047、「草にすわる」  白石一文 | 心に残る言葉たち

047、「草にすわる」  白石一文

「草にすわる」  白石一文



心に残る言葉たち




出版社/著者からの内容紹介
「わたしのまちがいだった。わたしの まちがいだった。こうして 草にすわれば それがわかる。」
洪治は3年間と4ヶ月勤めた不動産会社を辞めた後、バイトをしながら食いつないでいたが、急性胆嚢炎を患い、いまは実家で無為な日々を過ごしている。彼女はいるが、その関係にも倦み始めている。閉塞した日常を壊すものは何もない。ある日、彼女から昔の不幸な出来事を聞かされた洪治は、彼女が貯め込んでいた睡眠薬を飲んでしまう・・・。



静けさに満ちた冬の午後、誰に遠慮することもなく、何かの準備のためでもなしにこうやって暖かな寝床で眠りの快楽に身を任せられるのは、たしかに自分が将来の見通しや安定した暮らしを投げ出してしまった見返りのようにも感じられる。どんな人間にもあれもこれもは許されない。こんな取るに足らない小さな眠りひとつとってみても、背景にはそれなりの犠牲と覚悟があるのだ。(中略)たった二時間半の、これが俺の日々の充実だ、と思った。



どうしても生きないではすまないような、生きるしかないような、そういう切羽詰まった理由を見つけてから再び社会に出よう、などと甘ったるく考えていたが、今回のことで洪治が身に沁みたのは、どうしても死なないではすまないような、死ぬしかないような切羽詰まった理由でもなければ、人は生きつづけるしかない、ということだった。

所詮、生きるとはそんなものなのだろう



これからは、生きるために働くのではなく、働くために生きようと思った。働くとはつまりそういうことだ、これもようやく分かった気がした。



白石さんの作品は暗いイメージをもっていたのですが、この作品は最後明るい、希望みたいなものが感じられて意外な感じがしましたが、とてもよかったです。含蓄のある言葉がたくさんありました。「働くために生きる」と主人公はいっていますが、とてもそういうふうには思うことができません。今の仕事は合ってしないからかもしれませんが。私は幸せになりたいから生きている。仕事はお金をかせぐため、そのお金も幸せになるために一つの手段。幸せとは人間関係の中にあるのでしょうね。未だに実感できませんが…

★★★★★