堂山物語 第58話 | エラー|Ameba(アメーバーブログ)

堂山物語 第58話

半年もすると中華料理の仕事もウリセンの仕事も

自分の中で、それなりこなせるようになった感じがした。


遮那王の帰りには


「今日の売上はちょっと悪かったですねぇ」


ハマダさんとヒロさんと一緒に

阪急梅田駅迄、当時工事中のHEPファイブ横の道を歩いた。




花花の帰りにも


「今日の2番目のショートのお客様は、もう来んといて欲しいなぁ」


一人で阪急梅田駅迄、当時工事中のHEPファイブ横の道を歩いた。




この工事中のHEPファイブは最上階に観覧車を建設中だったので

自然と「こんなん出来るんやぁ」と夜空を見上げるのが

知らず知らずと習慣づいていた。



このときから僕はガラにもなく お月様 を探すのがクセになる。

月は毎日変わらず存在するもの。


しかし僕が見る度にその居る場所


その姿が違ってたり


時には全く見えないときもある。



同じ用にHEPファイブの観覧車は毎日変わらず存在するもの

なので毎日、夜空を見上げると目に映ってくる。


夜空を見るという毎日の様に続く同じ動作であるにもかかわらず

HEPファイブの観覧車は絶対に見ることが出来て

片やお月様は、ほんのちょっと時間がズレるだけでも

昨日みたばっかりなのにいる場所やカタチが違ってたりする。



その時に見たお月さんと同じヤツは二度と見る事ができない



ほんのちょっとした偶然で僕は、二度と見ることの出来ないお月様と遭遇している。



そう二度と見れないし会うことも出来ないかもしれないのだ。


堂山町でウリセンボーイとして並んで僕は

多くの人と出会って2時間で別れ、また2時間の出会いをかさねた。



遮那王で料理の仕事だけしていたら絶対会わないヒトたちだろう。



僕はレギュラーで花花には並んでいなかったので、固定客はコアな常連の方

でないかぎり予約してまで来られることは無かった。



同じように技術向上の為に出向いていった、風俗店でも同じような事が言える。

たまたま偶然はいった店で偶然に出勤していた娘を偶然に指名していたのだ。



そう今までも小さな偶然が積み重なって素晴らしいヒト達と出会ってきたのだ。


ヤクザのカシラのおっちゃん・校長先生・ツジモト社長・マナベさん・ユリム・ヒロさん・イク君…


数えたらきりがないくらいの素晴らしい出会いと別れがあったのだ。



何気に夜空を見上げる習慣で偶然にそのときしか会えないお月様に教えられたと言えば

かなり大げさでロマンチックぽくて気持ちワルイけど…


偶然の出会いは素晴らしい!


なんとなくそう思えるようになった。

このことに気づいてから堂山でのお客様を大事にすると言うか

次回も指名を取るぞという意気込みで 「接客」 をするようにした。


僕はこのときから

ウリセンボーイや風俗嬢の 「接客」 をバカにする

いわゆる綺麗なサービス業の人間は本当のサービスの意味を

理解していないのじゃないかと思っている。



そのときしか現れないかもしれないお月様を探して見る。


そのときしか現れないお客様を接客する。



次の日はお月様を見ようと思ったら

前の日に見た時間と大体の場所がわかっていると、すぐ見れるのだ。



偶然を大事にしようと改めて思ったのは堂山に来て半年たったころだった。


おかげで僕は指名が取れるようになりウリセンの収入も安定するように出来たのだった。


続く