12月13日公開の「おやすみなさいを言いたくて」
女性が主人公だからこそ、成り立つリアリティがあります。
ジョリエット・ビノシュ、うまいですね~。
今、世界で何が起こっているのか、それを知ることができる映画でもあるのです。

神戸新聞に拙稿しました。
是非、お読みください!!


『おやすみなさいを言いたくて』



闘う女性。手にする武器は銃ではなくカメラだ。
世界が見捨てた地域で、今まさに起こっている真実をありのままに写し
世の中に訴えたい。
一流の報道写真家として活躍する女性とその家族が抱える葛藤を描く。
元報道写真家のエーリク・ポッペ監督の実体験が基になっている。

優しい海洋科学者の夫マーカス(ニコライ・コスター=ワルドー)と
かけがえのない2人の娘をアイルランドの家に残し、
紛争地帯で写真を撮り続けるレベッカ(ビノシュ)。
自爆テロに巻き込まれたのをきっかけに転機を迎える。

信念のために自爆テロに走る女性が行う最後の儀式の詳細な描写や、
ケニアの難民キャンプに反政府軍が襲撃した際の様子などがリアルに描かれる。

誰かが伝えなければ…と使命に燃えるレベッカの原動力は「怒り」だ。
紛争地帯で彼女はイキイキとしている。
しかし、家に帰ると妻としても母としても上手に振舞えない。
「それでも家族は理解してくれている」と思っていたが、
ある日、夫から「待つ」事に疲れ切ったと告白される。
苦悩しながらもレベッカは仕事をやめる決意をする。
浜辺をランニングするレベッカの後姿が、ロングカットでとらえられる。
背中が怒っている。やはり心は紛争地帯に向いているのだ。

枯れた土と死の匂いが漂う紛争地帯の景色と、
アイルランドの海辺の家の対比も彼女の心象風景として描かれる。


ラストシーンの衝撃は今も心を離れない。
世界はもっと根本から何かを変えなければいけない時に来ている。


12月13日から公開

1時間58分

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神戸新聞12月12日夕刊『びびっとシネマ』掲載
神戸新聞より転載許諾済み
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