だが、ハー娘のオーディションを受けるということは、そんな母の気持ちを裏切ることになりかねない…。
母の気持ちに応えるため、今は勉強を頑張るべき時であり、アイドルになるためのオーディションなんかに現を抜かしている暇は朋美にはないのだ(たとえ受験まで一年以上あったとしても)…。
もちろん朋美がオーディションに受かる事は万が一にもないし、それは自分自身が一番良く分かっている。
ただ、母にメイクをしてもらった自分の顔を見て、少しだけ自信が持てたというか、萎えかけていた思いが再びふくらみかけているのも事実だった…。
｢いっそお母さんにオーディションの事を打ち明けようかな…？｣
そんな思いが頭をよぎる…。
朋美がオーディションの事を打ち明ければ、母は十中八九反対するだろう。
そうすれば朋美もオーディションをキッパリと諦められるはずだ…。
だが、オーディションを諦めるということは、何も変わらない今まで通りの朋美のままでいるということでもある…。
オーディションを諦めることで、朋美は自らが変われるチャンスをも失ってしまうのだ…。