堂山物語 第96話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第96話

僕とミキは順調に同棲生活を進めていった。



ちょうど出会ったクリスマスイブはミキの誕生日。



僕は客商売の人間のプライドというかイブとクリスマスは

必ず仕事をするようにしている。


この年も例に外れず仕事をした。



しかし女としてはイブやクリスマスは一緒に過ごしたいのが心情だ。



だから僕は



堂山 「オレは右翼出身だからキリストより皇太子様の誕生日なんじゃ!」



そういって世間一般のクリスマスを12月23日に楽しむようにしている。



ちなみに右翼出身というのは高校の時に1度だけ

右翼の街宣車に乗って共産党の集会が行われていた某市民会館まで

パレードしたことがあるので、あながちウソではない。



クリスマスプレゼントはお互いに避けた。



ミキは誕生日と被っているので僕が貰うと不公平になってしまうからだ。



僕が無いセンスを駆使して選んだプレゼントはティファニーのブレス。



ミキは結構、喜んでくれた。



やがて、初めての正月を迎える。

初詣はイキって住吉大社までお参りした。



この時に二人で思ったのは知らない土地の神社に

初詣に行くのは、とっても面白くないということだった。



僕は早生まれの人間なので、年が明けると誕生日がやってくる。



ミキが誕生日にプレゼントしてくれたのはGパンだった。

これは僕が希望したモノであったがミキはモノ足りなさそうだった。



そんなこんなでお互い仲良くやっていたように思える。



やがて遮那王に入って料理人になって4年目を迎える。



会社の部署内でも、認められてきたのか主任候補に挙げられた。

他所の人員不足の店舗の応援によく行かせてもらった。



研修で行った烏丸店と東通店しか知らないので他の店舗の雰囲気や

オペレーションを感じとりたかったからだ。



この他店応援で滋賀の大津の店に行った時に

フル回転のランチ営業にも対応しきった僕は大津の店長に褒められる。




店長 「堂山くん。タフやし、他所の店でも対応するのが早いなぁ!」



この大津の店長は部署内で係長も兼任していて

所属店舗はアウシュビッツと揶揄されるくらいの

恐ろしいほどの管理体制しかれるというスゴイヒトだった。



僕も褒められてイヤな気分では無い。



しかしイヤな予感がした。



そして、その時感じたイヤな予感は1ヶ月後くらいに見事に的中する。



東通店のカタヤマ店長が真面目な顔で口を開いた。



カタヤマ 「堂山くん!係長のご指名で新店に主任で行かない?」



堂山 「えっ!?まじっすか?」



カタヤマ 「ほら!大津に応援行っただろぅ?

       あれから係長が堂山くんを気に入ってさぁ!」



堂山 「新店って何処っすか?」



カタヤマ 「彦根だよ~!チャンスだよ!コレは!」



堂山 「…彦根って、また滋賀でしょ? 考えてもイイっすか?」




生まれて初めて巡って来た仕事のチャンス出世のチャンスだった!




が、僕はこの話を断った。



彦根なんか通勤は不可能であり、自ずと彦根の近くに住まなければならない。

即ち、ミキとの同棲を解消しなければならない。



だから僕は出世より今の生活を優先した。

格好良く言えば愛するヒトがいるから仕事が頑張れるのだった。


正直、出世して役付きになるのも魅力だったが…



僕はミキを選んだ。



当然のごとく僕の主任への昇格は見送られた。



けど僕は後悔していなかった。



このままミキとの平凡な同棲生活が続けられれば幸せと思っていたのだった。



現実に平凡な同棲は順調に続いていった。


続く