グローバルアジア(旧アイビーダイワ、プリンシバル)の第三者委員会調査報告書を読んでみる | たにやんのブログ

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会計、開示、その他

こんばんは。

今朝こんなニュースが流れてきました。旧アイビーダイワ、プリンシバルですね。

「飲食店運営会社に家宅捜索 粉飾決算の疑い 警視庁など」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH3L0BJ6H3KUTIL05L.html

「食品会社が有価証券報告書の虚偽記載か」(NHKニュース)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150318/k10010019621000.html

「市況かぶ全力2階建」でも取り上げられています。
「消えた2億円と社名ロンダリングでおなじみ、グローバルアジアホールディングスに強制調査」
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65823718.html

記事を読んでいると気になる記述がありました。
「昨年5月には、新たに食品関連事業を担う企業を取得する目的で増資すると発表。東京都中央区の証券会社が新株予約権を引き受け、翌月、約2億1200万円をプリンシバル社に払い込んだが、ほぼ全額が直後に何者かに引き出された」
「このうち約1億9千万円はプリンシバル社の当時の経営陣らに横領された疑いがあるとして、同社が昨年12月、前社長や取引先の幹部らを相手取り、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした」
「同社から流出した資金が反社会的勢力に流れた可能性もあるとみて、警視庁は組織犯罪対策3課が調べる」(以上朝日から)

「関係者によりますと、この会社はおととし、事業資金を調達するためとして、新株予約権を発行して増資を行いましたが、このうち4億8000万円が預金口座に入金された直後に引き出されていたということです」
「しかし、会社は引き出された資金を資産として有価証券報告書に計上していた疑い」(以上NHKから)

リークなので両社で内容に違いはありますが、「横領」(これは予想通りで意味わかる)、「訴訟を起こした」(開示してないよね)、「4億8000万円が引き出されていた」(2億じゃなくて?)と、事実関係がよくわからないので、1月に開示された調査報告書を該当部分のみ再度読んでみることにしました。(全部で150ページある上に、追加調査もやってるので多すぎて読めない。。)

第三者委員会の追加報告書受領に関するお知らせ(150ページあります)
http://pdf.irpocket.com/C3587/nKx5/uMk8/YBLy.pdf

目次見てもイニシャル、匿名だらけで、しかもAから始まってZ、AA~BRまであるので、一目見ただけではさっぱりわかりません。

さて、順番に。

①いきなりすごいですね。P5。「3 対象会社による調査妨害」(AA:同社元社長)
「対象会社は,上記払込金の引出しに関する事実関係等の調査を当委員会に依頼し,さらに,AAが上記払込金の引出しに関与した重要な関係者にあたり,当委員会が同人からヒアリングを行う予定であったことを知りながら,上記のとおり,当委員会に何ら報告することなく,AAに対して,上記払込金について隠匿,横領したとして訴訟提起し,その結果,当委員会のAAからのヒアリングに支障が生じた」

要は、お金が消えた件に関わった元社長のヒアリングの日に、調査委員会に予告なく、会社が原告となり、元社長を横領で告訴したと。それ自体は一見良いように見えますが、元社長は「告訴されたので」とヒアリング拒否しましたと。うーん、みんな仲間な気がしますね。。

②飛んで、12ページ。
「対象会社の平成26年7月22日付IRによれば,第69期定時株主総会後,新経営陣が対象会社の代表印,銀行印及び預金通帳の引渡しを旧経営陣関係者から受け,対象会社の預金残高を確認したところ,対象会社の口座に振り込まれた第5回新株予約権の発行及び行使に基づく増資金2億1229万円が全額現金で引き出され,所在不明となっていることが判明した」

消えた金額は約2億円ですね。さて次へ。

③登場人物の紹介が続きます。いや、すごいです。

・菊地氏(代表取締役副社長)
「菊地博紀は同日付で対象会社代表取締役の地位から解任され,同人に代わって新たにAAが代表取締役となった。菊地博紀 は従前の担当事業につき担当役員として取締役を務めることなった。菊地博紀及びAAの供述によれば,菊地博紀は,代表取締役の交代に伴い,AAに対象会社の金庫の鍵を引渡し,AAは対象会社の金庫内に対象会社代表印を保管した」
この人は「金庫の鍵渡した」言うてますね。

・Y氏(元総務部長。「身の危険があり」別名(Z)を使っている)
「菊地博紀及びY本人の供述によれば,Yは平成26年4月より,「Z」という別名にて対象会社の総務部長に就任した」なぜ別名?
「平成26年7月18日付総会検査役報告書には,「Z」は裁判所での検査役選任に係る審問期日においては,同人は総会の事務担当者ではないと説明していたが,同年6月27日に開催された対象会社の定時株主総会の議場においては対象会社側の中心的な役割を演じていたことから,身分証明書の提示の可否及び真に「Z」なる人物であるか質問したところ,身の危険が及ぶおそれゆえに身分証明書の提示には応じられないこと,自分はAAの知人であり,同人の要請により対象会社の総務部長Zとして総会の補助をしている旨回答」

この人(Y氏)はお金引き出せる立場ですね。自分でお金引き出したこと、その使途について明細を提出しています。
「対象会社社外監査役D作成に係る平成26年7月10日付受領書によれば,込山和人は同日Zより,対象会社の通帳,キャッシュカード,印鑑登録カード,会社代表印・銀行印・認印,金庫鍵及び会社入口カードキーの引渡しを受けた」
「Yは,社外調査委員会に対し,平成26年6月に対象会社の新株予約権の発行に基づく増資金約2億円が現金で引き出されている件につき,自身が払込金の引出しをしたことは認める一方,これを対象会社の債務の弁済にあてた旨述べて,平成26年8月8日付増資金使途明細に関する報告書を提出した」

・AB氏(利害関係者。資金調達担当者らしい。反社?)
「対象会社はABが主宰するFEグループからその事業の一部を譲り受けることとし,ABと協議の上,スーパーマーケット運営会社のBTを譲り受け,さらに同社を通じてFEグループからスーパーの店舗の譲受けを受けたが,同事業計画はFEグループの全面的な支援に基づくものであったため,対象会社によるチェックが及ばず,その結果,対象会社による会計記載の誤りが生じ,また,同グループの資金繰悪化に伴い,同グループに対する多額の債権について特別損失の計上が必要となった」
この人が経営するスーパーをこの会社に売ったと。

「ABは対象会社の実質大口株主で,自称対象会社資金調達担当者である。株主名簿上ABは対象会社の株主又は役員ではない。平成26年3月から4月にかけてのことであるが,対象会社に対する1億円の資金提供スポンサー探しに関し,BQ株式会社代表取締役のBYの協力によりスポンサー候補者となった者がスポンサーを辞退した件で,BYはABから「大変なことをしてくれた」「(対象会社)に1億円を付けないととんでもないことになる」「輩が来る」「対象会社に1億円の資金が入るようなんとかしろ」と脅された。BYは新たに別のスポンサー候補者を紹介したが,交渉が決裂したため,BYはABから軟禁された上,「1億円はお前が作れ」「外に車が有るから乗れ」と脅され,5500万円を対象会社の口座に振り込むことを書面で約束させられた。その後BYがABと面談したところ「録音してたら,ただじゃおかねーぞ!」「(金を)作ってこい!」等と脅された。後日,BYはABに言われるままに合計500万円を渡した。この件につき,菊地博紀 は当該500万円の請求につき対象会社は何ら関与していないと釈明した」
ヤクザやん。

「ABは,「債権者のところに連れていくから,説明しろ」などと言って菊地博紀の腕をつかんで引っ張り,停車していた軽自動車内に連行しようとし,これに対して菊地博紀が抵抗し,見かけた付近の通行人が110番通報するということがあった。菊地博紀は,この件につき正式に告訴することはなかったが,同日に警察官と共にABらも含めて警察署に行き,両上腕や肩の打撲等の被害につき,被害届を作成した」「ABは,当委員会の調査に応じない」
傷害もやってますね。資金調達者。世の中にはこういう調達方法もあると。いや、あるけど上場会社でやったらあかん。


④お金の計算です。総務部長は「新株予約権行使されても現金は5億もなかった」と言っています。
「平成25年10月18日から11月1日までの間に,BCによる新株予約権の行使により,対象会社に対する1億5436万円の払込みがあったこと,同年11月4日に,株式会社CAの新株予約権の行使により対象会社に対する3億3千万円の払込があったことが記載されている。そして,対象会社の平成26年3月期第3四半期決算短信においては,対象会社が約5億の現金及び預金資産を保有している旨記載されている。
これに対し,平成25年6月27日以降対象会社の社外監査役を務めるD及び平成26年4月28日に対象会社の総務部長に就任したYは,対象会社は平成25年12月末日時に約5億円の現金を保有しておらず,上記決算短信は虚偽である旨主張するので,かかる主張の当否について検討する」

おい、監査法人、現金実査はしろよ。
「当時対象会社の会計監査人であったXは,当委員会に対し,対象会社では,平成25年10月及び11月の新株予約権の実行に基づく払込後は,翌年の5月中旬まで会計監査人による現金実査を行っていないこと,実査ができなかった理由は,当時対象会社が内部でもめていて,協力的な対応がなかったことによること,平成26年3月末の決算前の実査にも応じなかったので,同月末には共同で会計監査人を受任していたSと共に辞任届けを提出したこと,その後5月になって当時対象会社の代表者であったAAから再度会計監査人としての業務依頼を受けたので実査にきちんと協力すること等を条件に受任して実査を行い,平成26年3月末時点の現金残高を逆算査定したことを述べた」
「対象会社の会計帳簿には,平成25年10月及び11月の払込に基づき,資産が約5億円増加したと記載された」

菊地さん、自宅に1億円持ち帰ったそうです。おいおい。
「菊地博紀は,「平成25年10月及び11月の増資による払込金は菊地博紀自身が銀行から引き出した。引き出した現金約5億円は,対象会社の金庫に約3億9000万円を,それに収まりきらない1億1000万円を菊地博紀の自宅金庫に保管した。よって,対象会社は同年12月31日時点で現金約5億円を保有していた
「自宅金庫に保管していた現金は,平成26年1月に同人が代表取締役の地位を退いた時に,対象会社の金庫に移動させた。対象会社がそのような大金を現金で保有していた理由について,菊地博紀は,対象会社が銀行預金として現金を管理すると差押えにより金銭の運用ができなくなるリスクがあるため,現金決済を行っていたこと,平成25年12月末時点では,BD社に対して対象会社が貸金債務を負う旨の不実の公正証書を作成してしまい当該証書に基づき強制執行される現実的なおそれもあったためであることを述べる」

「お金の運搬には従業員も付いてきたから大丈夫や」いやいや、あかんて。

「対象会社従業員のBWは,菊地博紀 が平成25年10月から11月にかけて対象会社の銀行から新株予約権行使に基づく払込金を引き出して対象会社に運び入れる際及び対象会社と菊地博紀 宅の間で現金を運ぶ際に菊地博紀に同道した旨を述べた」

調査委員会、そこ突っ込むとこや。何が「信用できる」や。(ヤクザに脅されたかなあ)
「まず,対象会社の従業員BWは銀行,対象会社及び菊地博紀邸の間の本件払込金の運送に付き添った旨述べるが,その内容に不自然なところはなく,信用できるものである」
「また,対象会社の会計帳簿上本件払込金につき対象会社の資産が増加したものとして処理されている実査ができなかった旨の会計監査人Xの供述は,その後の第69回定時株主総会において現に対象会社の役員選任を巡って大きな混乱があった事実と合致し,また,共同で会計監査人を務めたS公認会計士も同旨を述べており,信用できる。よって,本件払込があった事業年度末に現金実査が行われていない理由が架空増資の糊塗にあるということはできず,このような事実があったからといって現金が金庫内になかったということはできない」

ここ、違うと思う。
「以上を総合すると,菊地博紀の前記供述は,当委員会が実査した対象会社の金庫の内部容積量にも矛盾せず,信用に値する」
「そうすると,本件払込金は払込後すぐ対象会社の代表者である菊地博紀 によって銀行から引き出されたが,現金資産として対象会社に帰属したというべきであり,対象会社は決算短信記載のとおり平成25年12月末に現金約5億円を保有していたと認められる」

⑤さて、2億を出金です。新役員はお金が引き出されたのを知らず、上記Y氏は「債務の弁済に充てた」と言っています。
「上記普通預金通帳並びにY及びAAの供述によれば,両名は上記払込金につき,各払込日同日に総額2億1229万円を出金した」
「菊地博紀の供述及び対象会社の同年7月22日付IRによれば,本件引出行為は対象会社の同年6月27日付定時株主総会において新たに選任された取締役らの知るところではなく,新経営陣は,同年7月10日頃になって本件引出行為の事実を知ったと認められる」
「対象会社の同月22日付IRによれば,対象会社は本件増資金の引出しに係る事実関係等の調査のため社内調査委員会を設置したと認められる」
「Yは本件増資金を対象会社の債務の弁済に充てた旨主張する」

⑥2億の使途について検証してます。領収書も、金銭消費貸借契約書もないものが大半と。
「Yは社内調査委員会の調査の際に,約2億円の使途の説明資料として,領収書の写しを持参した。しかし,対象会社には,Yが提出した時点でBI株式会社との同月2日付金銭消費貸借契約書の原本の存在は確認できないこと,領収書に印紙が帖用されていないこと,同月2日時点での会計帳簿に記載がなく,経理担当者に指示もなかったこと,対象会社に入金になったとの証拠が一切ないことから,対象会社とBI株式会社間の同月2日付金銭消費貸借契約の締結の事実を認めることはできない」
「よって,上記債務の支払いが対象会社の債務の支払としてなされたとは認められない」

「上記検討によれば,対象会社の前代表者であるAAが対象会社の預金口座から現金で引出した2億1229万円のうち対象会社の債務の支払いとして認められるのは,2820万697円である。残額の1億9230万745円については,対象会社の債務の弁済をしたとは認められないため,対象会社は同額につき,AAに不当利得返還請求権を有する」

結論、1億9230万745円はいまだに行方不明だそうです。どこかに落ちてないかなあ。