堂山物語 第35話
その日、ふぐふぐのバイトが終わり
マナベさんとの待ち合わせ場所に向かった。
梅田から、ふた駅というのに夜になると
結構、暗く人通りも少ない…
暗闇が似合うマナベさんがそこにいた。
マナベ「ここで待っとったら、そのウチ来るわ。」
そう言い残しマナベさんは車で走り去って行った…
って言うか誰が来るかも分からんし…
ホンマに来るかもわからんし…
とにかく寒いし
また、おばちゃんが来るかも…
いろんな事が想像できた完全なる放置プレイだった。
こんなん紹介って言いませんよ?マナベさん…
そう思いながら自動販売機で
あったかーいコーンポタージュを買った時
「ゴメンねぇ!まったぁ!?」と背中を叩かれる。
コレが僕とユリムとの出会いだった。
ユリム「わたし、ユリム!よろしくね!マナベさんは帰っちゃたの?」
堂山「そ・そうやね…さっき車で何処か行ってもうたわ」
ユリム「お腹空いてない?」
堂山「あ~そうそう!めっちゃハラ減ってるよ!」
ユリム「ご飯食べに行こうか!?」
堂山「うん!そうしよう!」
こうして初デートは中華料理の眠眠でゴハンになった。
正直言って、こんなにカワイイ娘がいるのか?
と思えるくらいにユリムは可愛くて明るい娘だった。
僕は、ちょっと動揺していた。
ユリム「何?食べるぅ~?」
堂山 「オレはねぇ~。焼きそばとラーメンかな。」
ユリム「何よぉ。それぇ。どっちも麺類じゃない!」
堂山 「ええねん!ハラ減ってるねんから!」
ユリム「じゃあ、ワタシは炒飯とライス!」
堂山 「それの方がおかしいやろ!」
さっき出会った二人だったが、何となく息が合った。
二人で出てきた焼きそば・炒飯・ラーメン・ライスを食べる。
ユリム「今日、一緒に寝てくれるんでしょ!マナベさんが言ってたよ!」
堂山 「あ~全然イイよ。」
ユリム「アタシの家、この近くだからね!」
この時、僕は
この娘は一体何者だろう?
只、一夜限りだし別にイイか!
ヤルだけ、やったらイイか!
いろんな事を思っては見たものの深くは考えず
ひたすらに出てきた中華料理を食べていた。
僕は勘定を済ませ、眠眠を後にする。
二人で歩いて着いた先はユリムの家。
そこは今にも潰れそうな文化住宅。
潰れそうというか実際にヒトが住んでいる気配が無い。
1階にあったユリムの部屋に入れてもらった。
電化製品はテレビだけで生活感の無い部屋だった。
堂山 「ちゅーか、食いすぎた!もうムリ!」
ユリム「アタシも苦しいぃ。お腹いっぱい!」
不覚にも眠眠でハラ一杯に食いすぎた僕は
すぐにユリムを抱こうという気より苦しい方が先行していた。
ユリムも同じく食いすぎていたようだ。
だって夜中に二人でラーメン・焼きそば・炒飯・ライス…
結局、最初の夜は二人で寝ただけで肌は交えなかった…
寝ながら、おしゃべりするだけの夜だった。
ユリムはマナベさんが連れてきた女だったので
お商売の為のオンナであることは
予想していたが…
ユリムはポツリ、ポツリと自分のことを話してくれた。
そうユリムは売春の為に不法に海を渡って来た韓国の娘だったのだ…