「う~ん、ショウはすぐ追いつくって言ってたけど…
着いちゃったんだよなぁ。
どーしよ。」
とあるビルの屋上で、陸がそんな事をぼやいていた頃。
男性は、焦っていた。
「まずいぞ……
1人しかいない…両方を監視していなくてはならないのに……」
その男性は翔と陸の任務を監視する試験官。
彼は陸のいる屋上が見えるビルの一角にいる。
しかし彼の任務は2人を監視する事。
1人でも見失ってはならない。
当然、1人で2人を監視するからには、その2人があまり離れる必要がない任務だ。
それに、本来なら位置を知らせるGPSや盗聴器があるはず。
しかし。
彼らは何故か、離れてしまった。
しかもそれらの機械は取り外されてしまっていて。
「情報ではあまり出来がいい訳ではないようだが……どこに行ったんだ………それに、何のためだ?」
そこまで呟いた時、彼は背後に気配を感じて振り返った。
そして、見た。
信じられないものを。
「あなたに会うためですよ、センセイ?」
そこには見失ったはずの生徒がいた。
「いや~、さすがですね。
もう少しは気付かれずに近付けると思ったんですけど。」
「…何故君はここに?」
彼は慎重に訊いた。
気付かれないように手を腰のホルスターへと動かしながら。
翔は、にっこりと微笑んだ。
「あなたに会う為に、って……言いましたよ。」
瞬間、翔の手が素早く動き、男性が反応して銃を抜くより早く、彼へと銃を突き付けた。
「っ……何の真似だ。」
彼は驚きを押し隠しながら言った。
しかし翔はそれを無視した。
「ハイハイ~、銃から手ぇ離してね。
あと、通信機とかあったら全部外して?」
緊張感のないしゃべり方にも関わらず、男性を狙う銃口と視線はピクリとも動かない。
それが、逆に恐ろしい。
男性も、当然幾多の修羅場をくぐって来ている。
目の前の少年が生徒でなければ、彼が現れた時にすぐに殺していただろう、と思っていたが、今は…。
彼は半分ホルスターから抜いた状態だった銃を、ゆっくり元に戻した。
「通信機とか盗聴器とか、無いの?
もしあったりしたら困るのはセンセイだと思うけど?」
「無い。………どういう意味だ。」
「それはすぐ分かるから。」
「分かった。本当に無い。
疑うなら調べても構わない。」
男性がそう答えると、翔は少しだけ真面目な表情になった。
「無いならいいよ。ナイフとかもそのままでいいから。」
僅かに額に汗が滲む。
調べさせる振りをして隠しナイフなどで刺したりするのは常套手段だ。
しかしそれも見破られた。
「じゃあ、いくつか質問をするから答えて。
嘘を言った場合は命の保障はしないから。」
男性はその言葉にゆっくりと、小さく頷いた。
着いちゃったんだよなぁ。
どーしよ。」
とあるビルの屋上で、陸がそんな事をぼやいていた頃。
男性は、焦っていた。
「まずいぞ……
1人しかいない…両方を監視していなくてはならないのに……」
その男性は翔と陸の任務を監視する試験官。
彼は陸のいる屋上が見えるビルの一角にいる。
しかし彼の任務は2人を監視する事。
1人でも見失ってはならない。
当然、1人で2人を監視するからには、その2人があまり離れる必要がない任務だ。
それに、本来なら位置を知らせるGPSや盗聴器があるはず。
しかし。
彼らは何故か、離れてしまった。
しかもそれらの機械は取り外されてしまっていて。
「情報ではあまり出来がいい訳ではないようだが……どこに行ったんだ………それに、何のためだ?」
そこまで呟いた時、彼は背後に気配を感じて振り返った。
そして、見た。
信じられないものを。
「あなたに会うためですよ、センセイ?」
そこには見失ったはずの生徒がいた。
「いや~、さすがですね。
もう少しは気付かれずに近付けると思ったんですけど。」
「…何故君はここに?」
彼は慎重に訊いた。
気付かれないように手を腰のホルスターへと動かしながら。
翔は、にっこりと微笑んだ。
「あなたに会う為に、って……言いましたよ。」
瞬間、翔の手が素早く動き、男性が反応して銃を抜くより早く、彼へと銃を突き付けた。
「っ……何の真似だ。」
彼は驚きを押し隠しながら言った。
しかし翔はそれを無視した。
「ハイハイ~、銃から手ぇ離してね。
あと、通信機とかあったら全部外して?」
緊張感のないしゃべり方にも関わらず、男性を狙う銃口と視線はピクリとも動かない。
それが、逆に恐ろしい。
男性も、当然幾多の修羅場をくぐって来ている。
目の前の少年が生徒でなければ、彼が現れた時にすぐに殺していただろう、と思っていたが、今は…。
彼は半分ホルスターから抜いた状態だった銃を、ゆっくり元に戻した。
「通信機とか盗聴器とか、無いの?
もしあったりしたら困るのはセンセイだと思うけど?」
「無い。………どういう意味だ。」
「それはすぐ分かるから。」
「分かった。本当に無い。
疑うなら調べても構わない。」
男性がそう答えると、翔は少しだけ真面目な表情になった。
「無いならいいよ。ナイフとかもそのままでいいから。」
僅かに額に汗が滲む。
調べさせる振りをして隠しナイフなどで刺したりするのは常套手段だ。
しかしそれも見破られた。
「じゃあ、いくつか質問をするから答えて。
嘘を言った場合は命の保障はしないから。」
男性はその言葉にゆっくりと、小さく頷いた。