昨日,吹奏楽指導をしていて,ハーモニー・ディレクターを使っていたのですが,
こんなことがあったのです。
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家,吹奏楽指導者の福見吉朗です。
メジャー7thを鳴らしてみたら…
そのときやっていた曲の中に,メジャー7thのコードが出てきたんですね。
その響きを聴いてもらおうと,ハーモニー・ディレクターを鳴らしたのですが,
ふと思い立って,平均律と純正律,両方鳴らしてみたのです。そしたら…
予想はしていたのですが,純正律で鳴らしたメジャー7thって,うなりがなくて純粋なんだけど,でも…
なんだか違和感。なんか違う感じなのですよ。
平均律で鳴らしてみると,うなりはあるのですが,しっくりくる。こっちのほうがリッチな感じですね。
メジャー7thって何?
メジャー7thって,こんなコードです。
ド・ミ・ソの和音にシが入った,ちょっとオシャレな響きの和音。
よく見ると,2つの完全五度からできているコード。この和音の場合,ド-ソとミ-シ。
長三度隔たった2つの完全五度からできているコードが,メジャー7thです。
だから,純正律を使えば純粋に響かせることが出来る。
でも,それがいいとは限らないんですね。
4和音いろいろ
こんなふうに,4つの音からできているコード,ほかにはどんなのがあるのでしょう?
マイナー7th
ラ・ド・ミの和音にソが入ったコード。
これも,2つの完全五度からできているコードです。
さっきのメジャー7thと違うのは,2つの完全五度が長三度ではなく短三度の隔たりを持っていること。
これだって,純正律で響かせることもできます。でも…
さっきのメジャー7th,それからこのマイナー7th,ハーモニーディレクターを使って,
平均律と純正律(この場合は C の純正律)両方で鳴らして聴き比べてみましょう。
どうでしょう?
どっちが好きですか?
どっちがしっくり来る?
ほかにも4和音って,ディミニッシュ7thとか,ハーフディミニッシュとか,オーギュメント7thとか,
いろいろあります。ここでは詳しくは書きませんが…
これらは,純正律で取ることができない和音ですね。
ドミナント7th
ほかに4和音といえば…
ほかには4和音,ないでしょうか?
大事なものを忘れていますね。それは,ドミナント7th。
ソ・シ・レの和音にファが入っています。これ,G7ですね。
『ドミナント7thの第7音(この場合はファ)を純正律で取るにはどうしたらいいですか』
という質問をいただいたことがあるのですが,
ドミナント7thの第7音は純正律で取るべきではないんですね。なぜか…
ドミナントというコードは,トニカに解決したいっていう強いモーションを持った不安定なコード。
なぜ不安定なのかというと,減五度(ここではシとファ)という不安定な音程を持っているから。
その不安定さが大切なコードだからなんですね。
純粋なものがいいとは限らない
さて,こんなふうに見てくると,
計算上,純粋に響かせることができるからといって,そのとおりにしてみると,
それがいいとは限らない。
純粋なもの,完全なもの,まとまったもの,完成されたもの,きれいなもの…
それが,必ずしも心地いいとは限らない。これ,音楽に限らない話かもしれません。
上に書いたような4和音って,ジャズやポピュラー音楽でよく使われる和音。
(もちろんクラシックにも出てきますけども…)
ポピュラー音楽って,近現代の,音楽の世界が平均律になってから発展した音楽ですよね。
だから,平均律のほうがしっくり来るのかな…,耳が慣れていますからね。
音楽ってやっぱり,理屈,理論,そんなものだけで創れるものではないんだな,って,
なんだかまた実感したのでした。
なんでもかんでも純正律がいい,とは全然限らないんです。
純正律の話は以前くわしく書いたので,こちらも読んでみてくださいね。