「メタルバード 2 コズミック・フラワー始末記」若木未生 / 女の子向けスペースオペラ | 辻斬り書評 

「メタルバード 2 コズミック・フラワー始末記」若木未生 / 女の子向けスペースオペラ

もう5年ほど前になるだろうか。
地方の出張先に本を携行するのを忘れ、たまらず飛び込んだ小さな古本屋でシリーズ第1巻を購入した。
うらぶれたその店では他にきれいな本がなく、黄ばんだ岩波文庫を買うくらいならこれにしよう、というのが選定の理由だったと思う。
内容はすっかり忘れてしまっていたが、たしか中途半端な終わり方で、続編を読まなければいけないといけないのかな、と思った記憶だけがかすかに残っていた。

本書は、宇宙軍に所属し主に特殊任務に就くヴァーティクス・オフィサーに任官されたばかりの若者二人組の活躍を描く、いわゆるライトノベルだ。
自信過剰でいつも大言壮語を吐いてる金髪の美形パイロット・レイアードと、その相棒で少し内にこもりがちなところのある生真面目なカイトの幼馴染コンビが、型破りな軍人として宇宙を飛び回る冒険ストーリーだと思ってもらえればいいだろう。

彼らを中心にして、いずれもクセのある異能の登場人物たちが、秘密指令を受けて謎のコズミック・フラワー(名前だけが先行して、その正体すら明らかになっていない)を捜索せんとするのが本巻の骨子だ。

ハッカー集団ユークリッドの美人エージェント・イエロウや、ロボットキャットを従えたフリージャーナリスト・D3を同乗させた中型宇宙船メタルバードの面々の軽さがいかにもライトノベル的で、はるか昔にそういうノリから卒業してしまった僕には、やはり少し読みにくい小説と映ってしまった。

ある種の少女漫画に出てくるような快活でやたらと能力の高い主人公像は、どちらかと言えば女性的な視線に支えられているので、そういう読者には訴えるものがあるのかもしれない。

たとえば主軸のコンビ以外の登場人物では、ものぐさなのに実は凄腕で、若い身空で宇宙船の指揮を任されている無精ひげの船長(しかも軍の上層部と個人的なつながりがあったりする)や、そんな船長に恋している船の中枢人口知能トゥエンティがいて、このあたりも磐石なライトノベル的設定ではないだろうか。

著者には「ハイスクール・オーラバスター」というヒットシリーズもあるそうで、本書もライトノベルファンなら安心して楽しめる作品ではありそうだ。

ただし3年以上、本書の下巻にあたる新作が出ていないようなので、興味のある方はご注意を。


若木 未生
メタルバード〈2〉コズミック・フラワー始末記


オススメ度★★

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