諸君が私のパーソナルな部分について……
特にプライベートな恋愛観について、
並々ならぬ興味を抱いていることは、
これまでのコメントを通して承知している。
そこで午後の講義では、
諸君ら聴講生の真摯な要望に答えるべく、
特別に私の恋愛経験について、
フランクに語っていくことにしよう。
初恋がいつかと問われれば、
それは高校入学直後の路線バス内にまでさかのぼる。
道路に飛び出す子犬。
慌ててブレーキを踏む運転手。
激しく揺れる路線バス。
急ブレーキによろめき、
私の胸に飛び込んできた彼女……。
その時の詳細な模様と恋の顛末は、
『どんと来い、超常現象』第一章の第三項、
「科学との出会い、そして初めての失恋」
に詳しいので、興味のある者は、
改めて目を通しておくといいだろう。
その後、私は数多の女性と恋をしてきた。
母之泉の事件においては、
科技大事務長の娘・美和子さんが、
私の身を挺した行動に、
憂いを帯びた視線を向けてきていた。
超能力遠隔殺人の黒坂美幸などは、
私に監視、拘束されるのを自ら望んでいたほどだ。
さらに、御告者の一件で関係した塚本恵美に至っては、
私のオートロックマンションで、
一夜を明かしてすらいる。
また、亀山歌の亀山千鶴は、
私と出会った瞬間、
彼女が恋に落ちている様子が、
ありありと見てとれた。
もっとも、その全ては相手が一方的に
私に恋焦がれていたに過ぎないのだが。
ちなみに、“完全脳内”のものを加えれば、
私の恋愛経験は、まだまだ枚挙にいとまないが、
逆に短時間では語り尽くすことが出来ない。
続きはまた別の機会に行うとしよう。
研究室で「特別講義 夜間の部」の準備を行う著者。
背後のぼやけた写真は、大学時代、
スポーツサークルで活躍していた時の
最高に輝いているヤングな著者