表があれば裏がある。

それは世界でも同じ事。

そして。

光が明るければ明るいほど、闇は濃く暗くなる。

それも、世界でも同じ事。





アメリカ、ニューヨーク。


「ククッ……どうやら久しぶりに歯ごたえのある標的みてぇだな。」

豪華なホテルの一室で、翔が師匠と呼ぶ男性が電話をしている。

『タカセ、楽しそうですね。
でも任務はしっかりとこなして下さいよ?』

「そんなこたぁ分かってる。
それよりノックス、」

『今はハロルドですが?』


電話の相手はおそらく外国人なのだろうが、流暢な日本語を話している。
その相手に訂正されて、彼は顔をしかめた。

「面倒だ。
ノックス、お前の言った通り、弟子をあの学校に入れた。
本当にあそこにあるんだろうな?」

『ええ。それは間違いありませんよ。
あの建物の地下はシェルターになっていて、政府と繋がっています。
その一角に、あの資料が保管されている、と。』


「まぁ確かならいい。
そっちの政府は日本政府と繋がってるし、信憑性は高いからな。」

『ええ。
しかしタカセ、今は貴方は政府子飼いの暗殺者、正面切って飼い主に盾突くようなこと、よいのですか?』

「構わねぇよ。
そろそろ始めるらしいからな。
それに俺にとっては政府なんざただの金ヅルだ。」

身も蓋もない彼の物言いに、電話の相手はクスクスと笑った。

『そうですね。貴方はそういう人でした。
……日本で動き始めるのでしたら、こちらからも応援に行きますよ。
その旨、伝えておいて下さいね?
では、幸運を、ミスター・タカセ。』


彼──高瀬英司は、受話器を置くと立ち上がった。

「さぁて、そろそろ行くか。
ククッ……たまには本気出すとしよう。」

───「英司、たまには自分の最大の実力を出してみるべきだ。
そうしないといつの間にか腕が鈍ってくるよ。」───


彼の脳裏に、ふと旧友の顔が浮かんだ。

「…懐かしいこった。」


彼はスーツケースを掴むと、足早に部屋を出て行った。


その顔には獰猛な笑みを湛えて。





日本、東京。

「……なんで同じ部屋!?」

僕は寮にいた。
寮長に案内された部屋は、なんと陸と同じ部屋だったのだ。

「え~、偶然俺が一人だったからだよぉ?」

なんかアヤシイ。

「本当に偶然?」

「マジだって~!
一人部屋だった奴と元相部屋だった奴脅して俺が一人になるようにしたとかじゃないからぁ~!」


うわぁ…これってつっこむべき…?


「まぁそれはともかくさ、相部屋よろしくな!ショウ。」
「…ああ。」

とりあえずにっこりと笑っといた。
人間関係を円滑にしといて損はないだろうし。