「赤き死の炎馬~奇蹟鑑定人ファイル1」 霞流一 | 辻斬り書評 

「赤き死の炎馬~奇蹟鑑定人ファイル1」 霞流一

著者: 霞 流一
タイトル: 赤き死の炎馬―奇蹟鑑定人ファイル〈1〉
冗長の一言に尽きる。この小説ほど、解決編がどうでもよく感じられたものはない。流し読みどころか放し読みと表現してもいいくらいだ。
道具立て自体は悪くない。出雲大社などが中心となって組織された奇蹟鑑定機関に属するエージェントが、ある地方で起きた神掛かり的な事件の調査に乗り出すという設定や、古来より土地に伝わる奇妙な言い伝えに合致するように展開する摩可不思議な連続殺人事件、異能の探偵役の登場など、書き手が違えば面白くなりそうな材料は揃っている。にもかかわらず、この小説は徹底的に面白くない。ユーモア表現にもまるで深みがなく、読み進めるほどに徒労感だけが蓄積されていく。著作に絶版が多いのにも納得だ。なにしろ恐るべき自己満足に終始しているのだから。くだらなさすぎて怒りすら沸いてこない。拍子抜けもいいところだ。期待して損をした。
読む価値もなければ評論する値打ちもない。当然、おすすめ度は★だ。唯一読み取れるものがあるとしたら、あまりに人間心理から乖離した言動は読み手を白けさせるだけ、ということだろう。