「え~……いきなりテスト、しかも実技?」

僕がこの学校に入って3日目。
抜き打ちの実技テストがあるという報せが回ってきた。

全寮制だから、抜き打ちテストはいつも夜にやるらしい。
まぁ、暗殺の仕事なんて大半が夜だから当然か。


「2人組で、Dランクの仕事を一つ片付けるんだってさ。」

「D……ってどの位?」

怪訝そうな顔をした僕を見て、陸は驚いたようだった。

「え、ショウってDランクやった事ないのか!?
それだけの腕があるのに…」

「いや…初めて師匠にやらされたのがAランクだった。」

「あ、そう……」

陸は脱力したように笑った。


……僕が彼を師匠と呼ぶようになって、僅か1週間。

師匠は何でもないように僕に言った。

「政府からAランクの依頼が来た。
けど俺はSランク以下はやらねぇ。
つーことでお前がやっとけ。」

…という事で僕がその仕事を片付けた。


それが僕の初仕事。

ただし、ランク付けされた、依頼としての仕事は、だ。



「まぁともかくさ、今回のペア、ショウはクラス最下位の奴とやるんだってさ。
んで、一条が一人で。」

「そっか、僕が入ったから奇数なんだ。」

僕は自分のベッドに仰向けに寝転がった。

「そ。噂では、このテストで悪かった奴が落とされるらしいぜ?」

「ふぅん…じゃあ落ちない程度にしないとね。
……陸とペアなら楽だったのに。
適当に功績を陸に押しつけて、さ。」

僕がニヤリと笑ってみせると、陸はふと真面目な顔になった。

「……どうかした?」

ゆっくりと身体を起こしながら訊くと、陸は何か呟いて、本棚をガサゴソと探し出した。

「確かこの辺に……あった!」

本棚の中に積み上げられた本や書類の下の方から、小冊子を引っ張り出した。

その山の上の方がバサバサと音を立てて崩れ落ちたのに、陸は全く気にせずにその小冊子をめくっている。


「学校規則……?」

その小冊子の表紙にはそう書いてあった。

でも、それがどうしたんだ?


「あったあった!
ほら、ショウ、ここ読んでみろよ。」

「え~と…」

そこにはこう書いてあった。

実技試験において、複数名以上のチームで受験する場合、原則としてチーム編成は成績上位の者から順に編成していくこととする。

ただし、一部例外を除いては、成績上位者による下位者の指名は認める。

また、指名が重なった場合には、より上位の者の申請を受けることとする。


「な?
今まで俺らのクラスじゃ使われてないけどさ、これなら俺達で組めるんじゃね?」

「そうだね。
これなら僕も気が楽だよ。
……でも、時間はまだ大丈夫なのか?」

「平気だろ。試験は夕食後だし。
食べに行く時についでに申請しようぜ。」



夕食後、それを申請しに行ったら、特に問題もなく受理された。

同室の人同士で組むというのはよくある事だそうだ。

これで安心してテストが受けられる。
試験監督を欺くくらいならどうってことないし。