- 走れ!T校バスケット部 (幻冬舎文庫)/松崎 洋
- ¥520
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陽一は、強豪私立H校に特待生として入学。
だが部内で激しいイジメに遭い自主退学する。
失意のまま都立T校に編入した陽一だが、個性的なクラスメイトと
出会い、弱小バスケ部を背負って立つことに―。
連戦連敗の雑草集団が最強チームとなって活躍する痛快
ベストセラー青春小説。
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まず、文章がシンプルで読みやすい。
人物の心情も単刀直入。
シンプルなだけに、そこに物足りなさを感じる人もいるかも。
陽一はイジメが原因でバスケ部を辞めるけれども、イジメの描写は
意外にサラッとしているので、読んでいてドロドロしたりジメジメした
気分にはならない。
イジメられていた陽一は本当にツラかったんだろうけど。
イジメに立ちむかう陽一の親父さんが熱くて、物凄くカッコいい!
息子を守るためだけではなく、息子をいじめた子供の将来をも思って
学校やイジメた子供の親と正面から向き合う。
しかもいつもは冷静な人だという。
将来自分に子供が出来たら、こんな親父になりたいものだ。
親父さんの予想通り、結果的に子供達の心はほとんど
変わらなかったんだけど…。
それがリアルと言えばリアル。
そう簡単には人の心って変わらないよなぁ。
陽一が立ち直れた分、親父さんの行動は報われたし、良いかな。
T校バスケ部のメンバーは超個性的。
「文句マン」だけど、ムードメーカーの「チビ」。
忍者のような超俊足を武器に、速攻を得意とする「メガネ」。
長身で女好きの「のぞき魔」(ひどいあだ名だw)。
物語のキーパーソンとなった、3ポイントシューターの俊介。
地味だけど努力家の「コロ」。
縦も横も超高校級のガタイを持つフードファイター、健太。
そして良い意味で空気を読まない小川先生。
キャラが立っていて非常に面白いし、愛着がわく。
皆仲が良いし、一生懸命で好感の持てる人達だった。
そしてチームの成長具合も良い。
そして大会の決勝戦。
陽一の前の学校である強豪私立H校との戦い。
H校のラフプレー、かなりやり過ぎ。
スポーツ漫画にはこの手のチームがかなりの高確率で登場するけど
超強豪チームがその役割を担うのは稀だよなぁ。
陽一をいじめたような集団だから、似合ってはいるんだけど。
試合は手に当て握る展開で、ボロボロになっていくT校。
それでも最後まであきらめる事なく、持てる力の全てを尽くし、
最後の最後に健太の大活躍が!
う~ん、ドラマチックな試合だった。
スポーツ物の王道的展開ではあるけど、そこには色あせない
良さがあるよなぁ。
バスケを取り扱ってはいるけれども、難しい専門用語なども無いし
詳しくなくても全く問題無いのも良い。
それにしてもH校のコーチ岩田。
最後まで小悪党というかなんというか…。
救いようのない大人だなぁと。
最後にその後のメンバーが描かれ、大団円。
陽一が教職の道かぁ。
イジメられた経験を持つ陽一なら、きっと弱者を守る事の出来る
良い教師になれるはず。
調べたら続編もあるそうで。
しかも4巻まで!
読みたい気もするけど、文庫は出ていないみたいだから、
とりあえずは保留かな。
この1巻でキレイにまとまっているし。