堂山物語 第100話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第100話

僕はミキとの同棲生活を解消し実家に戻った。


考えてみるとミキと同棲を始めてから

僕は堂山のウリセン稼業から足を洗ったのだったから

もし、ミキと出会っていなかったら今もなお堂山町の世界から

抜け出せていないかもしれないし、そうじゃないかもしれない。


只、ボーイ稼業というものは女性風俗嬢より短命である。


僕の場合は若いのが1番のウリだったので尚更だ。



そういう意味で僕はミキと出会えて一緒に暮らせた事は

非常に大きな出来事であり人生を左右したと言っても過言ではない。



しかし一方で僕はミキという人間に何が出来たのだろう。



多分、自分の恋人や肉親が性風俗で働くことを我慢できるヒトは少ないと思う。

ミキのお父さんの反応と行動は、ごく普通のモノである。



それは、ウリセンも風俗も働いている本人が一番よく知っている事で

誰しもが、いつもでも出来る仕事じゃない。バレないうちに…と思っては、

いるもののなかなか抜け出せないでいるのが現実。



なぜ抜け出せないでいるのかは、やはりお金であろう。



世間ではセックスが好きだから風俗で働いていると思われるかもしれないが

それは下手な男の妄想と思い込みであろう。

逆に言えば、まだ体が感じているうちは新人ということになる。



万が一、セックスが好きで好きでという理由だけで風俗で働いているのであれば

それは文字通りシャブ(覚醒剤)でシャブられた可能性が高い。



もし何人もの客について1日の自分の取り分が5千円くらいであるならば

店にバンス(借り入れ)があるヒト以外は性風俗では働かないであろう。



たくさんのお金が貰えるからカラダを張って仕事をするのだ。



僕は過去にユリムという海を不法に渡ってきた子を好きになったことがある。

やがてユリムは稼ぎが悪くなり僕の前かた文字通り消えた。


この時は世間に対して如何に自分が小さく弱っちい存在なのかを思い知らされた。



そしてミキと別れて強く感じたことは、僕がもう少しイイ給料を貰っていたら

ミキは風俗で働かなくても良かったかもしれないし、

アホな元カレに嫌キチされて家族にバラされる事が無かったかもしれない。



料理の世界の仕事は文句なしに面白かった。



しかし給料は、ものすごく安かった。



この頃から僕は高い給料の仕事に就く事を考え始める。



それが、ミキに対しても自分自身に対しても反省したうえでの考えだった。



そんな中、皮肉にも僕は遮那王がとある商業施設に出店する立ち上げメンバーに

選ばれて、そこで実績を残せば主任に昇格という内示を会社の営業課長から受けたのだった。