弁護士による個人信託・民事信託・家族信託・福祉型信託研究

遺言相続・高齢者障害者福祉・事業承継・離婚後の養育費確保などに信託を生かす。老後の安心と相続の新しい手法をリンクする。
弁護士による「ひまわり信託相談所」所属メンバーが,個人信託・民事信託・家族信託・福祉型信託にまつわる最新の動きをレポートします


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 本来重要な内容のあった発表その3についてご紹介すべきですが,岩藤先生の発表に関し,まだお伝えすることがあります。

 

 能見先生のご質問に対し,佐久間先生がまずは本日の論点に関係しないことを確認しつつ,岩藤先生に引き継いで,両説の対立はさておき,現在検討されている相続法制の改正(遺留分減殺請求権の債権化)で問題は解決するのではないでしょうか,とのお答えがありました。

 

 確かにそれはそのとおりです。

 

 しかし,岩藤先生のご指摘とは違い,遺留分減殺の効果が現在どおりの物権的でありつつ,信託については受益権説であるという場合が,紛争解決上非常に望ましいという点があります。

 

 諸般の事情で,法定相続分どおりの相続とはできず,遺留分ギリギリまで相続分割合を調整したい場合があります。

 受益権説であれば,受益権を遺留分割合に従って与えておけば紛争は防止できます。

 しかし,信託財産説の場合は,受益権化による評価問題がついて回るので,受益権を遺留分割合どおりに付与しても,減殺による信託破壊の危険性があります。

 

 これが,スキーム作りをする立場からは大変困ることで,有利になる相続人も等しく信託化による制約を受けており,それぞれに割合を保証しているのに,なぜ全部をぶちこわされなければならないのかが,理解できないのです。

 

 この本質論は,一つ前の記事に書いたとおりですが,紛争解決のシステム論としても,受益権について調整を図るという考えは,信託財産説とは違う簡便さを実現します。

 そして,これは,法制審議会で議論されている遺留分減殺請求権の金銭債権化の問題にも関係します。

 

 受益権説の簡便さは,受益権の帰属割合を変更することで事足りるのですが,これは遺留分減殺請求の物権的効果とウラハラです。

 

 物権的効果で,受益権帰属について持分主張がされるからこそこのような単純化ができるのであって,遺留分権を金銭評価して扱うとなると,仮に減殺対象が受益権であったとしても,その評価問題が必然的に浮上してしまうのです。

 

 遺留分一般について,物権的効果を改めるようにしようという考えは理解できますが,信託受益権の場合,かえって複雑な議論を巻き起こしかねません。

 

 信託の都合だけを考えたご都合主義の勝手な見解というご批判はあるでしょう。

 しかし,私はそんなにおかしいとも,不当であるとも思いません。

 

 第1には,委託者による受益権化の結果の「減価」が遺留分を侵害するのではという,私見からは正当性があると思えない議論を排斥することです。もちろん,この議論自体について種々の議論があることは承知しています。しかし,私としては,いまだ説得的な議論に接している感じがしません。

 第2に,受益権の評価問題を棚上げできることです。信託財産説・受託者説では,信託に付される前の信託財産で遺留分侵害の有無を見ていきますから,一見簡単そうです。

 しかし,遺留分権者にも受益権が付与されることになっていたらどうでしょうか。この場合は受益権の価額を算定し,それと信託財産についての遺留分割合額とを比較して,侵害の有無,侵害の程度を探ることになります。

 この点,受益権説・受益者説は,受益権全体に占める遺留分権者が取得する受益権の割合を検討するだけでよく,将来収益の価額の算定といった複雑な作業は一切要りません。事案の判断が格段に容易になります。そして,新たに信託をしようとする場合の,予測可能性が確保できます。実務的には非常に魅力的な案です。

 そして,このやり方が信託財産説・受託者説と異なってくるのは,信託財産化による減価を問題にできなくなるということですが,これを問題とすること自体が,私にはピンときません。

 

 なお,遺留分減殺の効果について,現在法制審議会で検討されている金銭債権化の方向は,実はこの受益権説・受益者説の簡便な処理も不可能にする危険性があります。

 

 現行法でも,減殺される側からの金銭解決は認められていますから(民法1041条)法制審の検討は,金銭債権化が遺留分権者の便宜を図るものであるとの認識で提案されているものなのでしょう。

 現行法では,遺留分減殺で物権的に共有になり,共有物分割請求をしても分割請求者の側から価額賠償を求めることはできませんので,確かにその点は便宜になるでしょう。

 しかし,信託受益権のような複雑な評価が必要なものについて,減殺請求者が負う立証の負担は,受益権説・物権的効果説のほうが,格段に少ないはずです。

 

 トータルで考えると,受益権説・受益者説の方が,紛争解決上はるかに優れていると思うのですが,いかがでしょうか。

 

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