高級ブランドスプリングはどこが違うのか。 | 「うえしまクリニック」〜縁の下の整体師〜

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20年弱、サスペンションとセッティングに明け暮れて、いつの間にやら職人と呼ばれるように。

コンプリートセットアップしてこそクルマは変わります。

2022年9月。フリーランスとして起業しました。
足回り調整屋さんです。

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さて、今回は前回のコラムの続き。

 

 
前回のコラム。
 
 
要約すると、
 
「バネのブランドに拘るよりも、目的とダンパーに合わせたセッティングの方が大事だよ。」
 
という話。
 
貧乏でも、とりあえずなんとかなるぞ。
 
だから創意工夫頑張ろうぜと。
 
 
そしたらね、某どこかのショップの方がこんな事を書いてるのを見た。
 
 
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あらま。
 
まるでTEIN社のスプリングが、読み方によってはアレみたいな書き方ね。
 
プロの業者さんが、オフィシャルのblogで「名指しでパーツメーカーをdisる」ように読める記述をするのはどうかと思うなー。
 
うえしまみたいな趣味の個人が、好き勝手日記書いてるのとは違うと思うんだけど大丈夫なのかなぁ。
 
それに、わざわざ赤線引いといたけど、
 
スプリングブランド変更と同時に、「レートも変えて足回りのキャパシティも変えてる」のね。
 
そりゃ、アンマッチだったダンパーとスプリングの組み合わせを、マッチングするモノに変えれば良くなるでしょ。
 
それまでのTEINスプリングが悪かった訳じゃなくて、「それまでのセットアップがマズかっただけ」だよね。
 
それのリセッティング作業を依頼されて、その要望に応えるのはチューニングショップとしては良い仕事だと思うし、
そこのショップはそれでちゃんと実績を出しているのだから、それは素晴らしいノウハウだと思う。
 
でも、あたかもブランドの差が大幅に性能の差が出るように感じさせる記述はね、
ちゃんと説明しなきゃ宗教だし、
 
そうじゃないと言うのなら「正しくデータに基づき比較して整合性を証明」しなきゃいけないんじゃないのかなぁと思う。
 
それをしないのなら「好き/嫌い」の感情論でバッサリやった方がむしろ清々しい。
 
まぁ、趣味個人のうえしま。
 
別にそこのショップさんに恨みがある訳じゃないし、飯のタネを奪うつもりもないのでそのショップの名前は伏せておきましょうかね。
 
 
さて、
 
 
 
せっかくの機会だから、公表されている各社の「スペックシート」で比較してみよう。
 
高級ブランドスプリングは、安価なバネとはどこが違うのか見えてくるかもしれない。
 
そうしたら、高価なバネを買う理由もあるはずだ。
 
比較の仕方はこのようにする。
 
車高調用汎用直巻スプリングの中で、どのメーカーもラインナップしているサイズ。
 
コレのスペックを比較してみよう。
 
【ID65  6kgf/mm  203mm(8インチ)】
 
 
まずはうえしまが良く使う【MAQSスプリング】
 
・安い(1本5千円以下)
・早い(納期2日くらい)
・オレンジ(うえしまの好みw)
 
さて、スペックはどうか。
 
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・ID65 6kgf/mm 自由長200mm 
・単体重量  1.2kg
・許容ストローク  118.2mm 
・許容荷重(キャパシティ)713kgf
 
 
とりあえずMAQSの良否は置いといて、これを基準にしてみよう。
 
 
さぁ件のハイパコ。
 
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・高価  1本15,000円くらいから。
・なんか凄いらしいというブランドイメージが凄い。
・「レート安定」「品質安定」の信頼感。
 
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・ID65  6.3kgf/mm 自由長203.2mm 
・重量 不明
・許容ストローク  133mm 
・許容荷重(キャパシティ)835kgf
 
MAQS対比で、
 
・ポンド単位で作られているのでレートが0.3kgf/mm高い
 
・インチ単位で作られているので、自由長が3.2mm長い
 
・許容ストロークが14.8mm長い
 
・キャパシティが122kgf多い。
 

うむ。流石高級ブランドスプリング。
 
同じ自由長/レートでも「有効ストロークが長い」から「キャパシティが多い」ね。
 
こーゆースペックだと、レートアップする時に有効な場合がある。
 
同じ自由長でそのままレートアップすると、コイル線径が太くなるので有効ストロークが減少してしまう。
 
ちなみにハイパコ同士でも、6kgf/mmと10kgf/mmの場合だと、硬いバネの方が10mmほど有効ストロークが減る。
 
以前にもどこかに書いたように、車高調のレート変更する際の注意点は、
 
 
スプリングの有効ストローク>ダンパーロッド長
 
 

これを守らないとバネの「オーバーストローク」の心配が増す。
 
なのでレートアップする際に、有効ストロークを把握して、
 
・足りないようならスプリング自由長を1サイズ長くしたり、
 
・有効ストローク稼ぎにヘルパースプリングを追加したり
 
・(公道以外限定だが)0G状態でスプリングを遊ばせて、バネの有効ストローク以内に収めたり
 
という作業を必要とするのだが、ハイパコのように有効ストロークの長いバネはそこで使い勝手が良いとなるね。
 
ハイパコはレートアップに向いたバネ。
 
という事がスペックシートで読み取れた。
 
 
 
 
では次に行こう。swiftスプリング
 
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ハイパコ登場以前に大人気だったバネ。
 
価格は1本 11,500円くらい。
 
バネの塗装が凄く綺麗。
 
オープンエンドというタイプのバネで、縮み始めがしなやかとかって話もある。
 
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・ID65  6kgf/mm 自由長203mm 
・重量 1.12kg
・許容ストローク  118mm 
・許容荷重(キャパシティ)708kgf
 
 
MAQS対比で、
 
・単体重量が0.08kg軽い
 
・インチ単位で作られているので、自由長が3mm長い
 
・許容ストロークが0.2mm短い
 
・キャパシティが5kgf少ない
 

ふむ。このレートと自由長だと、公表スペック上、殆ど差がないと言えるね。
 
MAQSが凄く健闘してる感じだよね。
 
 
だけど、swiftの強みは1kgf/mm毎に細やかなラインナップがある事。
 
自由長も多彩で、とても使い勝手が良い事。
 
そしてやはり、メタリックの塗装がカッコ良い事。
 
その辺りに選択の理由があるのかな。
 
 
さ、次に行こう。次はサスペンションプラスだ。
 
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サスペンションプラスは、ハイパコが流行した後に出てきたメーカー。
 
玄人ショップが使ったりしている。
 
「UC-01」「UC-03」と性格違いで直巻スプリングのラインナップはあるが、今回は最初に出したUC-01で比較する。
 
価格は1本 11,000円くらい。
 
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・ID65  6kgf/mm 自由長203mm 
・重量 不明
・許容ストローク  115mm 
・許容荷重(キャパシティ)692kgf
 
MAQS対比で、
 
・インチ単位で作られているので、自由長が3mm長い
 
・許容ストロークが3.2mm短い
 
・キャパシティが21kgf少ない
 
 

ふうむ。
 
 
スペックシートだけだと、MAQSと大差ない感じはするね。
 
つーかMAQS頑張ってるなぁって印象だ。
 
ほぼ半額なのにね。
 
 
さて、
 
うえしま的にバネの仕様を見る時には、最低2つの部分を気にする。
 
「スプリングの有効ストローク」
 
・MAQS       118.2mm 
・ハイパコ    133mm 
・swift           118mm 
・S.P.            115mm 
 
「最大許容荷重(キャパシティ)」
 
・MAQS       713kgf
・ハイパコ    835kgf
・swift          708kgf
・S.P.           692kgf
 
 
今回比較した中では、やはりハイパコが群を抜いて数値が大きいのが判った。
 
さすがハイパコ。高性能高級スプリングだねって感じ。
 
だが、バネが優れているからといって、それがそっくりそのまま足回りの性能に直結する訳ではない。
 
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例えばこのダンパーのロッドストロークは、70mm。
 
判りやすい例として、このダンパーにバンプラバーは組み込まず、
上記の全てのバネのプリロードはゼロで使うと仮定した場合は、
 
どこのどのメーカーのスプリングを用いても、70mm縮んだところで打ち止め。フルバンプとなる。
 
つまり、ハイパコだろうがMAQSだろうが、
 
6kgf×70mm=420kgf 
 
ここまでストロークしたらおしまいなので、どのメーカーのスプリングだとしても【脚の性能的には】差が無いと言えてしまうのだ。
 
 
例えばこのダンパーで、プリロードゼロで最高のキャパシティを(計算上)持たそうと考えると、
 
やはりハイパコバネを使うのか一番。
 
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6インチバネで26.8kgf/mmのバネが
有効ストローク76mm。
 
26.8kgf×70mm=1,876kgf
 
 
同じダンパーで、6kgf/mmバネの時のおよそ4.5倍のキャパシティを持たせる事が理論上可能だ。
 
こうすればバネも短くなるので、全長式の場合はボトムブラケットまでの距離を稼げるので、
レートアップして車高が上がった分の下げシロを稼ぐことも出来る。
 
(ま、こんなの実際にあったら乗れたもんじゃないけどね(笑)
 
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良いスペックのスプリングは、やはりダンパーストロークや他の寸法など、
色々なファクターを勘案して「そのスペックを使い切る」ように組み込むとその良さが活きる。
 
その他のスプリングでも用が足りるダンパーや求める仕様なら、無理して高価なバネを買う理由もあまり無い。
 
やはりブランドだけではなく、用法容量を守って正しく使いたいものである。
 
そう思う うえしまである。
 
 
おしまい。