翔と陸は、とりあえずは、と学校の敷地の外周を歩いていた。

敷地はかなりの広さがあるため、外周も必然的に長くなる。
そしてここはそれなりに都心に近いため、人通りや車も多い。


「陸ってさ、僕が来る前って誰とよくいたの?」

「大体1人だったぜ」

彼はけろっと答えたが、予想もしていなかった答えに、翔は驚いた。

「その性格で?」

「この性格だから。
俺は広く浅くだったからさ、皆が固まってくると疎外されてって、って感じだな。
別に仲悪い訳じゃねぇし」

「なるほどねぇ~」

うんうん、と頷きながら、翔は陸の頭をポンポンと叩いた。

「……何だ?」

「ん~?あーゆー学校で1人っていうのは辛いよねぇ。
よく頑張った~」

「ふざけてるのか同情してるのかどっちなんだよ」

苦笑いで言う彼に、翔はもちろん、と答えた。
「楽しんでるんだよ?」

陸はなんとも複雑そうな顔をしたが、翔は気にせずニコニコと笑っている。


「はぁ……あ、そういえば、一条に何を誤解されてたんだ?」

陸が唐突にそんな話題を出した。
しかし翔は憶することも、必要以上のリアクションをすることも無かった。


「実はねぇ……彼女の両親、随分前に2人とも殺されたんだって」

「へぇ」
陸は特に驚くこともなく相槌をうつ。

「で、名前が似てるのか顔が似てるのか知らないけど、その両親を殺した人の関係者だと思われてたみたいなんだよねぇ」

陸は相槌を打ちながら真剣に聞いていた。
作り話だという事が申し訳なく思える程。

「まぁ、詳しくは知らないけど、結局関係無かった訳だし?」

「そうだな……」


と、その時。

バオォン、と轟音を立てて真っ赤なスポーツカーが走って来た。

「すげ~…あんな車、日本じゃ滅多に見れねえよな」

陸が感嘆したのも束の間、その車は2人の前でブレーキをかけ、停車した。

そして、その車のウィンドウが下り、中から欧州系の外人が顔を出して、言った。


「やぁ、久しぶりだね、翔?」