一時間目は歴史だった。

え、普通じゃん…と思いきや、思いっきり裏歴史。
あの戦争でのスパイの活躍とか、裏取引とか…。


……師匠はこんな事教えてくれなかったぞ……

僕は師匠を恨む気持ちを押さえて、なんとか覚えようとした。

幸い僕は記憶力がいいらしい。
初めてそれを嬉しく感じた。
今までは………


「おい、お前記憶力良いんだからこの依頼リスト全部覚えとけ。
一つでも忘れたらメシ抜きな。」

とか、師匠に良い様に利用されてたから。


師匠いないのって最高!
フリーダムだぁっ!


…まぁそれはともかく、テストまでには全部覚えないと。

実技よりは点は低いんだろうけど、こういう科目で悪いと先生に目つけられるし。



そんなこんなしてる間に、授業が終わった。
休み時間。

先生が教室から出て行くと同時に、周りからは敵意がグサグサッ、と。

「理不尽だぁぁ…」
しかし、落ち込みタイムに入ろうとした僕に声が掛けられた。

顔を上げると、なんかメッチャキラキラした目。


……うん、気のせい気のせい。

僕は一瞬で目を逸らして、机に突っ伏した。

「なぁ、お前、下の名前なんて言うんだ?」

あからさまに無視したのに、相変わらずの弾んだ声で話しかけて来る。

僕は確信した。

…コイツ、絶対クラスで浮いてるな。



しかしそのまま無視し続ける訳にもいかないから、顔を上げてみた。
「僕に話しかけていいのか?
皆僕に敵意向けてるのにさ。」

とりあえずは無視した事の理由作り。


「え~、関係ないし。
俺がお前に敵意向ける理由ないし~。
で?名前は?」

「名前?白瀬翔。」

「ショウ、か。
俺は相澤陸。よろしくな!」

陸。コイツは随分明るい奴みたいだな。
暗殺者らしくない、というか。


まあ、僕もそれらしくは見えないだろうけど。



「ショウ!次は実技だぜ。
移動するんだ、一緒に行こうぜ?」

「…うん。でも陸、いいのか?
他に一緒に行く人とか…」

「いや、いないよ。
この学校の奴等ってさ、みんなピリピリして、友達なんかいらないって顔してんだ。

暗殺者養成学校なんてトコだからさ、それでいいのかも知れねえけど…
俺はそれじゃあ嫌だ。

だからさ、ショウ、友達になれ!」


………そこで命令形っすか。
普通、友達になってくれないか?
とかって言うものじゃないのか…


まあ、いいか。

僕は頷いた。

陸は満面の笑みで、もちろん目をキラキラと輝かせて、僕の手を握った。


これが、僕の運命を左右する第一の出会いだった。