堂山物語 第80話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第80話

この時の大晦日に遮那王の南川店長と大ゲンカをした。



南川 「今日の棚卸しは余裕でゆっくりできるなぁ!」



オオサキ 「えっ何でですか?」



南川 「バカ!今日は大晦日だから電車が朝まで動いてるだろ?ダハハハ!」



毎月の月末は棚卸しに追われる為、厨房では仕込みから計算して

如何に早く終わらして終電に間に合うように工夫していた。


しかし南川店長は既に早く終わらすことを諦めてしまっていた。

コレには僕だけではない!全員が納得いっていなかった!



堂山 「ちょっと待ってくださいよ!僕らは毎月早く終わらそうって努力してるんですよ!

     なんで、いきなりやる気ないこと言うですか!?」



南川 「やる気ないなんて言ってないだろ!?バカ!!」



堂山 「バカってなんですか!?店長の方でしょ?それは?」



南川 「なんだ、その口の聞き方は!?」



営業前に大喧嘩してしまいオオサキさんやハマダさんが止めてくれた。



最悪の年明けを迎えたことになった。



僕は1月生まれなので、もうすぐ二十歳になろうとしていた時だった。

遮那王での毎日が面白くなくてしょうがなかった。


しかも朝は十三のミキという風俗嬢に通いつめているので

金銭面でも面白くなかった。



只、ハマダさんも当時キャバクラに通いつめていたので

ハマダさんとアホな男くらべの話をしていた時は楽しかった。



ハマダ 「明日、リオちゃんがなぁ。明日彼氏デーやから来て欲しいっていいおんねん!」



堂山 「僕もミキちゃんが新しい名詞出来たから見に来てって言ってるんですよ!」



男って本当につくづくアホな生き物だ。






アホな男に追い討ちをかけるように、

ある日最終電車に乗っていた僕の携帯電話が鳴った。



ブーン!



ブーン!



ブーン!  (マナーモード中)



見たことの無い電話番号だった。


ちょうどこの時期に行われた成人席に僕は仕事で行かなかったせいで

番号を知らない同級生から電話が掛かってくることが多かったので迷わず電話に出た。



堂山 「もしもし…」



「・・・・・・堂山く・ん?」



堂山 「あん?誰よ?」



「・・・・・・ミキ。」



堂山 「は!?ホンマに掛けてきたんや・・・」



当時はメールが普及しておらず携帯番号を形式的にでも教えるのが主流だったのだ。


そして、阪急電車の最終は結構混んでいるので小声で電話に出ていたが

僕は驚きと嬉しさが混じった妙な気持ちになった。



ミキ 「そうそう、おめでとう!」



堂山 「えっ何が?」



ミキ 「誕生日でしょ!?」



堂山 「あっそうか・・・」



その次の日は確かに僕の誕生日で

腕時計を見ると針は12時をまわって日付が変わっていたのだ。



ミキ 「そうそう、プレゼント渡したいから何時でも来てね。」



ピーコン



ピーコン



ツー ツー ツー



ちょうど電波の悪いポイントに電車が差し掛かり電話は切れてしまった。



確かに僕はこの3歳年上のミキという風俗嬢に半分以上ココロを奪われてしまっていた。

けど、僕も堂山町で言ってみりゃ色恋商売の世界にこの時は休業中でも身を置いている。



これは営業というものだ!



と思いつつも、また次の日には十三のRに開店から入店している自分がいた。



ミキ 「おめでとーう。ハイ、プレゼント!」



堂山 「ああ。ありがとう・・・」



ミキ 「って今、開けんといてよー!」



堂山 「えっそうなん!?」



この頃には店のなかでも喋りすぎてプレイの時間が少なくなってしまう事が多かった。

とりあえず、ココは風俗店なのでプレイは終わらせて帰るときに



ミキ 「また、電話するね!」



堂山 「うん、いつでもいいよ。」




Rを出て十三駅まで歩いている途中に




コレは営業なのか?本気なのか?どうしたらいいんだろう?




そう思いながらミキがくれたプレゼントを開けてみると


グッチのキーリングが入っていた。


この安くも無く、めちゃめちゃ高くもないプレゼントも僕を惑わせるのである。



二十歳の誕生日にも風俗店で過ごしたアホな僕であった。

続く