活の代償としてボコボコにされる」っていうシーンがあんなに後半にあっても、息子は父を「ダメな男」とは思わんだろ!とか。

ATOMと出会う前に「ロボットボクシングでロボットが壊されたけど、運良く次の新しいロボットが見つかった」なんていうエピソードを描いてしまうと、「ATOMが特別なロボットでATOMに賭けることが最後のチャンス」っていう風には全然思えないよ!とか。

そもそも「ダメな父親の再起」を描くなら、チャーリーの若かりし日の栄光をもう少しわかりやすい形で提示しなきゃダメだろ!とか。

数え上げればキリがないほどの「突っ込みどころ」というか「ストーリーの粗」が見えてくる。

細かいところを言えば他にも、「格闘技としてルール無用過ぎ」とか、「ロボットにボディへの攻撃って有効なのか?」とか、「そもそもどのくらいの期間のお話なのかがつかめない」とか。
(あとは、ヒュー・ジャックマンがかっこ良すぎて、ダメな父親に見えないとかね。)

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それでも、「細けぇこたぁいいんだよ!」と言えるのは、やはり最後の試合の出来のおかげ。
これまた「THE王道」の試合展開ではあるんだけど、最終ラウンドの展開はとてつもなくアツい。

そもそもATOMは、人間の動きをトレース出来る「シャドー」という機能だけが売りのショボいロボット。
そのシャドーによって「子どもと一緒にダンスをする」というキワモノ的なパフォーマンスで人気が出て、元ボクサーのチャーリーの動きを真似した人間的な動きのおかげて勝ち続けてきた。

人気があるのにも、勝ち続けているのにも、「主人公だから」だけではないちゃんとした理由があるわけで(打たれ強すぎるのは「主人公だから」な気がしないでもないけど)
そうやって、きちんと積み上げられてきた伏線がちゃんと形を成すという意味でも、この最終ラウンドは本当に素晴らしかった。

その後の展開も、これまた「どこかで見たことあるような展開」ではあるんだけれども、それまで「チャーリー」と呼んでいたマックスが「お父さん!」と呼んでしまうシーンではグッときてしまう!


映像も本当に綺麗で、CGで作られたロボットの戦いなんだけど、いい意味でCGであることを意識せずに見られるレベルのクオリティ。
ボクシングシーンでの「重さ」を感じられる迫力のある映像も素晴らしかった。
ロボットの戦いといえば「トランスフォーマー」が筆頭株って感じだけど、映像の空気感は「第9地区」に似ている気がする。
さりげないけれど、最高レベルの映像だ。

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というわけで、あらを探せばキリがないような物語ではあるんだけれども、何の心構えもせずに「感動」の波に身を任せられる王道の映画。
チャーリーがダメ人間から「父」へと成長を遂げるのに対し、息子マックスが全然成長しない気もする(しかもちょっと調子ノリ。父親似か?)ので、チャーリーにのみ感情移入をして見るのがオススメです。

ボクシングがテーマということで、あの映画界の至宝『ロッキー』を彷彿とさせるシーンが多い映画でもある本作(終わり方とか、モロです。)
しかも、「どん底の負け犬が這い上がる物語」という意味で『ロッキー』
「絶対に勝てそうにない相手に果敢に向かっていく物語」という意味で『ロッキー4』
「息子のためにもう一度立ち上がる父親の物語」という意味で『ロッキー・ザ・ファイナル』とシリーズのエッセンスが凝縮されているので、本作一本で『ロッキー』クロニクルの全てが味わえるという意味でもオススメの一作でした。

我が家でも本格的に「子作り」に取り組んでいる今日この頃。
父になる前に見ておくべき一作として、「リアル・スティール」はなかなか素晴らしい映画だったのでした。

今日の余談

僕は映画館で映画を観るときは、できる限りパンフレットを買うようにしている。
んで、昔から映画のパンフレットには芸能人のコメントが掲載されることが多い。
本作もしかり、「父親であること」を見つめ直す映画という意味で、父親タレントのコメントが掲載されるのは、まあ当然の流れではあるわけです。

でもねぇ、ストーリーやヒュー・ジャックマンのコメントよりも前に中山秀征のコメントを載せるってどういう構成だい!

今日の余談②

実は今、一番楽しみにしているテレビ番組が「仮面ライダーフォーゼ」だったりしまして。
ちょうど今、仮面ライダーフォーゼの劇場版が公開中でして。
そんなわけで、全然関係ないにもかかわらず、映画館の売店でフォーゼグッズを購入してしまいました。
$e視点
「仮面ライダー部のステッカー」と、「ロケットスイッチのボールペン」です。
うーん。素晴らしい!


先述のとおりゴリゴリ系のサントラ。コレは欲しい!
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世界観としては、コレが近いんじゃないでしょーか。
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