【ヘルタースケルター】 | ついてる男たち〜きっとリターン〜

ついてる男たち〜きっとリターン〜

イサオの脱鬱コラム・映画批評&アツシのイラスト。きっと週1更新。

監督: 蜷川実花
製作年度: 2012年  製作国・地域: 日本  上映時間: 127分



【※ネタバレ含みます。知りたくない人は右上のバツを押すべし。】


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トップモデルとして芸能界の頂点に君臨し、
人々の羨望と嫉妬を一身に集めるりりこ(沢尻エリカ)。
だが、その人並外れた美貌とスタイルは
全身整形によってもたらされたものだった。

そんな秘密を抱えながら弱肉強食を地でいく
ショウビズの世界をパワフルに渡り歩く彼女だったが、
芸能界だけでなく、世間をひっくり返すような事件を引き起こし・・・。




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まず、映画の中身を語る前に、
監督・蜷川実花と主演・沢尻エリカに対する
個人的な印象を語りたいと思う。

「おまえの趣味なんて知らね~よ」

・・・と思うかもしれませんが、
おそらくそのスタンスがかなり作品の評価に影響する作品だと思うので。

蜷川実花に対しては、前作【さくらん】を観てないので、
映画監督としての能力は未知数。

写真についてはあの毒々しくも色彩溢れる作品群っていうのは、
それまでになかった個性だったと思うし、
たまたま表参道ヒルズに行ったら蜷川実花展がやっていたので、
ふらっと立ち寄ってしまったことがあるくらいの距離感。

カメラ技術は大したことないと本人も情熱大陸で話してたけど、
表現者っていうのはジャンル問わず作家性を持っているということが
何よりの強みであり、何よりの評価だと思う。
そういう意味でこの人はそれがある人なんだなと。

ゆえにこの映画にも期待はしていたのです。(←何かのフラグ)

沢尻エリカについては、完全に個人的な好みでいうと、
ルックスもあまりタイプではないし、
「別に」事件や高飛車な態度etc、はっきり言って苦手。
この人は同性に支持されている人なんだろうなという印象。

さて・・・

まずね、前作【さくらん】の土屋アンナ然り、
蜷川実花が公私共に仲良くさせてもらってます型女優を
キャスティングしてること自体がちょっとノイズなんです。

「こういう人間関係の中で私は生きているのよ!」というような
一種のコミュニティー至上主義者というか、
今で言うとFacebookでいちいち派手な交友関係を投稿して
悦に入る女・・・・・・みたいに見えるんですよね。

ただ、作品の内容自体が硬派な作りをしていれば、
まったくそんな偏見の目は生まれないんだけど、
ま~~エリカ様を奉りたいんだなこの人はって感じ。

さらに言うと・・・「こんな大胆な濡れ場を撮れるのは
私とエリカの関係があってこそなのよ!」みたいな。
観てて本当に「もういいわ」というか、
この映画のノリで例えるなら、
蜷川実花と沢尻エリカ2人による自慰を観せられているような感覚。

ストーリーもあらすじで事足りるというか、
想像の域を出ないのはもちろん、ラストに至るまでの過程も平坦。
要するに映画としてめちゃくちゃ退屈なのです。

以下、ダメ出しポイントを箇条書き・・・



① 濡れ場がエロくない。

体当たり演技と称して、乳を放り出してまで臨んだ濡れ場。
出すもん出してるのに、色気もなければエロくもない。
女性ウケを狙ってオシャレな撮り方をしてるのかというとそうでもない。

映画の節々にかなり突っ込んだ卑猥な言葉が出てくるんだけど、
これも同様なので、ただただ下品にしか観えない。
深夜番組にたまに登場する杉作J太郎の方がよっぽど品がある。

もうこの要素だけで、この映画は失敗と言っていいと思う。



② 寺島しのぶを観てられない。

これはある意味、女優としては成功してる演技なんだろうけど、
彼氏に無理やり脱がされてSEXに至ったり、
りりこのアソコを舐めたりと、寺島しのぶのそんな姿は、
妙に生々しくて観てられない・・・というより観たくない。



③ 蜷川実花の作家性。

前述したように、写真家としての蜷川実花は、
毒々しい色彩を押し出した作品っていうのが彼女の作家性だから、
それを撮り続けるっていうのはアリだと思うんです。

でも、映画でも同じことをやられると意味がない。
映画である必要がないし、さらにいうと致命的に向いてない。

りりこ自体が多少浮世離れした存在であることはわかるけど、
自宅の規模や内装がぶっ飛びすぎてて、現実感がないんです。
かと思えばマネージャーの家とかは超庶民的。

対比なんだろうけど、とにかく中途半端なんですよね。
結局どう撮りたいの??みたいな。



④ 演出がいちいちダサイ。

ダサイって言葉も雑だけど、観てて本当にダサイなと思いました。
平積みにされた りりこの雑誌が売れていく様・・・とか、
町並みの画に、世間の女子高生の日常会話・・・とか、
急にBGMに浜崎あゆみが流れたり・・・とか。

インタビュー形式で画面2分割でりりこ関係者に語らせるっていうのも、
この演出いる???って感じでした。

写真家としては、国内最高の栄誉とも言える木村伊兵衛賞を受賞した上、
あの蜷川幸雄の娘ってことで、センスだけはいい人なのかなと思ってたのに。




今回この映画を観たことで、
蜷川実花に対する印象がかなり底辺まで落ちました。
かなりイタくてダサイ人というか・・・もう本業の写真もダメだぁ。
たまたま評価されちゃったようにしか見えなくなってしまった。。

個人的にはそれくらいダメな意味でインパクトありました。
冒頭で蜷川実花と沢尻エリカに対するそもそものスタンスが
この作品の評価に影響すると書いたけど、
要するに、彼女たちの信者以外は評価できる代物じゃないということです。

逆に彼女たちに思い入れがないのにこの映画を評価する人がいたら、
どこが良かったのか是非聞いてみたい。そんな映画。





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次回、更新予定の映画タイトルは
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