三浦綾子さんの「細川ガラシャ夫人」に出てくる「こんてむつす むん地」という本のこと | 高山右近研究室のブログ

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監修 右近研究家・久保田典彦
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Q.三浦綾子さんの書かれた「細川ガラシャ夫人」を読んでいましたら、「こんてむつす むん地」という本のことが出てきましたが、どんな本なのですか。又、高山右近も読んだのでしょうか?

A.聖書の次に、よく読まれてきた信仰書と言えるかもしれません。あるいは,みなさんも読まれたのではないでしょうか。
「イミタチオ・クリスティ」(「キリストに倣(なら)いて」)、著者は、アウグスチノ会の修道士トマス・ア・ケンピス。あるいは、トマスもその指導を受けたヘーラルト・ホロートの作になるものを、トマスが修正、増補、編纂(へんさん)したものである---とも言われています。

 キリシタン版としては、1596年、ローマ字によるものが天草(熊本県)で出版され、1610年には、国字(平仮名を主とした漢字まじりの文)によるものが京都で出版されています。

 これらの年には、高山右近は金沢に在住していますが(1588年~1614年)、これらまとまった形での出版より先、1588年2月20日のフロイスの書簡に、”細川ガラシャの求めに応じて贈った”とありますから、早くから、部分的な翻訳がなされていたことは確かのようです。

 聖書とともに有名な書ですから、パードレ(神父)達も紹介したでしょうし、高槻、明石時代の右近も、おそらく,その内容の一部には触れていただろうと思われます。

 国字本「こんてむつす むん地」は、名訳で、格調の高さを保ちながら、わかりやすい文体であり、吉利支丹文学中の傑作といえます。

 尚、書名の「こんてむつす むん地」(ローマ字体「CONTEMPTVS MVNDI」)とは、”世の思いを捨てる”こと(世界のみもなき事をいとふ事)、
「イミタチオ・クリスティ」とは、”キリストに倣う”(イエス・キリストをまなひ奉る事)ということで、共に、書き出しの第一章の章題からとられたものです。

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