私は、学者として非科学的なものに

否定的な立場を取っている人間だが、

“奇妙な偶然……言い換えるなら、

“数奇な運命”というのは、

現実に存在するものなのかも知れない。



私は、ニセ超常現象解明のため、

全国各地でフィールドワークを行っているが、

どういう訳か、図らずも行く先々で、

ある人物と鉢合わせてしまう。

警視庁公安課の矢部謙三刑事である。



私個人としては、

彼に特別な思い入れがある訳ではなく、

顔を合わせれば挨拶する程度の

関係に過ぎないのだが、

いくつかの事件を解明してやっているうち、

彼の方は、すっかり私の頭脳を

あてにするようになってしまった。

もっとも、彼が持ち込むような案件は、

私にとって至極簡単very easyなものばかりなので、

たいした問題ではないのだが。



ただ、私は彼について

どうしても気になって仕方ないことがある。

矢部刑事は、

なぜ、あれほどまで強風が吹く場所を嫌い、

なぜ、頑ななまでに頭を水につけず、

なぜ「カミ」「ニセモノ」「カブル」といった言葉に

過剰な反応を見せるのだろうか……!?

すべての疑問は、ひとつの結論に

続いているようにも思えるのだが……。



昨日のように社会的意義のある疑問と比べると

ごく些細なことに過ぎないのだが、

もし、読者の中に

矢部刑事のことを知る者がいたら

私にそっと、

その訳を耳打ちしてくれないだろうか?




上田次郎オフィシャルブログ「天才の私から君へ」by Ameba


小さな疑問も放っておくことができない

それは学者としての本能なのかも知れない