【ジョジョリオン】#001 「壁の目」の男 ―進化した荒木飛呂彦の絵は杜王町をも解放するか?― | 『e視点』―いともたやすく行われるえげつない書評―

【ジョジョリオン】#001 「壁の目」の男 ―進化した荒木飛呂彦の絵は杜王町をも解放するか?―

ウルトラジャンプ 2011年 06月号ウルトラジャンプ 2011年 06月号


集英社
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★★★★☆

感想
今更だけど、今月号のウルトラジャンプで、
「ジョジョの奇妙な冒険第8部 ジョジョリオン」の掲載が始まった。

よせばいいのに発売日の前日にネタバレ情報を読み漁ってしまったが、「これは嘘だろ!」と思っていた情報が、ことごとく真実だという強烈な第1話。

まさかの、震災ネタ(しかも3月11日の震災って。。。)。
まさかの、キンタマネタ(ジョルノの「耳」のように、特に意味のない設定なのか?)。
相変わらず、トガってます。

スティール・ボール・ラン同様、1~6部のジョジョ世界とはパラレルワールドの関係性にあるようで、舞台となる杜王町も、4部の杜王町とは、「似て非なる世界」。
住所が、S市紅葉区杜王町になっていたり、
町のマークや主産業が変わっていたり。(名産品の「牛タンみそ漬け」は変わらず。)
人口は約1万人減っているが、これはパラレルワールドだからなのか、震災の影響なのか。。。


そんな風に、僕らが知らない「杜王町」を舞台に始まったジョジョリオン。
スティール・ボール・ランの第1話がそうだったように、
第1話は、「そこかしこに散りばめられた『旧ジョジョ世界との共通点』を見つけて、ワーワー騒ぐ回」だった。

表紙と扉絵の男(たぶん主人公)の帽子に「あのマーク」が!!(肩にはもちろん星のアザ!)。
1ページ目から登場した女の子の名前が、広瀬康穂(ひろせやすほ)!!
その幼なじみが、東方常秀(ひがしがたじょうしゅう)!!(しかも、キレキャラ)。
という具合に、ワーワー騒いでいるうちに、結局、主人公の名前も能力も不明のまま終わってしまった。

これは「呪い」を解く物語―
という広瀬康穂の独白も、その「呪い」が意味するものが何かは分からない。
この『物語』は僕が歩き出す物語だという、ジョニー・ジョースターの独白で始まるスティール・ボール・ランに似た立ち上がり。
スティール・ボール・ランの世界とも別の、また新しいパラレルワールドであることを示唆しているのだろうか。

ともかく、
何も起こっていないに等しいけれど、これから始まるであろう「謎」の片鱗を見せられた第1話。
頭の中では、すでにゴゴゴゴゴゴの音が鳴り始めてますよ!

考察

基本的に、「信者」レベルで荒木マンガを崇拝している僕としては、ずっと荒木飛呂彦に付いて行くつもりだ。
しかし、今回のジョジョリオンには、少~しだけ気になる所がある。

第5部で一度は完成したと思わせた荒木飛呂彦の絵。
6部ではほとんど大きな変化は見られなかったが、前作の「スティール・ボール・ラン」において大きな変化を見せた。
月イチ連載になったせいなのか、書き込みの量が増え、構図もより難解なものへと変わった。

そして、
絵の変化と時を同じく、スティール・ボール・ランで大きく変わったものが『コマ割り』だった。

$e視点~viewpoint from "e"~-ジョジョコマ割り(Dio登場)ユリイカの荒木飛呂彦特集の中でも触れられていたが、
第3部のディオ登場の辺りから、荒木飛呂彦の絵を特徴付けているものが、独特の『コマ割り』だ。

荒木飛呂彦曰く、「特別な意図があるわけではなく、絵をうまくコマの枠内に収めるための工夫」ということらしいが、
第3部から第6部までの荒木飛呂彦マンガの特徴の一つが、「ページの形と大きく異なる変形ゴマ」なのは間違いない。

変形ゴマは、ページの枠に対して、非垂直、非水平の線で構成されている「歪んだ形」。
それが生み出す効果というのは、読者に与える「不安定感」なのだと思う。

「何がおかしいのか解らないけど、何かおかしい!」
という不安を、この「変形ゴマ」の「歪み」が生み出しているのだ。

そして、変形ゴマが生み出す「歪み」の効果が最も顕著で効果的に現れていたのが、「日常に潜む歪み」を作品のテーマにした第4部だった。
そう、今回の「ジョジョリオン」と同じ場所を舞台にした第4部だったのだ。


そんな「変形ゴマ」だが、前作のスティール・ボール・ランからは、使用が控えられている。(というか、ほとんど使われていない。)

$e視点~viewpoint from "e"~-荒木飛呂彦コマ割り SBR編その代わりに多用されるようになったのが、タチキリのコマ割りだ。
タチキリとは、ページの端まで絵を入れること(絵の周りに余白がないこと)で、
スティール・ボール・ランでは、ほぼ全てのページがタチキリで描かれている。

絵柄が少しずつ変化して来たのに対し、タチキリのコマ割りはスティール・ボール・ランの第1話から使われている。
明らかに、意図的にコマ割りの方法を変えたのだ。
スティール・ボール・ランの舞台である西部アメリカの「広大さ」を表現するのに、タチキリが向いていたせいなのだろうが、
最近の荒木飛呂彦の作品は、岸辺露伴を主役にした短編などの「広大さ」とはあまり関係のない作品までが、ほぼタチキリで描かれるようになった。

先月、ジョジョリオンの掲載が発表され、舞台が「杜王町」であることも発表されたが、変形ゴマのコマ割りと、タチキリのコマ割りのどちらが使われるのか非常に気になっていた。
今月号を見る限り、今作ジョジョリオンも「タチキリのコマ割り」で描かれるようだ。

これは、どうなんだろう?

同じく杜王町を舞台にした「第4部」は、ジョジョの中でも特に「閉鎖した空間」を舞台にしたストーリーで、前述したとおり、「日常に潜む歪み」を描いたものだった。
今作も、第4部と同じように、どこかにありそうな街の「日常に潜む歪み」をテーマにしたものだとしたら、
広大さを表現し、外部への解放をイメージさせてしまう「タチキリのコマ割り」が、本当に正しい表現方法なのだろうか?
第4部的な、「ジワジワと襲ってくる等身大の恐怖」みたいなものが、今のコマ割りで味わえるのだろうか?

少~しだけ気になる所だ。


まあ、そもそも「変形ゴマのコマ割り」と「タチキリのコマ割り」の使い分け方についても、荒木飛呂彦が言ってるわけではなく、感覚的に使い分けた結果、そういう効果を生んだというだけのことかもしれない。
感覚的に生み出した新しい表現で、第4部以上に「恐怖」を感じる物語になるかもしれないし、
まったく新しい感覚を覚えるような物語になるかもしれない。

「進化した荒木飛呂彦のコマ割りは、閉鎖空間の杜王町すらも、より広大な世界へと解放するのだろうか?そして、それは震災で被害を受けた杜王町への救いなのか?」


何を言っているのか解らないかもしれないけど、何が起こるのか解らないのがジョジョなのだ。

とにかく言えることは、「来月が、チョー楽しみだ!」ってことだ。
他に読むマンガが一つも無いウルトラジャンプだけど、来月が、チョー楽しみだぜ!!!

今日の余談

実際のところ、コマ割りが生む効果ってどれほどあるんだろう。
ジョジョを読んでいると、コマ割りの効果ってとてつもないように感じる。
$e視点~viewpoint from "e"~-荒木飛呂彦コマ割り

だけど、
めちゃめちゃ面白いのに、コマ割りはほぼ四コママンガのものもある。
$e視点~viewpoint from "e"~-修羅の門コマ割り

不思議で奥が深いぜ、マンガ。

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ユリイカ2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦 鋼鉄の魂は走りつづけるユリイカ2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦 鋼鉄の魂は走りつづける

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