堂山物語 第66話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第66話

堂山町でカラダを切り売りしていて一番おそろしいのは


見知らぬ男性と密室でふたりっきり


という事である。



しかも全裸になる確率が極めて高いのだ。

何しかの犯罪等の事件に巻き込まる事も多いにあり得る。



一般的な性風俗店でも、ほとんど全裸になることが多い。

しかし店舗型の店なら男子スタッフが同じ箱で働いているし

無店舗型でも、○○ホテルの△号室にはいりました~と連絡を入れる。

身に危険を感じれば男性スタッフなりが助けてくれる。



ウリセンに関しては、店に連絡する事など一切なかった。

ロングコースなどは食事やパチンコなどを経てのお泊りなので。



いちいち連絡なんて出来るわけがないのだ。



ある日、2本くらいのショートをこなし店に戻ってきて帰ろうとしていた時。



♪テンテテンテン テンテテテテテ テンテテンテン テンテテテテテ



マスターの携帯電話からミッキーマウスマーチが流れる。



マスター 「はいはーい!・・・えっ!?

       …何!?・・・もっと大きな声で言って!」



マスターの電話の声がちょっとだけ緊迫感を感じさせた。



マスター 「何て!? 大丈夫なの? えっ!?…どこのマンションよ!?」



あきらかに何か間違いが起こってしまったような雰囲気がする…

僕は僕で、とにかく先に帰ろうとする。



堂山 「すんませ~ん。お先に失礼しま~す。」



マスター 「アンタ!ちょっと待ちなさい!」



堂山 「えっ!・・・」



マスター 「イイから!待ってなさい!」



マスターが携帯電話を一瞬だけ離し、僕を大声で制した。



マスター 「きょーすけ!何処って!? ウン…ウン!しっかりしなさいよ!」



どうやら、きょうすけさんからの電話だったらしい。

きょうすけさんは花花でも1・2を争うほどの売れっ子ボーイだった。


マスター 「たつや!アンタちょっと、ついてきなさい!車は運転できるでしょ!」



堂山 「イヤ…免許とってから一回も乗ってないんですけど…」



マスター 「何でもイイから運転しなさい!」



堂山 「ハイ!」



この時ばかりは、マスターの男っぷりに押し切られてしまった。

勿論マスターも運転は出来るのだが、この時は30日の免停中だったのだ。



マスター 「マネージャーちょっと行ってくるから!帰ったら詳しく話す!」




僕はマスターと店を出てマスターの駐車場へと小走りに走り出す。


堂山 「マスター!? 何があったんすか? 何処へ行くんですか?」



走りながらマスターに聞くと



マスター 「あのアホ!また、やりやがったんじゃ!」



マスターもゼイゼイ息を切らしながら答える。



堂山 「アホって、きょうすけさんですか?」



マスター 「違うわ!今日、きょうすけを指名したフジタって客や!」



この時に気付いたのは、マスターが完全に

いつものオネエ口調もどきじゃ無くなっていたことだ。



マスター 「アイツな!前もこんな事やりやがったんじゃ!

       あん時出入り禁止にしとくんやった!」



マスターが車を停めていた駐車場は都島通とJRの環状線が交差する近くの駐車場だった。

30日の免停だったけど、免停中は店のボーイの誰かが乗っていたらしい…

3分くらい走ったら駐車場に到着する距離だった。



マスター 「しまったー!カギやー!」



堂山 「えーっ!まさか、車のカギっすか?」



マスター 「たつや!お前とって来い!」



堂山 「えーって、しんどいっすよ。もう…」



マスター 「ええから、はよ!とって来んかい!」



ドカッ!バキ!



いきなり!マスターが僕を殴ったのだ!



マスター 「お前!きょうすけに何かあったらどうする!お!?」



堂山 「ハイ!すぐ行ってきます!」



マスターがここまで完全に怒っているのは初めてだった。

これは相当な緊急事態が発生しているのだと想像できる。


僕は2人で小走りで来た道を猛ダッシュして店まで戻り

車のキーをポケットに入れて再度、駐車場に向かう



一体何が起こったんだろう…



マスターのパンチは結構重かったので

少し出てきた鼻血を拭いながら僕は夜の堂山町を猛ダッシュした。



続く