シュトラウス「アラベラ」対訳をどうぞ | 豊玉南一丁目音楽研究所

シュトラウス「アラベラ」対訳をどうぞ

お待たせしました。
シュトラウス「アラベラ」日本語対訳第1版です。

ダウンロードはこちらのURLからどうぞ。
https://www.dropbox.com/s/0sfesm8kqg6un26/Arabella_translation.pdf

ファイル形式は、印刷して使いやすいようにPDFにしました。

底本は、Schott 及び Boosey & Hawkes から出版されているヴォーカルスコアです。Boosey & Hawkesからは、これとは別にリブレットが出版されています。リブレットには、ヴォーカルスコアには抜けているト書きが何箇所かあります。対訳には、このうち、舞台上の様子を説明するために有用なト書きを加えました。

翻訳に際しては、逐行訳としました。
つまり、台本の1行を日本語の1行に対応させました。これにより、自然な日本語と語順が異なる訳文が随所にあります。典型的なのは、関係詞節の取り扱いです。ドイツ語は関係詞節が後置されるので、日本語に訳すと関係詞節と先行詞の語順が逆転し、逐行的対応関係がくずれるので、標準的な日本語とは語順が逆になることがあっても、なるべくドイツ語台本の1行に日本語訳文の1行を対応させるようにしました。

行割りの都合上、リブレットの行割りと異なる箇所がありますが、ホフマンスタールの台本は大部分が散文なので、これによって読むときに韻律がこわれることはないと思います。

敬語の使用については、対話者同士の二人称の使い分け(Du, Sie)、対話者間の相対的身分関係(親子、年長者と年少者、主君と臣下、客と従業員など)に留意しました。ホテルの客から従業員への話しかけの際の二人称としてSieが使われていますが、これは習慣によるもので、敬意を込めた敬語ではないので、日本語訳では敬語とはしませんでした。

1幕でのヴァルトナーとマンドリカの出会いの場面の対話、2幕でのアラベラとマンドリカの出会いの場面の対話など、途中で二人称がSieからDuに変わり、接続法二式や婉曲表現を多用したよそよそしい会話から親密で直接的な会話に調子が一変する箇所がいくつかあります。ここは人間関係の親密さがある臨界点を超えるのと呼応していて、こうしたデリケートな心情の変化によりそうシュトラウスの絶妙な技法もすばらしく、こうしたポイントを楽しんでいただけたら、このオペラの味わいがいっそう深いものになると思います。

まだ十分に精査できていないところがあり、今後改訂していくことになると思いますが、皆様からのご批判をいただいてよりよいものにしていきたく、とりあえずリリースさせていただきます。どうか、誤植、誤訳のご指摘などいただきたく、よろしくお願いします。

なお、ホフマンスタール氏は1929年に逝去されているので、台本原文はパブリックドメインにありますが、訳文の著作権は私にあります。私的なご利用は印刷を含め自由ですが、印刷物として再配布される場合はどうかご一報いただきますようお願い申し上げます。URLを他所でご紹介いただくのは大歓迎です。

出版してくださる方をご紹介いただければ、大変うれしく存じます。文法コンメンタール、注釈なども必要なら書けますので、そういうお話がありましたら、ぜひご紹介いただけますよう、よろしくお願いします。

今後の日記では、台本の味わいどころなどを書いていくつもりです。
みなさまのご鑑賞のお供に少しでもお役に立てれば幸いです。
それでは、Viel Spass!!




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