これまた超危険な指導法です。
初心者にとっては、発声法の上達を5年も10年も遅らせてしまう、誤ったイメージです。

前回、危ない発声指導シリーズ~「舌を出して歌え」でもそうでしたが、「喉仏が下がる」も、やはり良い発声法の結果生ずる現象であって、結果論なのです。良い発声法で歌うと喉仏が下がるからといって、喉仏を下げれば良い発声法になる、というわけではないのです。

声を出す器官である「声帯」は、喉仏の下の辺りと首の後ろでつながっている『弦』のようになっています。「喉仏を下げろ」と誤った指導をする人は、その弦を筋肉で引っ張れば声帯が伸びる、声帯が伸びれば張力が増して高い音が出る、という理屈で言っているのでしょう。

しかし!

喉仏を下げて歌うとどうなるか?
喉仏を下げようと「輪状甲状筋」という筋肉に力を入れます。力が入っているのですから、自由に動きません。その結果、喉が力んでいても歌えるような、変な力の入った超絶技巧を身に付けてしまうのです。そんな声、聴いていたら肩が凝りますし、芸術表現など、絶対にできません。

誤った発声法の結果、喉仏が上がって喉の閉まった声になってしまうという人は、まず息をきちんと吸う必要があります(息の吸い方についてのブログを参考にして下さい)。さらに、声を出す瞬間に前髪の生え際の前方に歌詞を思い浮かべるなどして、喉の辺りから完全に意識を離す(なくす)ことができていなければなりません。つまり、身体全体が弦になったつもりで、下は地面まで息を吸ってその弦を引っ張り、上は声の意識でその弦を引っ張るわけです。このイメージさえできていれば、そのとき自動的に喉仏は下がっているのです。しかも、喉の辺りに力みは一切生じませんから、無理のない音色で、聴いていて心地よく、芸術表現に適したものになります。


お気をつけて!