【第5回① 「TPPが医師・看護師に及ぼす影響について」】 講師:東京大学 教授 北村 聖 | TPP参加の即時撤回を求める会 公式ブログ

【第5回① 「TPPが医師・看護師に及ぼす影響について」】 講師:東京大学 教授 北村 聖

 「TPP参加の即時撤回を求める会」第5回会合を開催いたしました。

 今回はお二人の講師をお招きしたため、ブログを2回に分けて掲載します。


【日時】 11月25日(木) 8:00~9:20

【会場】 自民党本部702号室

【講演①】 「TPPが医師・看護師に及ぼす影響について」

講師:東京大学 医学教育国際協力研究センター 教授 北村 聖


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 北村先生からは、医療・看護分野への外国人受け入れに関する問題について、お話いただきました。


(医療の現状)
○ 日本の医師の絶対数は不足していない。地方は不足しているが、都市部では過剰であり、地域偏在の是正が課題。医学部の定員を増やすだけでは解決できない。


○ 最近の医学教育では、コミュニケーション能力や臨床実習に力を入れている。医師国家試験も臨床に即した問題を増やしている。また、平成16年からの臨床研修制度の導入により、医師の質が向上している。


○ 現行制度では、日本人で国内の医学部に入学する実力の無い者が、医療レベルの劣る中国の大学を卒業すれば、国家試験の受験資格を取得できる。また、質の劣る外国人医師も本試験制度により国家試験を受験することが可能。質の担保の観点から、これらの是正が必要。


(医療分野への外国人受入れ問題)
○ 医療は社会共通資本であり、資本主義・市場経済によるべきではない。「必要な医療を提供するために、経済がどうあるべきか」という視点が重要。


○ 質の劣る医師が大量に海外から流入した場合には、医療の質の担保が課題。医療レベルが劣る国の医師は、基礎学力が違うため日本では研修医としても使えないレベルだが、賃金の安さを生かして大量に流入することになれば、『悪貨が良貨を駆逐』する恐れがある。


○ きめ細やかな医療サービスの提供には、患者の母国語を話し、価値観や文化的背景を理解することが必要。また、英国では、EU諸国から医師が流入し、英語を話すことのできない医師が増えて社会問題となり、英国人以外の医師を法律で排除している。


(看護分野への外国人受入れ)
○ 看護師の外国人受入れは、フィリピンとインドネシアについてEPAで先行しているが、看護師国家試験の合格率は1%で不合格者は帰国を迫られる。「かわいそう」という感情論や国家試験を易しくしてはどうかという声があるが、看護の質の担保こそが重要。


 出席議員との意見交換では、「外国人の富裕層をねらった先進医療を提供する病院が増える可能性について、どう考えるか」との質問が出されました。

 これに対して、北村先生からは、「外国人向けのメディカルツーリズムを推進するよりも、日本国民の医療満足度をどのように上げるかを国は考えて行動すべきだ」との回答がありました。


 ~第5回②に続きます~