暫くブログを中断

というのは、昨年初めから義母の身体の衰えが目立ち、室内で歩行するのがようやくという状況が続き、残念ながら長時間家を空けるのが難しくなったため、OEKの定期演奏会も新年度は会員を脱会することとなり、音楽会ともご無沙汰となっているため

高齢の義母と、体の不自由な妻、そして私も年を重ねることとなると、数年前とは異なる状況となり、予想していたこととはいえ、不自由なものである

最近、近しい他人にもよくつぶやくが、今の日本では、年をとるという事は残酷なことだとつくづく感じる

 

さて、というわけで久しぶりの音楽会

ウィーントンキュンストラー管弦楽団音楽監督への就任で一躍話題となった佐渡裕の来富ということで、楽しみにしていた演奏会

兵庫芸術文化センター管弦楽団の創立15周年記念の全国巡回演奏会

そして、ベートーヴェンの生誕250年という事で、オールベートーヴェンプログラム

コリオラン序曲、ピアノ協奏曲5番「皇帝」、交響曲第3番「英雄」という長大なプログラム

更にアンコールに交響曲7番のフィナーレがあつたので、2時間半に近い演奏会

油の乗り切った佐渡裕ならではの、エネリギッシュなプログラム

そして、ピアノがこれも今最盛期と思われる個性的なビアニスト、エフゲニ・ポジャノフ

10年前のショパンコンクール4位入賞だが、審査員のアルゲリッチが激賞したという伝説のあるピアニスト

 

佐渡裕らしいサービス精神で、10分程の演奏会前のプレトーク

兵庫芸術文化センター管弦楽団の事、ピアノのポジャノフの事。そしてベートーヴェンへの熱い心情などを面白く語ってくれた

ポジャノフは辻井伸行が優勝したヴァン・クライバーコンクールの時、ファイナリストだったそうで、その時の演奏に感銘した佐渡裕がその後ソリストとして指名することも多いピアニストだそうだ

 

コリオラン序曲の最初のオーケストラのすさまじい一撃はこの音楽界全体を象徴するよう

音楽の溜を作るといおうか、独特な粘りが緊張感を造り出す

演奏会最初の曲のせいか、アサンプルに微妙な音程のズレが感じられたのは残念

 

ポジャノフ、素晴らしいビアノ

1楽章の壮大な開始部から一度に聴く者を引き込む

佐渡裕がプレトークで触れていたが、とても低い椅子で、手をやや下から鍵盤に触れるような変わった演奏スタイル

スタイルも個性的だが、演奏も個性的

素晴らしいテクニシャンで、豪快な面もありながら、弱音部の丁寧な表現とキラキラ輝くような音色は実に魅力的

時にはテンポを落とし思慮深く弾くかと思うと、テンボの早い部分、表現の大きい部分は一気呵成に弾きまくるという、ドラマティックな演奏

第2楽章は極端にテンポを落とし、一音一音に思いを込めるような重厚さ

3楽章へのブリッジの部分のティンパニとの緊張に満ちた対話

3楽章は華麗でありながら、決して胡麻化さない、確実な打音

佐渡裕の伴奏もしっかりとした厚い、そして熱い響きでピアノと対抗

この協奏曲の壮大華麗さが見事に表現され、聴く者を圧倒!

 

交響曲第3番「英雄」

かっちりと構築された複雑な建造物の様なこの交響曲の真髄を聴かせてくれた

1楽章は提示部の繰り返しも省き、ややあっさりとした印象だったが、2、3、4と楽章が進むにつれ、重厚・壮麗な世界が繰り広げられる

2楽章の引きづるような低音の重く悲痛な響き

中間部の壮大な盛り上がりとクレッシェンド

オーケストラが咆哮する様な、いさぎよい響き

3楽章のホルンの輝かしい角笛の響き

4楽章の変奏曲はベートーヴェンの鮮やかなバリエーションを色彩豊かに表現

各パートのバリエーションは鮮やか、特にフルート、オーボエ、クラリネット等木管は表情豊か

終結部ではテンポをぐっと落とし、緊張感を一杯に蓄えながら、高らかにエンディングを迎える

わくわくするような興奮を一気に高めていく

最後の畳みかけるような和音の連続は全体をドラマテツイックにエンディングに導く

 

聴衆の熱狂的な拍手に応えてのアンコールは交響曲7番のフィナーレ

興奮を鎮めるのでなく、更に煽り立てるような演出

疾風怒濤、乱舞の7番

 

佐渡裕の熱いベートーヴェンへのオマージュ

 

久しぶりに血の通ったベートーヴェンを聴いた思い