弁護士による個人信託・民事信託・家族信託・福祉型信託研究

遺言相続・高齢者障害者福祉・事業承継・離婚後の養育費確保などに信託を生かす。老後の安心と相続の新しい手法をリンクする。
弁護士による「ひまわり信託相談所」所属メンバーが,個人信託・民事信託・家族信託・福祉型信託にまつわる最新の動きをレポートします


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更新が大変滞っていました。

3月24日には埼玉県某市で市民向けの信託講演,翌日25日には一般社団法人民事信託活用支援機構の設立記念と「危ない民事信託の見分け方」出版記念パーティー,その翌日26日には新井誠教授が主催する民事信託研究会『公益財団法人トラスト未来フォーラム公募助成研究』の「高齢社会における信託制度の役割と機能」研究会シンポジウム」へのパネリスト出席等,3日連続で信託尽くしだったのですが,簡単にはご紹介できないので,これらはまたいずれ(といいつつ,いつになるか?)。

日本加除出版『信託フォーラム』5号が発刊されました。

重要な論点目白押しの圧巻です。

その記事の中で,生命保険信託が取り上げられています。

編集部の記事に続き,信託会社を設立したプルデンシャル生命の社長さん,民事信託センターの濱﨑さん,弁護士の山中先生が記事を書かれています。

大変参考になる記事です。

生命保険という,第三者のためにする契約の一類型,受益者の受益の意思表示が必要とされない他益行為というのは,元来他益信託と似た要因があります。

その制度との比較検討は,信託法理の解明・追求において,必須なものと思われます。

私が関心があるのは,生命保険に関連した,信託と遺留分の議論です。

本号の各論稿においても,その議論に大変参考になる論究があります。

プルデンシャル生命代表者の本田巨樹様の論稿では,信託会社が保険金受取人となった後,「その後最初の受益者が死亡し,法定相続人がいたとしても,その法定相続人は,信託設定された保険金自体は相続しません。信託契約上,委託者がそのお金(最初の受益者が使い切らなかった信託財産)の「次の次」の行き先についてもあらかじめ決めておけることになります。」と述べられます。

この「法定相続人がいたとしても,その法定相続人は,信託設定された保険金自体は相続しません。」とされる意味合いが大変気になります。

信託と遺留分の論点については,委託者が行った信託行為ないしは受益権の帰属決定という,第1段階の行為については,遺留分減殺の対象となるというのが一致した見解だと思われます。

しかし,後継遺贈の次以降の段階については,逆に全く遺留分の問題が生じないというのも,おそらく一致した見解でしょう。

ここで,「では,信託財産が保険金だったら」という疑問が生じてきます。

「信託財産が保険金」というのも,荒っぽい表現なのですが,保険契約に基づく保険金請求権者を委託者が受託者と定め,保険金の帰属・使途を信託契約でコントロールする,という形を取られた場合と思って下さい。

では,なぜ保険金だったら,という疑問が生ずるかというと,生命保険金請求権については,一連の最高裁判例があり,基本的に遺産を構成しない(保険金請求権の帰属についての契約者の行為は遺留分減殺の対象とならず,持ち戻しが必要な生前贈与とならない)という方針が示されているからです。

そうであれば,この保険金請求権(なのか何なのかは,実は微妙なところがある)が信託財産とされていれば,遺留分の問題外ですよね?という疑問が出てくるわけです。

この点については,現状ではなんとも言えません。

ただ,最高裁の判例で指摘されている,おそらく長期にわたる保険金の支払いと保険金請求権が裏腹のようにマッチしないという問題が,この生命保険金請求権の遺産性の論点に影響していると思われ,最高裁も無限定に遺留分外とはしていないことに鑑みると,今後判断が変わる可能性はあると,個人的には思っています。

この点,特別受益の持ち戻しについての平成16年最高裁判例を基礎に,裁判官が著した「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」(日本加除出版・新版が平成25年に刊行)において,最高裁の判決に忠実に保険金額と遺産総額との割合を基礎とする判断事例が掲げられていますが,私見としては,額が少なくても,割合が少なくても,一時払い養老保険を相続開始に近い時期に契約した場合などは,持ち戻し対象外としてよいのか疑問を持っています。ましてや,遺留分が問題になるケースでは,保険金額はそこそこの割合になているはずです。それを保険契約の実相は捨象して,遺産総額との対比のみで減殺請求から免れるという判断がいつまで続くのかは疑問を持っています。

そこで出発点に立ち返りますと,プルデンシャル生命の社長さんは,委託者の信託設定段階での遺留分問題も,生命保険は免れるとお考えなのかどうか,そこがはっきりと分かりません。

「生命保険信託の場合,信託財産自体(死亡保険金請求権に関する保険金受取人としての地位)が委託者の相続財産に帰属していないため,相続財産をめぐる遺留分の問題とは直接的には関連しません」とされるので,第1段階の遺留分についても対象外とされているのではと思われますが,すごく控えめの仰りようなので,この点慎重にお考えなのかも知れません。

生命保険金請求権についての,最高裁の一連の判決が,相続対策,遺留分対策における生命保険の有用性に目を向けさせたことは否定できません。

ただ,最高裁の事例の背景にある紛争の実相,問題となっている保険契約の実情をよく見て分析しないと,生命保険にしておけば遺留分はパスできる,というような,安直な発想はいつか崩壊するのではと思わざるを得ません。

ましてや,一部保険関係の方が喧伝している,信託を使えば一切遺留分はパスできる,という誤解(議論の余地があるのは生命保険金請求権だけ,その他の財産は当然に遺留分減殺を受けると思われます。)は,法改正のない以上は到底実現は無理だと思われますので,関係者には十分なご注意を勧めます。

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