つきのわ 月の夜 読書録-ファイル0014.jpg祥伝社文庫

整体師合田 力が、身体と心を病んだ患者の抱える問題とその原因を解きほぐして行くミステリーシリーズの第一巻。

注意 一部、ネタバレを含みます。

主婦墨田 茜は、OL時代に買物依存になりカードローンから多重債務に陥った過去があった。
親に助けられ借金を清算した茜はその後、青年実業家に見初められ結婚する。結婚しばらく後、夫は茜にクレジットカードを買い物用にと手渡す。茜は再び買物依存に…。

同じ頃、雑誌編集者の小松崎雄大は若い女性の金銭感覚の取材を命じられていた。夜に寝違えたのか痛む首を気にしながら取材に出た小松崎は、街でぶつかった女性からある整体院を紹介される。その女性、歩はそこの助手だった。

物語は茜と小松崎の視点が交互に進み、小松崎の取材と、茜が合田整体院に通いだし徐々に近づいていきます。

茜のストーリーは最初、単に意志が弱く、生活などの不満やプレッシャーから繰り返し買物依存に陥る女性の話…に見えますが、終盤で茜に仕掛けられた悪意ある存在が暴かれます。

一方の小松崎は、茜の話を取材しながら紐解いて行く(謎解き役は合田先生ですが)為の狂言回し役ですが、同時に、彼が好意をよせる歩と、やはり整体院の助手で歩の姉の恵に関わっていきます。実はこの姉妹も、歩は摂食障害、恵は性行為への依存症と心に問題を抱えています。

3人の依存症の女性が語られるので、内容はかなり重たいです。間でオロオロする小松崎君がいなければ感情移入は難しかったかも知れませんね。彼の存在は、依存症の登場人物に自己を投影出来ない(或いはしたくない)人達の為に置かれたキャラクターなのかも…と、思ったりもしました。

茜の依存症は終盤で彼女が仕掛けられた悪意を打ち破り、自己と向き合い解放されます。ラストは中々清々しいです……が、どうもなぁ…個人的にイマイチ消化仕切れなかったのが、茜が罠から逃れる切っ掛けが(注意御免!ネタバレ)“不倫”だったこと。結果的に罠を仕掛けたのが○○(一応伏せ字)だったから良かったものの、そうじゃなかったら話がキレイに収まらないがな。
そもそも不倫を肯定する考え方が(別に作者は不倫を肯定してるわけじゃ無いだろうけど)大嫌いなもので、多少は割り切れない思いが残ってしまったかな。

勿論内容はスリリングで面白かったので、満足ではありましたが。