クレヨンしんちゃんについて | t's memo blog

クレヨンしんちゃんについて

クレヨンしんちゃんについて


「アニメーション監督 原恵一」より

クレヨンしんちゃんは2006年現在、約35カ国で紹介されているとの事ですが、その中でもスペインでの人気が特に高いということは、日本でも2003年8月23日放送のテレビアニメでも紹介された事もあり、広く知られるようになっているかと思われます。
スペインでのクレヨンしんちゃんは、クレヨンが抜けて単に「Shin chan」というタイトルで紹介されています。

2005年7月、「アニメーション監督原恵一」という本が晶文社より発行されました。読まれた方はご存知だと思いますが、同書には「スペインを揺るがすクレヨンしんちゃんブーム」というタイトルで、金関あさ氏によるスペインにおけるクレしんの事情が紹介されています。非常に詳しいものなので、その内容をここに要約したいと思います。

クレヨンしんちゃんがスペインで紹介されたのは、1996年に単行本が、プラネタ社という出版社より(スペイン語ではなく)、カタルーニャ地方にてカタルーニャ語(スペインの言語については後述)で発売されたというのが最初です。

当初の売れ行きは不振だったものの、2001年4月にテレビアニメがスペインで放送されると、人気が上昇し、単行本の売れ行きも伸びるようになります。テレビアニメがカタルーニャ地方からスペイン各地で放映されると、単行本もスペイン語訳が出版され、その部数は、2004年10月15日に双葉社のデータによると、124万部(カタルーニャ語版72万部、スペイン語版52万部)との事です。なお、当時ドイツは4万4千部、アメリカは4万部、フランスとイタリアは未発売だったとの事ですから、他の欧米諸国に比べても、いかに人気が高いかが窺えます。

テレビシリーズはスペイン各地でカタルーニャ語に続き、スペイン語、バスク語、ガリシア語、バレンシア語に訳され、各州のローカルテレビで放映されるようになり、子供だけでなく若者にも大きな人気を博すようになります。

2002年12月のデータでは、12歳から18歳の視聴率は42%、13歳から24歳では31.9%で、サッカーのチャンピオンズリーグでバルセロナのチームの試合の視聴率までもを上回ったというのです。

2003年には、「暗黒タマタマ大追跡」が、スペインでクレヨンしんちゃんの劇場版では初めて公開され(劇場版作品についての詳細は、「劇場版についての概論」にて)、各地で試写会が催されたのですが、バルセロナでのカタルーニャ語版の試写会では原恵一監督が舞台挨拶に招かれたとの事です。

「暗黒タマタマ」が封切られたのはちょうど夏休みが始まった最初の週末で、スペイン全土で計179本のフィルムが配給されました。興行収入は、最初の週末だけで32万4千ユーロ(約4536万円)を獲得し、長編映画ランキングの第3位となりました。

なお、カタルーニャ地方の映画館では、通常スペイン語の吹き替え版をいくつかの映画館が使用するのですが、この「暗黒タマタマ」は68の映画館全てでカタルーニャ語の吹き替え版が使用され、これはカタルーニャ映画史上最多記録となったそうです。

さらに、「暗黒タマタマ」のビデオ・DVDの販売数は2002年12月末日の時点で、20万本にのぼりました。さらに、関連グッズも50社以上から約500種類の商品が販売されているとの事です。

そして、スペインの業界紙関係者6000千人による投票で、キャラクタービジネスの専門誌、「ライセンス・アクチュアリダッド」で、スパーダーマンを抜いて2003年度の「最優秀エンターテイメントキャラクター賞」を受賞しました。日本のキャラクターでは初めての受賞だそうです。

その一方で批判も多く、各放送局では抗議が殺到しているといいます。子供がしんちゃんのマネをするという親からの苦情が多く、またみさえのヒステリックな言動にも批判が多いそうです。

スペイン社会労働党(PSOE)は、マドリッドのテレビ局テレビマドリッドに対し、子供への悪影響の懸念から13時の放送を22時以降にするよう申し入れました。テレビマドリッドはこれを拒否していますが、同様の論争が起こったバレンシアでは放送が中止になってしまったそうです。

また、スペインで初めて放送を行ったカタルーニャテレビは、クレしんが子供用の番組ではないという判断により、放送時間を変更しています。ただし、この変更は苦情よりも、大学生を中心としたファン層から自分達の鑑賞できる時間に放送してほしいという要望によるものだと言われています。

スペインで紹介された日本のマンガ、アニメは公用語が同じスペイン語の中南米にも紹介される事が多いため、スペインで何らかの規制がかけられば、その影響が中南米にも及ぶという懸念の声も聞かれます。

金関あさ氏の紹介によると、スペインではかつて(今でも?)日本で見られた現象が、日本以上に過激に起こっていると言えます。様々な意見や評価がありますが、今後もクレしんがスペインに大きな影響を及ぼしていくことでしょう。