リタリン | 「適応障害」患者の日記

リタリン

リタリンは、強力なアッパー系の作用をもつといわれる向精神薬。

2007年10月まではうつ病に対して適応があったが、覚せい剤に類似した強力な精神高揚作用があることから、精神科でうつ病と偽ってリタリンを処方してもらい乱用・依存する「リタラー」と呼ばれる者の存在が社会的問題となり、うつ病への適応を外された。

現在ではリタリンは、ナルコレプシー患者と、18歳未満のADHD(注意欠陥・多動性障害)患者に対してのみ処方が行われている。

ナルコレプシーは日中の活動時に突然眠りに落ちてしまう病気で、色川武大(阿佐田哲也)氏の持病であったことで有名だが、10万人に1人ほどしか発生しない奇病と言われている。

18歳以上で、リタリンを乱用目的で得ようとした者が、もしナルコレプシーの症状を偽証したとしても、かなりの奇病であるため、疑わない医師はおそらくいないだろう。また、脳波の検査を行うことで、本当にナルコレプシーであるかどうかを見抜くこともできるようだ。

つまり現在18歳を超えている人のほとんどが、目的がなんであれリタリンを処方してもらうことは不可能である。ただし、うつで苦しんだことのある僕にとっても、それは良いことだと思っている。

なぜそう思うのかには根拠がある。もう10数年以上も前のことになるが、実は僕は高校時代に一度だけリタリンを服用したことがあるのだ。

当時僕と同じクラスだった友人が、うつ病の診断でリタリンを処方してもらった。(いま思い返すと、その彼は睡眠薬遊びなどをしていたラリ中に近い人間だったので、多分うつ病ではなかった)

彼は「すごく元気になる薬をもらったから、みんな飲んでみて」と、大量に処方してもらったリタリンを、朝いきなりクラスのメンバーに配布したのだ。勉強や授業が嫌でストレスがたまっていた僕も、試しに飲ませてもらった。

すると、
リタリンを飲んだほぼ全員が、1時間以内に異常に元気になった。

僕に起こった精神的変化でいうと、いきなり授業を受けること、人と話すことがすべて楽しいものと感じられるようになり、多幸感でいっぱいになった。特に昼休み中の行動は、小学校低学年の頃に戻ったかのごとくはしゃいでしまい、あらゆるストレスが突然ゼロになったというか、嫌なことなど考える余地もないほど明るい気分になった。

そのとき服用したメンバーのうち1人はあまりにもテンションが上がってしまったようで、「大音量で音楽が聞きたい」と言い、午後の授業を放棄して無断で早退してしまった。

僕は早退せずに授業に出ていたが、服用して5~6時間程度たった頃だろうか、リタリンの効果が切れたのか、薬を飲む前よりも遥かに憂うつな気分になった。

僕はもともと違法ドラッグの類が大嫌いなので、当然ながら覚せい剤の経験はないが、文献などを見る限り、覚せい剤も、揺り戻し(テンションが強烈に上がった後、反動としてテンションが下がる)があるらしい。

次の日に学校にいくと、前日早退してしまった友人は憂うつ感がひどすぎるという理由で学校を休んでしまっていた。

リタリンを服用した他のメンバーのほとんども、同じような憂うつ感を訴えていた。当時この現象について考えたのだが、リタリンは飲み続けないと、薬で上がったテンションの反動で、つらいうつ状態を喚起するようだった。それに加えて飲んだ時のテンションの上がり方、多幸感が強烈なので、飲むこと自体に対して精神的依存が発生しそうであった。

つまり
リタリンなしでは生きていけなくなる可能性があるのではないかと思った。

直感的に恐すぎる薬だと感じた。それ以来、一度たりとも、リタリンを服用したいと思ったことはないし、服用していない。

しかし、重度のうつ病に苦しんでいる人で、リタリンによる元気だけが原動力だったような人がいたとしたら、上記のような「リタラー」のせいでうつ病に適応されなくなったことは、ひどい話だと思う。