【第8回 「TPPで輸出は増えない」】 講師:京都大学助教 中野 剛志先生 | TPP参加の即時撤回を求める会 公式ブログ

【第8回 「TPPで輸出は増えない」】 講師:京都大学助教 中野 剛志先生

 「TPP参加の即時撤回を求める会」第8回会合を開催いたしました。


【日時】 12月16日(木) 14:00~15:00

【会場】 自民党本部702号室

【講師】 「TPPで輸出は増えない」~ 問題の本質は「輸出産業vs.農業」ではない ~ 講師:京都大学助教 中野剛志先生


TPP参加の即時撤回を求める会 公式ブログ


 森山会長の挨拶に続いて、京都大学の中野先生にご講演いただきました。中野先生は、11月28日号の「日経ヴェリタス」に『TPPで輸出は増えない』を寄稿され、TPPの議論において、非常に大きなインパクトを与えています。本日は、「TPPで輸出は増えない」と題して、ご講演をいただきました。


(TPPにおける日米関係)
○ 政府は「TPPでアジアの活力を取り込む」としているが、TPP交渉参加国における日米のGDPシェアは合計90%以上である。つまり、日本の輸出先となりうるアジア市場はTPP参加国には無い。あるのは米国の市場だけだ。


○ 米国はドル安戦略とTPPによる関税撤廃の組み合わせにより、自国の市場や雇用を奪われることなく、日本の農業市場を獲得できる。


○ 為替リスク回避を目的として、日本の製造業の海外生産は相当進んでいる(米国における日本車の新車販売は66%が現地生産)。この傾向は今後も進むことから、関税撤廃による利益は少ない。



(TPPでの貿易ルールづくり)
○ TPP交渉参加国は、いずれも外需依存の小国、農産品輸出国、低賃金労働国であり、日本と利害が一致する国は無い。したがって、利害の一致する国と多数派工作を行うことはできず、日本に有利となるルールづくりは不可能。


○ 韓国は多数派工作ができないため、柔軟な対応が可能なFTAを選択した。中国は為替操作国であり、とてもTPPには参加できない。中韓が参加しないTPPが、アジア太平洋地域の貿易の基本ルールとはなり得ない。



(日本の取るべき戦略)
○ デフレ下での自由貿易はさらなるデフレを引き起こすため、TPPによる農業市場や労働市場等の開放は、安価な製品・労働力の流入により、さらなるデフレ浮上を招く。


○ グローバル・インバランス是正のために日本が輸入を増やすことは正しいことだが、内需拡大によるデフレ脱却・経済成長を実現し、その後に輸入拡大を行うべき。



TPP参加の即時撤回を求める会 公式ブログ



 講演後、出席議員からは、TPPが日本の国益に資するかどうか極めて疑問であること、また政府の先行き不透明な対応を批判する意見が相次ぎました。


 これにて本年の本会の活動は終了となります。

 来たる2011年、政府は、高いレベルの経済連携の推進のための規制制度改革の方針を3月に示し、農業改革及びTPP交渉参加の可否を6月に判断するとしています。


 本会は、我が国の国益を著しく損ない、将来に深い禍根を残すTPPへの参加撤回を実現すべく、来年も精力的に活動してゆきます。ご期待ください。