ガリヴァ危うし、踏絵をさせられそうに・・・! | 高山右近研究室のブログ

高山右近研究室のブログ

・右近についての、Q&A 
・右近研究こぼれ話 など

監修 右近研究家・久保田典彦
http://takayama-ukon.sakura.ne.jp/

Q.「ガリヴァ旅行記」(スウィフト・作)の主人公・ガリヴァが、日本を訪れ、踏絵をさせられそうになったそうですが、そんな話が本当にのっているのですか。

A. そうなんですヨ。「ガリヴァ旅行記」は、決して子ども向きの読物ではなくて、当時(1720年頃)のヨーロッパの時代と社会を、痛烈に諷刺した作品です。

 全4篇から成っていて、第1篇の「リリパット(小人国)渡航記」・第2篇の「ブロブディンナグ(大人国)渡航記」の部分は特に有名ですが、「日本渡航記」は、第3篇の終わりの第11章に登場してきます。5ページほどの短い話ですので、是非、お読みになってみてください。

※ 1709年のことで、ラグナグ国の国王の親書をもって、日本行きの船に乗り、まず首府である江戸を訪ね、将軍(陛下)に拝謁を許されます。「なんでもいいから、願いの筋を申し上げるがよい。」との仰せを受け、ヨーロッパへ帰りたいと思っていたので、

● 仰ぎ願わくは、長崎まで無事に送り届けていただきたい、と答えた。そして更につけ加えて、いま一つぜひお願いは、わが庇護者なるラグナグ王の名前に免じて、どうかわが同胞たちに課せられる、あの十字架踏みの儀式だけは免除していただきたい。・・・ ところが、陛下はいささか意外だというような面持ちだった。そして言われるには・・・ 我輩(ガリヴァ)こそ、本当のクリスチャンに相違ないと思えるが、という仰せだった。

 だが結局、ラグナグ王を満足させる方が主な動機だっただろうが、とにかく我輩のこの奇妙な希望を許そうということになった。だがそれにはよほど事をうまく運ぶ必要がある。で役人たちには、いわばボンヤリしていて我輩を見遁(みのが)してしまったというていに計らうよう、命令しておこうという話だった。・・・ 我輩は通訳を通して、この異教徒の好意に対し篤く感謝の意を述べた。
それにちょうどその時、長崎まで行軍しようという部隊があったので、さっそくその指揮官に我輩を無事長崎まで護送するよう、その他、例の踏絵に関する詳細な指令と一緒に、命令を発せられた。

※ 「ガリヴァ旅行記」(スウィフト・作 / 中野好夫・訳 / 新潮文庫)

$高山右近研究室のブログ