シアター風姿花伝「いま、ここにある武器」プレビュー初日観てきました✨
{40372CEB-A652-4DD7-9B77-45A075B111E8}

こちら↓あらすじ(HPより)。
航空力学の研究者が、民間人の誤爆を防ぐためと信じて<無人飛行機誘導プログラム>を開発する。しかし、そのプログラムは国家と軍需産業の取引に利用されてしまう。彼は兄にそのことを批難され苦悩するが・・・。
<平和のために>政府プロジェクトの一員となった男の葛藤を軸に、連綿と続く戦争の背景にある国家・企業そして人間達の姿を描く。

と、いうもの。
キャストは
ネッド…千葉哲也
ダン…中嶋しゅう
ロス…那須佐代子
ブルックス…斉藤直樹
です。
若干ネタバレ気味なので、気になる方は◆の間をすっ飛ばしてください

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ワタシね、前の日記に書いたように、違う方の演出でも観てるのですが…
こんなに面白かったっけ!?
というのが、正直な感想です(^_^;)
どっちにも、しゅうさん同じ役で出演中されてますが…本当に面白かったです

冒頭のネッドとダンの会話から、作品に引き込まれます。
ダンの衣装がすんごい可愛い(笑)…のですけど、2人の軽妙な会話&やり取りに笑ってると、不意にゾワリとするモノがやってきて。「え、この人、何言ってるの?」っていう。さっきまで話していた相手が、知らない人みたいに思える。←この辺の、しゅうさんの台詞聞いてたら切なくて涙出た:( ´◦ω◦`):

ネッドは自分の発明が軍事転用可能であることは理解していた。けれど、被害を「必要最低限」に止められる、素晴らしいものだと思っていた。
機械はミスをしない、と信じているから。
人を「殺す」兵器の話を、嬉々として…笑顔で話すネッドが怖くなります。褒めてもらえる、と思ってたのかなって。
ダンの「情報そのものが間違っていたら」「意図的に、間違えていたら」という問いに答えられない。その可能性は「想定外」だったから。
そして、観ているワタシたちは「想定外」は起こることだと、もう知っている。
あと、2010年よりドローンとかも身近なものになっていて。そのぶん、内容がより現実味を覚えたというのもあるかも。←前は少し近未来な感じがあった

そしてネッドは、モラルと良心、個々の正義と利益に追い詰められていく。ネッドだけでなく、ダンも。

劇中、カラシニコフや原爆が例にあげられていますが…この間観た「コペンハーゲン」のハイゼンベルクたちの原子力の話や、先日テレビで見た、原爆を作った人たち、原爆を落とした飛行機に乗っていた人たちの話。
それから、第一次世界大戦の頃に毒ガスを発明したハーバー(奥さんが哀しい)のような人たちのことを考えます。←ハーバーは知るとツライのでぜひ
「武器」「兵器」というと過去を振り返るけど…でも、この作品で恐ろしい&すごいところは、今なお「作り続けられている」現実を描いていること。
そして、ロス(那須さんがアクティブでとても素敵で、キレッキレでした✨)のように兵器は「産業」として儲かる、という現実も。

戦争によって様々なものが発明されて、技術が進んだのは事実だと思います。だけど、でも、観ているワタシは、冒頭のネッドの言葉には頷けない。
そして、ロスたちみたいな「私たちは売るだけ」「使ってないから責任はない」みたいな考え方も「嫌だな」と反射的に感じる。
感じるけど…でも、実際に動き始めてしまっているものに対して、自分の力なんてちっぽけに感じるほど大きな力に対して、拒否し続けるのはとても難しい。そこさえも、この作品では描いています。
どちらが善で、どちらが悪で…ではなく。主観的な「正義」同士の話。戦争と一緒で。
ただ、戦争は力の強い方が勝って、勝った方の正義で語られることが多くて。その中で「これは誤りだった」ということは、とても難しいということ。原爆の是非とか、いろいろ。
その中で、傷ついた人たちの声は「これで戦争が早く終わったのだ」「犠牲を抑えられた」と(特に勝った側の国では)いわれる。そう思うことで、良心から目をそらすためもあるかもしれないけど…「それが事実だ」と盲目的に信じてる現実もある。

理性と良心、守るべきものや生活が天秤にかけられる。どちらを選んだとしても、どちらを優先したとしても。それは、その人が「弱い」からではない…と思う。
もしこれが、ハリウッドの作る映画だったら。
ネッドは計画を断念できるだろうし、ダンはブルックスのプレッシャーに負けないかもしれない。ロスはネッドの信念に揺らいで、組織を裏切るかもしれない。ブルックスは彼らに負けるかもしれない。
でも、これはそういうモノではない。描きたいのは、そういうことではない。「特別」な人間の話じゃない。
2幕のブルックスとダンの場面はめっちゃ怖いです:( ´◦ω◦`):

正解のない選択。
でも、選ばなければいけない。
戦争とは、武器を持つということは、そういうことなのだと思う。

人を守るための道具は、人を殺すための道具にもなって。それは、使う人が「殺人」を犯すということ。
ネッドの発明は、実際に殺す作業をロボットに転嫁することで、「向こう側」の人間がデータや数字になってしまう。操作する人間は良心の呵責から目をそらすことができるかもしれない、と思う。

過去現在、どんな武器も、人を不幸にしたくて発明されたわけではない…と思います。
考えた人たちは「良いことをしている」と信じて…「これで戦争が終わる」と信じてたと思う。でも、戦争は、人が人を殺すことは無くならない。地球のどこかで、国同士が、人同士が戦ってる。

「しあわせの贈り物」という、最後のネッドの台詞が哀しいです。そう思って、研究してたはずなのに、って。
でも、できることならば、優しい発明ができるように…と願わずにはいられません。

明確な答えは、この作品にはありません。
そして、映画に出てくるようなヒーローもいません。
だからこそ、観た人一人ひとりが心に持って帰って、考えることのできる作品だと思います。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

風姿花伝の大きさが、作品にとても合ってたと思います。
美術だけでなく音響や空調まで利用した表現に、いつしか客席も傍観者ではいられなくなる。キャスト4人の芝居はとにかくいいです✨
小川さんの翻訳もですが、千葉さんの演出がとても小気味良く、戯曲にも書かれてる「間」が面白いの(^_^;)
2時間半超だけどあっという間でした

情報を伝える、知るためのメディアって沢山あって。その中で、「なぜ」わざわざ足を運んで劇場で芝居を観るのか…というのがあると思います。
それに対してワタシは「劇場で、生のライブでしか味わえないモノが確かにある」というしかないのですが。
この「いま、ここにある武器」はまさにその最たる作品だと思います。
ぜひぜひ、見てみてください
後半に行くにつれて、ちょっとずつ価格が上がっていきますが…それも、やっぱりブラッシュアップとか煮詰まっていくのを考えたら全然安いんじゃないかと。←最終的に5900円


あ、ワタシですか?あと3回観ます←増やしたいw